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文献概要
外科の焦点
肝癌の早期診断の周辺
著者: 菅原克彦1 大野博通1 河野信博1 森岡恭彦1 柏井昭良1 小暮洋暉1 太田武史1 田島芳雄1 松田道生1 三島好雄1 冨山次郎1 間中純也1
所属機関: 1東京大学医学部石川外科
ページ範囲:P.167 - P.176
文献購入ページに移動肝臓の悪性腫瘍に対して外科的治療が積極的に行なわれないのは,巨大な実質臓器であるために腫瘍性変化の認知が遅れることが一因である.また一方,生理的予備力が大きいために,いちじるしく分化した多種多様な機構はよく代償されるので,大なる障害性変化がない限り,日常生活上支障をきたさない.このゆえに医療を求める機会が少なく,来院時にはすでに外科的切除の機会を失していることが多いためもある.さらに医療側での肝外科の認識があまりにも不十分であることもその原因の一端をなしているであろう.肝に関する研究は代謝機構に関連する限り,きわめて高いレベルで論ぜられるが,局在腫瘍の検索については,この数年来開発された各種の方法がようやく一般化された現況で,肝に局在する悪性腫瘍の早期発見を積極的に行なうことの困難さは,外科的医療から遠い膵と同様である.
内外の文献をみると,広汎肝切除成功例を中心とした報告はあるが,症例数も少なく,今後の外科が開発せねばならぬ焦点の1つであろう.わが国では三上1),本庄2),槇3)らによつてこの領域へのアプローチは精力的に進められ,肝区域についての概念も認識されてきたようである.われわれの教室でも最近になつて肝腫瘍の症例や切除例も経験する機会がましてきたので,われわれが行なつている切除のための診断法や,切除に伴う変化などをのべ,肝癌の早期診断の周辺をさぐり,けわしい肝外科への道を開く一助としたい.
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