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論説
イレウス時における胆汁の病態生理学的意義について
著者: 松倉三郎1 代田明郎1 三樹勝1 富田一男1 内藤委仲1 服部搏之1 恩出昌彦1 山下精彦1 柴積1 加藤裕康1
所属機関: 1日本医科大学松倉外科教室
ページ範囲:P.383 - P.392
文献購入ページに移動イレウス時における胆汁の意義については,古くからいろいろ論ぜられ,1912年すでに,Maury1)は,胆汁をイレウス毒素の基と考え,その後Brock-Mann2)(1927)はイレウス時には胆汁が腸管に流下しないために中毒が起こる,といわゆる胆汁説を提唱したが,胆汁を曠置してもイレウス症状が起きないことからBenedict,Stewart,Cutner3)(1932)Jenkins4,5)(1929,1932)らにより否定された.
ところで,斉藤(正意)6-8)(1924,27)は実験的イレウスにおいてもつとも急性な死が招来されるのは輸膵管直下部の十二指腸閉塞であるが,この際輸胆管を結紮して胆汁の十二指腸内への流入を阻止すると,動物は激しい中毒症状を呈して,より早期に死亡すると述べ,さらに十二指腸液,膵液,胆汁の関係を詳細に研究し,十二指腸閉塞において急性な中毒死をきたす源泉は膵臓で,膵液は輸膵管を出て十二指腸に入る瞬間激しい毒性を発揮するものであるが,胆汁は膵液によつて生ずる毒性を減弱せんとつとめ,高位腸閉塞においては膵液が十二指腸内で賦活せられて毒性を発揮し,胆汁の力及ばずして遂に毒性物質が粘膜を介して血行に入り中毒死が招来されるものと述べている.
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