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文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻12号

1967年12月発行

文献概要

特集 鞭打ち損傷の問題点

鞭打ち損傷—耳科の立場から

著者: 檜学1

所属機関: 1徳島大学医学部耳鼻咽喉科教室

ページ範囲:P.1683 - P.1690

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はじめに
 頸椎は重量の大きい頭蓋をその尖端に乗せている.しかもHawkinsの指摘しているように,第1,第2頸椎等の上位頸椎は,その他の頸椎に比し可動性が大きい.このことは上位頸椎が外力に対して受傷性が高いことを意味している(Haw-kins,1962).このような事柄を考慮に入れると,いわゆる鞭打ち損傷の機転で急激に頭部が過伸展,過屈曲すると,上位頸椎を支持する軟部組織には,機能的または器質的障害が起こることは想像に難くない.そしてその障害に由来して,頸部痛等各種の愁訴が出現することも納得がいく.
 さて私が,耳科の立場から鞭打ち損傷における「めまい」,平衡失調を特にとり上げる理由をまず述べてみたい.その理由のひとつは,この種症例の「めまい」については,これまでにも記載はなされている.しかし,いかなる特徴を有する「めまい」が存し,それを裏付ける平衡失調はいかなるものであるかを系統的に記載したものは少ない.研究者によつては,この機転で起こる頸部交感神経系の異常を重視し,これに由来して「めまい」が生ずると考えている(Hawkins 1962).ただし彼はその「めまい」の性格については,それ以上深くふれていない.耳科領域では頸部障害の「めまい」を内耳にむすびつけて考える研究者が多いが,鞭打ち損傷例を取扱つてみて,その「めまい」を単純に内耳性と考えるには,あまりにも複雑であることに気付く.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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