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文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻12号

1967年12月発行

文献概要

特集 鞭打ち損傷の問題点

鞭打ち損傷の症状と診断

著者: 鈴木次郎1

所属機関: 1千葉大学医学部整形外科教室

ページ範囲:P.1661 - P.1670

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はじめに
 いわゆる「鞭打ち損傷」という用語の当否は別として,このような用語で呼ばれるものは,突然,躯幹の前後,左右,あるいは,斜方に急激に加わつた衝撃により,重い頭を支えている頸部に招来された強制的な屈曲,伸展の振子運動,圧迫,牽引,捻転などの複雑な力学的,あるいは生体の反射的作用の複合によつて,頸部を構成する諸組織が損傷された結果生ずる一連の症候群を総称するものと考える.したがつて,この症候群は,頸部を構成する頸椎,椎間板,筋,靱帯,関節,関節包,脊髄,脊髄神経根,交感神経,動静脈等のおのおのが単独にあるいは,合併して損傷されることによつて,またその部位,程度のいかんによつて発症する症状によつて,成り立つているものである.諸家の動物実験の結果,いわゆる「鞭打ち損傷」なるものの主な変化所見として,頸背部筋肉の出血,各靱帯の断裂,関節包の弛緩,断裂,出血,後縦靱帯の剥離,前縦靱帯の弛緩断裂,出血,浮腫,椎間板の損傷,変性,髄核の突脱,椎体骨膜部出血,硬膜外出血,神経根周囲出血,神経根内出血,脊髄膜出血,脊髄の浮腫,変性などが挙げられているが,これらの実験的所見が,人体に直ちに該当するとは限らないけれども,多かれ少なかれ上記のごとき変化が複合し存在し得るものと考えられるから,おそらくかかる各変化に基づく症状が症候群を構成する基盤となることは想像される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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