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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科22巻3号

1967年03月発行

雑誌目次

特集 頭部外傷処置の実際

意識障害のある場合の見分け方

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.321 - P.330

はじめに
 頭を打つと気を失なうがやがて正気にもどる.これは打つた瞬間に脳が烈しくゆれるからだろう・・・・つまりcommotio cerebriだ・・・・Hippocratesの時代の人々はそう考えたらしい.
 もつと強い頭の外傷で死んだ人の脳は挫滅している・・・・これはつまりcontusio cerebriだ.

開放創のある場合の処置はどうするか

著者: 三河内薫丸 ,   村瀬活郎

ページ範囲:P.331 - P.335

はじめに
 頭部開放創は,頭皮より脳実質までの種々の組織の複雑な損傷の組合せであり,処置もまた種々の要素を含んでいる.不適当な処置を行なつた場合は死の転帰をとる場合もあり,運よく死をまぬがれえたとしても後日,頭骨骨髄炎,化膿性髄膜炎,脳膿瘍,脳海綿腫,外傷性てんかんなどの悲惨な合併症の原因となる.
 頭部開放創はこれを治療面より見た場合,その深さに応じ,次のごとく分類して考えるのが便利と思う.

脳損傷,脳浮腫のある場合の処置はどうするか

著者: 長谷川弘

ページ範囲:P.336 - P.340

はじめに
 脳損傷,脳浮腫の処置のポイントはまず第一に救命であり,次いで後遺症を最小限度にとどめることである.脳損傷の特殊性として損傷された脳実質の修復は不可能であるから,これによる脱落症状はやむをえずとせざるをえない.治療の重点はむしろ二次的の脳損傷あるいは合併症の予防と治療におかなければならない.そうして,これらの発生はもつぱら脳浮腫の程度によるものであり,やはり受傷直後の処置の適否によることがきわめて大きいので,救命に重点をおく第一処置の段階からすでに後のことも考えて適切な処置をとることが大切である.

頭蓋内血腫の処置はどうするか

著者: 小沢和恵 ,   高橋勝

ページ範囲:P.341 - P.346

はじめに
 近年,日常生活の近代化と共に,頭部外傷患者の数は,増加の一途をたどり,さらに,そのさい発生する脳挫傷にせよ,あるいは,頭蓋内血腫にせよ,従来成書にある如き脳挫傷,頭蓋内血腫単独の典型的な症候と経過をとる症例は少く,多彩な症候を呈し,複雑かつ重篤な,急性頭蓋内血腫症例が,増加してきている.しかも,これらの診断と治療はしばしば寸刻を争うものであつて,頭部外傷の救急処置および診断について,十分,理解がないために,当然救命しえた患者が,不帰の転帰をとつたり,あるいは,助けえても,たえがたい後遺症を残すことになる.早期に頭蓋内血腫を発見し,早期に手術を行なうことが,治療上の要諦である.したがつて,綿密なる症状分析を行ない,多少とも頭蓋内血腫が,疑わしければ,ただちに,脳血管撮影,超音波により診断を決定しただちに,手術が,常に行ないうるように熟練しておくことが,肝要である.これらの問題について,すでに多くの人々によつて報告されているが1-7),今回は,第一線の外科医が,すぐにでも,役立つようにということで,病態生理学的な抽象的な説明をさけて,実際に頭蓋内血腫に対して,どのように処置するか,具体的に述べてみたい.

頭蓋骨折の処置はどうするか

著者: 竹内一夫

ページ範囲:P.347 - P.351

Ⅰ.頭蓋骨折のterminology
 一口に頭蓋骨折といつても実際にはいろいろの骨折が含まれていて,それぞれに特有の名称をもつている.頭蓋骨折の処置を誤りなく実施するにあたつては,まずその骨折が如何なる種類のものであるかを正しく把握しなければならない.
 骨折の部位によつて,頭蓋の穹窿部骨折(fornicalfracture)と,頭蓋底骨折(basal f.)(第1図)がわけられている.

脳神経障害の診断と処置はどうするか

著者: 大野恒男

ページ範囲:P.352 - P.358

はじめに
 頭部外傷—特にわれわれが日常遭遇することの多い閉鎖性頭部外傷(頭部打撃症)に伴う脳神経cranial nervesの障害は,治療の対象となりうる範囲は比較的少なく,むしろ頭蓋内損傷に対する診断的意義の方が大きい.頭部外傷時に早急に手術的治療を行なうべき脳神経損傷は,視神経と顔面神経の損傷に限られるであろう.
 そこで本稿では,一応各脳神経の損傷の症状・頻度および臨床的意義などを主として述べてみることとする.

いわゆるWhiplash injuryの処置はどうするか

著者: 伊藤博治 ,   八木道之

ページ範囲:P.359 - P.364

はじめに
 最近,わが国における自動車の急速な普及と交通の混雑化に伴つて,交通傷害の頻発は目にあまるものがある.なかでも追突事故によるいわゆるWhiplash injuryはここ1〜2年,急に増えて,注目され始めてきた.
 いわゆるWhiplash injuryは欧米諸国ではすでに十数年前より問題にされており,種々の研究報告がなされてきた.現在のように追突事故による本症の発生以前,すでに第1次世界大戦後に艦載機の離着に際し,パイロットの頸部にWhiplashmechanismが働き,問題とされたのである.文献上では1928年,H.E.Croweにより最初に"whip—lash"という言葉が,ここで述べるような頸部損傷に対して用いられた.

グラフ

脊髄損傷に対する新治療法

著者: 山田憲吾 ,   井形高明

ページ範囲:P.305 - P.311

 脊髄損傷は遂年,著明な増加を示しており,特に交通災害の占める割合が次第に大きくなつている.このことは,脊髄損傷が特殊事業場の災害という旧来の局地的性格を脱し,路上事故として普遍的性格を帯びるに至つたことを示すものと考えられた.したがつてこれに対する治療も,安全で手軽にでき,しかも確実なものでなければならない.
 周知の通り脊髄損傷は上位のレベルにおけるほど重症であり,障害範囲も広いが,下位のものほど障害範囲も狭く,症状も軽い,私どもは脊髄損傷の症状を危急症状と長期症状に2大別し,治療に臨んでいる.

外科の焦点

合成代用血管開発の趨勢

著者: 田辺達三

ページ範囲:P.313 - P.320

合成代用血管移植後の変化
 1952年Voonhees等がはじめて動脈欠損部の修復にVinyon-N clothを用いて以来,多数の合成線維材料が血管外科の分野に導入され検討されてきた.特に1957年DeBakeyおよびEdwardsにより開発されたknitted Dacronおよびwoven Teflonはそれらのすぐれた特性により広く応用され,幾多の画期的手術を可能とすると共に今日の輝しい血管外科の発展をもたらしてきた.
 しかし一方においてかかる代用血管移植に伴ういろいろな合併症を含め,移植片の運命についての詳細な検討もまた重ねられ,より理想的な代用血管の検索も続けられてきた.一般に生体に異物を応用するさいには,その物質の生物学的反応性inertnessがもつとも重要な因子であると考えられる.従来の代用血管は組織反応が少ないものが選ばれ,この意味では生体にinertと考えられながら,血液に対しては異物として働くため血液成分の多少の破壊と血液凝固機転の刺激促進を伴い,したがつて従来の代用血管移植後には血液成分特にフィブリンの沈着が必ずみられることが知られている.現在までのところかかる意味において血液に対して完全にcompatibleな代用血管はまだ見いだされていない.

座談会

腹膜癒着の防止はどうするか

著者: 田北周平 ,   脇坂順一 ,   足立春雄 ,   榊原幸雄 ,   斉藤淏

ページ範囲:P.365 - P.377

 癒着の原因は腹部の外科的疾患のほとんどすべてに求められるが,近年とくに,手術そのものとの関連において,もつとも困難な問題となつてきた,臨床外科医にとつて,癒着の防止は,なんと言つても大きな関心事である.この座談会では,最近漸く多くの注目を集めている癒着と,心身症に関する経験談も加えて,日本臨床外科医学会の直後に,話し合いをお願いした.

臨床メモ

外科臨床に関連ある2,3の産婦人科知識

著者: 一宮勝也

ページ範囲:P.377 - P.377

 産婦人科では,"女と見たら妊娠と考えよ"といわれるほど,外来を訪れる婦人と妊娠とは切り離せないものであり,しつこい程噪しく問診するように訓練されている.それでも産婦人科専門医でも問診でだまされることがあるから,これを聞きだすのには,やさしく理解ある態度で患者に接する必要があると考える.また患者は嘘をついていない場合もあるので,妊娠初期には次回月経予定日頃に少量の月経様出血があることがあり,これを正常月経と思い込んでいるものも,かなりいるものであるから,量についても,正常と変りないか,少なくはならなかつたか,やはり噪しく問診しないと間違つた判断をすることがある.このさい乳房の張り工合も問診すると参考になる.現在では手軽な血清学的妊娠診断法が販売されているから,疑わしい時には尿を採取して検査すれば安全である.
 腹痛その他で産婦人科外の科を訪れる婦人で自分から無月経を申し出ることはまずないし,医師の方でも特に患者に月経状態まで問診する者も少ないので,時に子宮外妊娠をみ落して重大な結果を招くこともあり,外科系統では開腹し,やつと一命を取止めたということもしばしば耳にするところである.無月経→妊娠→下腹痛(時に軽度の性器出血)→外妊,このことを頭の片隔において載ければよい.

論説

イレウス時における胆汁の病態生理学的意義について

著者: 松倉三郎 ,   代田明郎 ,   三樹勝 ,   富田一男 ,   内藤委仲 ,   服部搏之 ,   恩出昌彦 ,   山下精彦 ,   柴積 ,   加藤裕康

ページ範囲:P.383 - P.392

はじめに
 イレウス時における胆汁の意義については,古くからいろいろ論ぜられ,1912年すでに,Maury1)は,胆汁をイレウス毒素の基と考え,その後Brock-Mann2)(1927)はイレウス時には胆汁が腸管に流下しないために中毒が起こる,といわゆる胆汁説を提唱したが,胆汁を曠置してもイレウス症状が起きないことからBenedict,Stewart,Cutner3)(1932)Jenkins4,5)(1929,1932)らにより否定された.
 ところで,斉藤(正意)6-8)(1924,27)は実験的イレウスにおいてもつとも急性な死が招来されるのは輸膵管直下部の十二指腸閉塞であるが,この際輸胆管を結紮して胆汁の十二指腸内への流入を阻止すると,動物は激しい中毒症状を呈して,より早期に死亡すると述べ,さらに十二指腸液,膵液,胆汁の関係を詳細に研究し,十二指腸閉塞において急性な中毒死をきたす源泉は膵臓で,膵液は輸膵管を出て十二指腸に入る瞬間激しい毒性を発揮するものであるが,胆汁は膵液によつて生ずる毒性を減弱せんとつとめ,高位腸閉塞においては膵液が十二指腸内で賦活せられて毒性を発揮し,胆汁の力及ばずして遂に毒性物質が粘膜を介して血行に入り中毒死が招来されるものと述べている.

Brain scanningによる頭部外傷診断への応用

著者: 永井肇 ,   早川良平 ,   小林達也 ,   星川信

ページ範囲:P.393 - P.396

はじめに
 従来,頭蓋内疾患の補助的診断法としては,脳血管撮影,脳室撮影,超音波診断などが主として行なわれてきているが,これらの診断法は,いずれも脳血管走行の異常,あるいは脳室系の偏位などにより間接的に病巣の局在を知ろうとするものであり今ひとつ直接的でないきらいがある.
 最近,放射性同位元素の各方面での利用は,まことにめざましいものがあり,あるいはtracerとして,あるいは治療用として,多くの核種が,医学界においても使用されるようになつたが,診断面での応用は比較的新しいことである.とくに,神経学の領域では,脳循環の測定とbrain scanが現在主たるものといえよう.

トピックス

肝臓の超音波断層写真による診断

著者: 尾本良三

ページ範囲:P.397 - P.397

 肝臓という臓器は,その局所性病変の検出という点では,むしろ困難なものに属している.また,開腹して直接肝臓を触れてみても深部の病変までは,よく分らないというようなことも時には起こつてくる.このような点から,はやくより肝臓が超音波検査の良い適応として内外の多くの研究者達によつて,とりあげられてきた.もちろん,肝臓の局所性病変の診断法には,すでに,シンチグラムや肝血管,胆管などの各種造影法,また,腹腔鏡や肝生検などがあつて,それぞれ独自の診断的価値を発揮しているが,一方,この超音波検査法も,それらの診断法と相補うものとして,ルーチンの検査になりつつある,同時に,その病変検出能力の向上に対する実際上の要求も大きい.
 最近仙台において開かれた,日本超音波医学会第10回研究発表会において,腹部,肝臓の超音波検査に関する報告が数多くなされ熱心に討論された.また,同じ学会において「超音波断層写真法」についてのシンポジウムがもたれた.筆者も,共同研究者室井とともに,このシンポジウムに,肝臓の超音波断層写真法をテーマに参加した.

海外だより

Massachusetts General Hospitalにおける冷凍血液の現況

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.398 - P.399

 第13回日本輸血学会総会におけるCharles E. Hugginsの特別講演をきつかけとして,日本でも著者らが冷凍血液を臨床に使用しはじめて,はや1年たつた.著者は,この辺で一度Massachusetts General Hospitalにおける冷凍血液の使用と基礎的研究の現況を見てみたいと思つていたところ,ニューデリーにおける第5回世界心臓病学会の帰途,1966年11月17〜18日,MGHにHugginsを訪れる機会をえた.赤血球にグリセリンあるいはジメチルスルフォキサイドのような冷害防止剤を添加して−80℃下に冷凍すると数ヵ年の保存が可能である.しかも冷凍血液の輸血後には血清肝炎の発生が皆無であるということだけでも,Hugginsによつて臨床応用に導入されたこの研究の前途は,洋々たるものである.
 MGHの冷凍血液部門は,White Building(写真中央)一階の血液銀行の一角にある.現在改築中なので四方板壁で区切つた小部屋からなり,特に名づけられているわけではないが,冷凍庫室,血球洗滌室,遠沈室,および2〜3の小研究室からなつている.

患者と私

患者の身に自分をおいて

著者: 中村徳吉

ページ範囲:P.400 - P.401

 私は,外科の仕事をはじめてから54年になる.もう年寄りずらをして経験を語つても,笑われることはないと思う.
 私は,患者に接する時,先ずこの患者は何を第一に希望しているかを考えてみる.患者は,無論生命を第一に考える.しかし現在自分を苦しめている苦痛,疼痛から脱れたいという希望は,第一は強いものだ,苦痛の烈しい時は,患者は生死は忘れてしまう位なものだ.早く苦痛を脱れたい気持で一杯になる.医者が重い患者を診断する時は,先ずどうして生命を助けるかを考える.これは,当然なことである.しかし,苦痛ある者にそれを除いてやることも医師の任務であることを忘れてはならぬ.手術その他の治療法で苦痛が増加されるような場合は,止むをえぬことではあろうが鎮痛剤あるいは催眠剤で軽い痛みですむようにする.しかし実際にあたり一生懸命に大きい手術を行なう時,疼痛などは考えておられない.患者にもう少しだから我慢しろといつつ手術を行なうことが,昔はしばしばあつた.

学会印象記

癌学会に拾う

著者: 小林博

ページ範囲:P.402 - P.405

 おかげをもつて,約2000人のご出席をえて第25回癌学会総会を盛会のうちに終ることができました.これは会員,評議員,理事の各位,座長,シンポジウムの司会者の方々のなみなみならぬご努力のたまものと感謝しております.まことにありがとうございました.
 今回の学会は,いくつかの点で,従来の総会とは異なる運営をいたしました.例えば,総会記事を学会開催前に発行(これは今後とも行なわれる予定です)いたし,とくに肺癌学会,癌治療学会との協力に努力いたしました.

雑感

インターン問題と卒業後医学教育

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.406 - P.406

 山があるから山に登るという言葉がある.病人がいるから医者になるということがあつてもよい.人類が存在したとき,同時に必ず病人が存在した.そして病人を救うための努力が払われたとき,医者が生れたのである.
 人間が,生れれば必ず死ななければならないという運命にある以上,医者は常に存在する.問題は医者が自分の生活のために病人を利用するのか,それとも病人を救うことに専心しないではいられないものなのかどうかの差異である.

外国文献

熱傷のantisepticとaseptic,他

ページ範囲:P.407 - P.410

 polymyxin creamでStaph.aur.,Ps.aeruginosaなどのneomycin抵抗性で,最もしばしば死因となる菌感染を有効に抑制しうる.またMoyer(Arch.Surg.90:812,1965)はO.5%硝酸液をふくむ湿布でPs.aerug.を予防しうるとし,Lindberg (J.Trauma 5:601,1965)はSulfamylon 10%creamが有効だとしている.また空気からの汚染に対しair-conditioningが行なわれることは周知のところである.Casonら(Brit.M.J.2:1288,1966)はantiseptic法に硝酸銀0.5%液湿布,同クリーム,ペニシリンクリーム,chlorhexidine罨法を比較した.Ps.aerug.検出は硝酸銀塗布10.9%,ペニシリン51.2%で硝酸銀法が有効.chlorhex湿布が最も効果低い.Coli類はいずれの方法でも60〜70%検出し,Staph.aur.はchlorhex最低で4%,他はほぼ同成績,Ps.aerugはいずれも硝酸銀0.5%以下で消失し,最も抵抗高いK.aerogenesでも同様である.この方法で2〜3週,熱傷面を無菌にすることができるし,この方法の場合が体温上昇,呼吸数その他の臨床所見もつとも軽い,毒作用はみられなかつた.

手術手技

胃切除術六題(その4)—単純性胃全剔術

著者: 中山恒明 ,   織畑秀夫

ページ範囲:P.413 - P.417

 今回は,胃全剔手術の要点についてお話してみたいと思います.皆さんもご存知の通りに,約20年前までは胃全剔術という手術は,もつとも熟練した外科医によつてさえも,50%以上の手術の死亡率があるという手術でした.したがつてこの手術は一般に開業の外科医の皆さんによつて行なわれるというようなことはなくて,大学の教室としても特に選ばれたいくつかの教室がこれを行なつたに過ぎません.例えば九大の後藤外科であるとか,京都の鳥潟外科であるとか,千葉の瀬尾外科であるとかです.今日では私自身が種々の工夫をいたしまして,その工夫の要点さえ皆さんがお守りになれば,普通の胃の切除術と同じように容易にこれは施行できます.その点をこれから述べたいと思います.
 まず,対象となる疾患が主として小彎部から噴門部にかけての胃癌で,胃癌研究会の分類によりますと,C(噴門側の1/3)とM(中央の1/3)に比較的大きな癌があるという場合です.ここに従来行なわれたいくつかの形の胃全剔の形を示しますと,第1には,食道と十二指腸とを吻合する方法,また十二指腸は塞いで,食道と空腸とを吻合して,しかも空腸空腸を吻合するBillroth-Ⅱ法と似た方法,また特殊な形として友田教授の工夫した友田氏法であるとか,瀬尾教授が工夫した食道と十二指腸の間に空腸の一部を有頸移植する方法,またルーワイの方法,それから最近私が工夫したいわゆるβ吻合による方法などがあります.

講座 外科医のための心電図入門・2

虚血性心疾患の予知と対策〔1〕

著者: 難波和

ページ範囲:P.418 - P.424

 冠状動脈に血流異常があると心筋虚血をおこし,それが原因となつて急性心不全がおこつてくる.したがつて,これを予知することが大切である.このために行なわれる方法は負荷心電図法である.本稿ではその方法および判定基準,さらにそれに対する対策について述べる.また心筋虚血は冠動脈硬化症がなくても出現する場合があるので,それを例示して対策を考えて見ることにした.

症例

特異な経過をたどる先天性肥厚性幽門狭窄症

著者: 松浦雄一郎 ,   堀川嘉也 ,   梶本照穂

ページ範囲:P.431 - P.436

はじめに
 新生児,乳児期には嘔吐を主症状とする患児にしばしば遭遇し,その中の一つに先天性肥厚性幽門狭窄症による場合がある.
 本症は,本邦においてはきわめてまれな疾患とされているが,私共は最近数年間に先天性消化器奇型の44例を経験し,そのうち先天性肥厚性幽門狭窄症が6例(13.6%)もあり,案外に多いのに驚いたしだいである.

Barsony氏病の3例

著者: 志羽孝 ,   小林茂信

ページ範囲:P.437 - P.439

はじめに
 1929年Barsonyにより初めて記載された項中隔部の石灰沈着症,すなわち,Barsony氏病を短期間に3例経験したので報告する.

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人事消息

ページ範囲:P.335 - P.335

奥村修三(岡山大助手 脳神経外科)助教授に昇任
佐藤 鴨(鳥取大功教授 麻酔科)教授に昇任

NEW ARRIVAL 新着洋書案内

ページ範囲:P.364 - P.364

Barker:
 Peripheral Arterial Disease (Major Problems in Clinical Surgery Vol. 4). 229 pp. with 1 figs. 1966 (Saunders)   3,400

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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