論説
破傷風の予防接種と予防治療についての諸問題
著者:
桜井信夫1
丹羽章2
新納光麿3
窪谷勝3
植松典昭3
永井吉郎3
越後貫博3
高山直秀4
藤塚光慶4
星野聡4
堀川義文4
鳥居敏明4
千葉弥幸4
藤代国夫5
橋詰定明5
鈴木祥司6
古川玄正7
所属機関:
1千葉大学医学部衛生学教室
2千葉大学医学部細菌学教室
3千薬県血清研究所
4千葉大学医学部専門課程
5成東病院
6鈴木医院
7古川医院
ページ範囲:P.1721 - P.1730
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医師は外傷患者を治療するさい,常にその患者が破傷風になるかもしれないという危険にさらされている.破傷風患者の発生は少ないかもしれない.しかし,厚生省の統計に現われた数字よりはるかに多いのは事実である.しかも,その統計のジフテリア,百日咳と比較してみよ.桁はずれの致死率を示す破傷風なのである.毎年数百名の生命がむなしく失なわれてゆく.前記の2疾患の患者数に比較して,破傷風の患者数が一桁少ないのは事実であり,その死者数がこれらの疾患よりも一桁多い事もまた事実なのである.それにもかかわらず,破傷風の発生は少ない,まして人から人へ感染するものではないからこの予防は個人衛生に属するとして,衛生行政の対象にならぬというのでは,個人の生命を尊重する政治理念が全く欠除しているといわねばなるまい.破傷風予防接種の法制化を求める声も最近では怒りを含んだものとなつてきている."破傷風患者がでるたびにその治療に手をやかされているのは日本の外科医である.厚生省当局者の破傷風予防接種計画除外の尻拭いを日本の外科医がさせられている"1)と.
破傷風は予防すべき疾病であり,最初から治療の対象として考慮しておく疾病ではない.