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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科22巻5号

1967年05月発行

雑誌目次

特集 胆石症手術の問題点

胆石症手術の問題点

著者: 秋田八年

ページ範囲:P.619 - P.624

はじめに
 先達の努力にもかかわらず,胆石の成因論議は,いまだ完結していない.したがつて,その根本的な予防ならびに薬物療法,特に胆石溶解療法などは攻究の途上にあるといえる.現時点では,胆石治療の主体性は,なお外科医の手に委ねられていると自負してよいであろう.しかし,多科療法の成績にも必ずしも慢心を許さないものがあることも認めないわけにはいかない.以下,この特集のほかの記述との重複をなるべく避けつつ,思いつくままに問題を設案し,それに著者なりの解答を一応準備する型で論著を進めていきたい.

胆石症手術後の胆石様発作

著者: 西村正也 ,   久次武晴

ページ範囲:P.625 - P.631

はじめに
 胆道外科領域において,手術手技の改善,化学療法,麻酔法,術前術後の輸液等の進歩により死亡率の低下はもちろん,術後成績も飛躍的に向上した.手術死亡率は胆嚢摘出術では1%以下,胆管切開例では4%以下となり,術後成績でも90%近い治癒率をあげている.しかし問題となるのは再発および術後愁訴である.文献上1)2)3)これら術後不満足例は胆石症で10〜20%とされている.教室では,これら不満足例に対して積極的にその原因を追究し,大部分が術前の十分の診断と術中の注意深い処置により避け得られることを知つた.教室において再手術を施行された例は,胆道内遺残結石,癒着障害,遺残胆嚢管,胆道狭窄,蛔虫胆道迷入,急性膵炎,切断神経腫,肝,横隔膜下または腹壁膿瘍,腫瘍などである(附表)3).再発手術例の大半は結石によるもので,われわれの経験では手術例の約42%は胆道内結石である.これらの結石が術後再生したものか,あるいは手術時,見落されたものかは興味あるところであるが,欧米の諸家の見解からすると,自然再発結石は稀であり,多くは遺残結石である.しかし本邦においては,胆管内より発見された結石のほとんどがビリルビン石灰石であり,中には前回手術時に残された絹糸,あるいは寄生虫体より発した結石,あるいは遺残胆嚢管内結石が発見されることから,欧米と異なり,胆石再生の可能性も大きい.以下各症例について述べる.

総胆管結石の処置

著者: 綿貫重雄 ,   窪田博吉 ,   福島元之

ページ範囲:P.633 - P.638

はじめに
 胆石症の外科において,胆嚢結石は診断が比較的容易であり,治療成績もすこぶる良好であるから問題はすくないが,胆嚢炎や総胆管結石は,なお,未解決の問題がすくなくない.
 さて,総胆管結石に対する処置は,端的に言えばいかにして結石の遺残,再発を防止するかということである.そのためには,まず,適確な診断と徹底的な結石除去が根本であり,次いで,術後に胆汁の停滞,胆道感染,胆汁成分の変化など結石再発の条件となりうる状態を残さない処置が必要である.しかし,ときには肝内の結石や胆泥を完全に除去しえないことがあり,この場合には,止むをえず症状再発を防止する処置をとらなければならない.

良性胆道疾患に対する乳頭部成形術の適応と手技

著者: 槇哲夫 ,   鈴木範美 ,   根本猛 ,   高橋渉

ページ範囲:P.639 - P.646

はじめに
 胆道疾患,なかんずく胆石症においては,ファーター乳頭部の病変ないしは機能異常が,胆嚢自身の病変よりもはるかに重要な役割を演じている場合のあることは,再三指摘してきたところである.とくに,ビリルビン石灰石生成の誘因として乳頭炎Papillitisは局所的因子として大きな意義を有している1)2)
 一般に,乳頭炎が起ると,胆汁うつ滞や胆道系の上行感染とくに大腸菌感染,さらに膵液の逆流などを起し,胆管拡張や結石形成を助長するものである.実際,かつてよく見られた所謂無石胆嚢炎においても,ビリルビン石灰石においても胆管の拡張を伴うことが特徴的であり,その切除乳頭部の組織検査では筋間結合織の増殖,オツジ筋肥大増生等のPapillitis chronicaの像がみられる3)

十二指腸ゾンデの使用経験

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.647 - P.649

はじめに
 昭和40年2月に本学に消化器病センターが開設されて以来,胃,食道疾患に次いで,胆嚢疾患の増加が目立つており,約2年を経過したこの頃は,胆嚢剔除後の愁訴をみる例も増加してきている.
 これらの愁訴のうち最も問題になるのは上腹部痛である.ごく軽い腹痛から手術前の疼痛発作のような激痛・疝痛に至るいろいろの段階があるが,手術した外科医としては非常に困るわけである.

黄疸を伴つた胆石症の手術適応上の問題点

著者: 松倉三郎 ,   三樹勝 ,   藤島義一 ,   内藤委仲 ,   山井利夫 ,   飯岡一彦 ,   遠藤昌夫 ,   和田治彦 ,   市川豊 ,   谷口恒義 ,   柴長儀 ,   清水淑文 ,   寺岡資郎 ,   箱崎敬

ページ範囲:P.651 - P.670

はじめに
 胆石症の手術適応ならびに時期については,諸家によりかなりまちまちの考え方があるようであるが,私どもの教室では臨床上の観点から次のような考え方をしている.すなわち,(1)胆石症の発作がしばしばある場合,(2)黄疸のある場合,(3)胆石発作の既往歴があり,現在急性炎症の症状が著明の場合,(4)胆石症による肝機能,膵機能障害が証明される場合,(5)胆石症による心機能障害の認められる場合,等々を指標として手術を行なつていることは,いままでにもしばしば述べてきた1)2)3)
 このうち臨床上最もしばしば遭遇する手術適応は,第1,第2,第3の場合であるが,同一患者でこれらの適応をいくつか同時に兼ね備えている場合も多く,かかる際はその病態生理も複雑で,外科的治療に際しても,時にはなはだ難渋し,根治的手術の果せぬままに患者を不幸の転帰に追いやる外科医の悲哀を感ずることも決して少なくない.特に黄疸を伴つたような場合はなおさらのことその感が強い.

グラフ

胆石症の超音波診断法

著者: 和賀井敏夫 ,   大橋尚 ,   高橋駿

ページ範囲:P.605 - P.610

 生体内部の構造を,像として描写する生体の映像法としては,現在,X線撮影がいろいろの造影法の進歩とともに,最も普通に用いられているが,最近,超音波という一種の波動がこの目的をある程度満足するとともに,いろいろの利点があることも判明し,新しい生体の映像法として,臨床診断にも用いられるようになつてきた.超音波の特徴としては,病的組織も含めた生体軟部組織の分析能力に優れていることや,生体に無害であることなどがあげられ,超音波像そのものの分解能は,現在のところ,X線像に較べると劣つてはいるが,これらの超音波の利点を利用した診断法が次第に発展してきた.

外科の焦点

癌免疫療法の可能性

著者: 平井秀松

ページ範囲:P.611 - P.618

はじめに
 現行の癌治療法は外科手術,放射線照射,化学療法の三法を主体とするが,必ずしも思わしい成果を挙げてはいない.手術や放射線療法には明らかに限界があり,主要病巣を除去,ないし照射しえても,発見できない小さな転移までも完全に消滅せしめることは不可能だからである,結局は再発ということに終ることが多い.
 化学療法は理想的であるが,今日までのところ,癌に効果のある薬剤に遭遇していないし,また,化学療法剤発見のための現在の努力を根気よく続ければ,結局は特効的な薬剤が発見されるであろうとの約束もえられていない.

臨床メモ

頭頸部外傷後の表在性頭痛とその治療

著者: 宮崎雄二

ページ範囲:P.631 - P.631

 近年の交通・産業災害の増加にともない,頭頸部外傷も激増し,これに平行して外傷後に各種愁訴を訴える患者も著しく増加してきている.筆者は,年間3000余人にのぼるこれら患者の診療に従事してきているが,この経験によれば,それらの愁訴のうち,いわゆる不定愁訴とすべきものは案外に少なく,Somaticな原因を明らかにしうることがしばしばである.
 頭頸部外傷後の愁訴の中でも頭痛は最も多く訴えられるものであるが,これについては充分な問診を行なうことが重要であり,特に頭痛の性質が重要で,搏動性か,表在性であるか,一定部位にのみ発生するか,他部位へ放散するか,拡大するか,などについて執拗に問診して頭痛の性質を分析することが重要である.

論説

乳癌の病期分類についての提案

著者: 島田信勝 ,   天晶武雄 ,   榎本耕治 ,   嶋田貞博

ページ範囲:P.671 - P.676

はじめに
 乳癌治療の歴史は一世紀をこえ,治療成績に関連して数多くの病期分類がなされてきた.しかしながら,どの分類をみても一長一短があり,特に,リンパ節転移の項目に関する臨床的各病期分類が,必ずしも乳癌の予後に予測を与えないことは,乳癌研究の面にたずさわる諸学者の一様に悩みとするところであろう.臨床的に個々の乳癌を幾つかの病期に分類しても,必ずしも検査室の成績に一致しないし,検査室の成績にもとづいて分類を行なつても,その症例については,前もつて治療を決定するためのなんらの示唆も与えてはもらえない.なんとなれば,病理的な成績はすでに治療された症例に関するDataであるからである.そこで,われわれは各病期分類をこみ入つた幾つかの段階に分けることをやめて,一応,進行期乳癌,非進行期乳癌および早期乳癌の3つに分け,このように分類することの妥当性,非妥当性について論じてみたい.

肺癌患者における131I-MAA Pulmogram—治療前後の肺動脈血流比について

著者: 小山田日吉丸 ,   米山武志 ,   砂倉瑞良 ,   尾形利郎 ,   渥美暁子

ページ範囲:P.677 - P.684

はじめに
 Taplin1)によつて変性アルブミン(MAA)が開発されて以来,シンチスキャンニングによる肺のVisualizationは一躍脚光を浴びるようになり,現在ではシンチスキャンナーのある病院では頻繁に臨床に応用されるようになつてきた.これはγ-Emitterで標識されたMAA粒子が静注によつて肺の毛細血管に栓塞を起す点を利用している.しかし文献によれば,初期においては粒子の大きさが一定しないために,小さい粒子が肝の細毛内皮系に摂取され,そのため右下肺野では適確な所見がつかめないこともあつたようである2)
 わが国においては1964年,上田ら3)および小川ら4)が比較的一定の大きさを有する131I標識変性アルブミン(131I-MAA)の製作に成功して以来,われわれに対する供給が可能となつた.これによれば,注射直後はほとんど肺の毛細血管にひつかかり,それを通過する部分はnegligibleであつて,肝による肺シンチグラムの影響はまたく認められない.そもそもこの方法は前述のごとく,肺の毛細血管に栓塞を起させて行なうため,得られたシンチグラムは肺動脈系の血流分布の状態を示すものと考えてよい.したがつて,肺栓塞のような血流障害の診断には,現在のところ最も適当な方法の一つといえよう.

Cystic Duct Syndrome

著者: 富田濤児 ,   植草実 ,   堀内弘 ,   遠藤巌 ,   米山桂八

ページ範囲:P.685 - P.689

はじめに
 胆石症様の発作性右季肋部痛を訴えるが,胆嚢造影を行なうと胆嚢はよく出現し,しかも結石をみとめない症例のうちには,臨床的に判定がむずかしい胆道系のいろいろの器質的変化,あるいは機能的異常が発症の原因となつている場合がある.Westphal1)に始まる胆道ジスキネジーにおける胆嚢胆汁の排出障害は胆道系の自律神経失調に由来すると理解されているが,その概念については議論が多く,診断の根拠は必ずしも明確でない.しばしば器質的原因からくる場合をも含めるものもある.著者らはこのような,いわゆる胆道ジスキネジー様の症例のうち,胆嚢管の疎通性が発症の原因となつていると考えられた症例について検討,報告する.

トピックス

新型伸縮包帯について

著者: 藤田五郎

ページ範囲:P.699 - P.700

 従来,包帯学上,分類され定義されている包帯の目的や種類はきわめて多種多岐にわたつている.
 戦後,創傷治療法は,防腐法的処置主義に代つて,無菌的処置主義が行なわれる傾向にある,その理由は,大陸医学に代る英米医学の影響と,さらに抗生物質の発達が,その主な原因と思われる.一方,高分子化学が発達をみて,いわゆる包帯材料に大変革をもたらしたが,それに加えて,紡績部門における糸とその編み方に改良工夫が試みられ,かつてみられなかつたような織布を作り出すにいたつた.これは,日常の衣類はもちろんのこと,各種ガーゼから,巻軸帯,絆創膏にまで利用されるにいたつた.

海外だより

滞独雑感

著者: 山田公雄

ページ範囲:P.702 - P.703

 ライン河に沿った美しい都市Düsseldorfは,ドイツのうちで最も日本人の多い街ですが,WuppertalはそのDüsseldorfから東に約30 kmはなれ,その名のごとくWupper川の谷に沿つてうなぎの寝床のように細長い,人口40万あまりの都市です.モノレールの発祥地としては世界的に有名で,そのSchwebebahn(懸垂式モノレール)は70余年の歴史のうち,あるとき,動物園へ運搬される途中の象が落ちたが無傷であつた,というユーモラスな事件以外に,一度も事故を起したことがないというのが自慢で,今でも市民の足として無くてはならない交通機関となつています.Wuppertalには大きな市立病院がElberfeldとBarmenにそれぞれ一つずつあり,私はElberfeldの市立病院外科主任Reimers教授のもとで,2年半あまりにわたつて末梢血管疾患の診療に従事する機会に恵まれました.

患者と私

仁術は現存する

著者: 三宅徳三郎

ページ範囲:P.704 - P.705

体験
 私の記憶では,子供の時には病気という名の付くほどのものにかかつたことはない.しかしよほど腕白だつたのか,身体髪膚,敢えて之を毀傷することたびたびで,外科の処置を受けたことはしばしばあつた.しかし正式に手術を受けたことが三度ある.第一回は高等学校の入学試験の際,軽度の外痔瘻のあることを指摘され,入学までの一カ月余を利用して,日赤病院で入院手術を受けた.その時腰麻を施行され無痛だつたのに驚いた.しかし術後尿閉で二日あまり苦しめられた体験は,いまなお忘れられない.第二回は高等学校の生徒の時,野球で左肩胛骨の下に死球を受け,それが原因で次第に左手が上がらなくなり,当時の金沢医専の外科の外来に受診した.ちようど下平用彩先生の診察日だつたので,ポリクリに引張り出され,多勢の名医の卵に精査(?)されたが,病名不明のまま教授のところに送られ,プンクチオンによつて深部の筋炎と診定,翌日の臨床講義用の患者となつた,その時の手術は局麻だつたので,歯を喰いしばつて辛抱したが悲鳴を挙げたいほど痛かつた.第三回は大学の学生の時,医化学の実習中フラスコが破裂して,左示指に腱断裂を伴うほどの負傷をして,第一外科(三宅外科)の外来に運ばれ腱縫合を受けた.其の時は局麻だつたがあまり痛くなかった.今から考えると多分伝達麻痺だったらしい.

ニュース

外科とBlood Flowmeter

著者: 堀原一 ,   鰐淵康彦

ページ範囲:P.706 - P.707

 元来,臓器血流量の測定はいろいろの工夫をこらして,間接的に行なわれていた.すなわち例をあげれば,心拍出量はFickの原理と色素稀釈法で,肝・腎血流量は,それぞれからほぼ選択的に排泄されるBSPやパラアミノ馬尿酸ソーダで,脳血流量はinertなガスである笑気でなどという類である.これらは,たとえ誤差が大きく方法が繁雑であるといつても,麻酔や外科手術を要せず,臨床検査としての意味は十分あるわけであるが,実験外科の領域ではもとより,臨床の患者においても,手術時などではむしろ直接に臓器血管を操作することができ,しかも誤差も少ないうえに連続反覆測定に耐えるし,結果は自動的に記録される,血管を切開しないですむし,一時的にも血流を遮断しないでもよいという,生理的な直接血流量測定法があればさらによい.そのうえ直接法でありながら,長期にわたつて測定を行なえるならば,申し分なく,実験ならびに臨床外科での価値は高い.
 現在こういう能力を完全に満たす血流量の直接測定法はまだないとはいつても,それに近づきつつあるものとして,いろいろの原理をもつ流量計がある.この詳細についてはWetterer1)の綜説を参照されたいが,実際に最もよく用いられているのは電磁流量計とnon-cannula-ting probeといわれる電磁トランスデューサーの組合せである.

外国文献

創治癒促進にZn,他

ページ範囲:P.708 - P.711

 Strain(Univ.Rochester Report 1954)は熱傷の治癒にZnを,経口的に与えたところ,著しく促進されたのを経験したが,その理由が判らないでいた.1955年以後,米国では家畜の皮膚損傷を防ぐため,商業的に,食飼の中にZnを加えることになつてきた.しかし臨床にこころみるようになつたのはPilonidal sinus手術創治癒促進に成功(Surgery 59:821,1966)した経験から,始められた.USPのZn sulfate 220 mg t.i.d.61日の,経口投与は無害である.そこで(Lancet 1:121,1967),同年齢,同条件のcontrolと上記Zn群とを比較検討した.wound volumeは両群大体同じ,完全治癒までの日数,1日のhealing rate(ml/24h)はそれぞれControl 80.1±13.7日,Zn群45.8±2.6日(差P<0.02).Control0.44±0.09m1/24h, Zn 群 1.25±0.30ml(P<0.01),t=2.58.つまりZn療法は創治癒を有意に促進する.その経過を見ると,開始より15日ごろまでは両群に有意差なく,これをすぎると.Zn群の創が急に小さくなる.大きい創になるとZn群はControlの1/2の経過で全治した.きわめて興味ぶかい.

手術手技

胃切除術六題(その6)—一時的胃瘻造設の方法と効果

著者: 中山恒明 ,   織畑秀夫

ページ範囲:P.715 - P.718

 私たちが行う胃の手術のうちで,もつとも難しいと思われているのは,胃の噴門部の切除です,この際,私たちは,患者をもつとも安全に経過させて治療するために,一時的な胃瘻造設ということを近年行なつてきて,はなはだ良い結果を得ています.今回は最後の仕上げとして,この方法と効果,そして経過について述べて,この6回にわたる胃手術のコツの図説を終えたいと思います.
 前回は胃全摘出術ならびに他臓器(肝,膵,脾)の合併切除のコツについて説明しましたが,胃全摘出をする場合には非常にしばしば癌が胃全体に進んでいる場合に行なわれるものですが,特に胃小彎部の噴門部寄りに癌が局在していて,噴門側2/3の胃切除をする場合には,残つた幽門側の胃を直接に食道と吻合するのが原則的方法であります.しかし,例えば幽門痙攣というようなことが起こつて,吻合部には狭窄がないにもかかわらず,患者が食事がとれないというようなことが起こります.そこで幽門成形術を行なつてはどうかということになります.

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人事消息

ページ範囲:P.718 - P.718

渥美 和彦 (東大助教授 医用電子研) 教授に昇任 臨床医学電子部門
玉置 拓夫 (長崎大助教授 整形) 東北大教授に昇任 温泉医学研 リハビリテーション医学

検査法

経皮経肝胆道造影法

著者: 植草実

ページ範囲:P.719 - P.724

はじめに
 肝外胆管の狭窄,閉塞による黄疸の発現機序には結石性・非結石性,良性・悪性,あるいは管内性・管壁性・管外性などいろいろあり,胆道レントゲン診断法の進歩にもかかわらず,閉塞性黄疸の原因の臨床鑑別は,しばしばまったく困難である.
 閉塞性黄疸は外科療法によらなければ改善できないが,長期にわたる,あるいは高齢の黄疸患者には手術は危険を伴なう.術前に閉塞の性質,部位,拡がりを正確に把握できれば,手術の適応,術式,予後を判定,予測し,手術の安全を期する上に大きな利点がある.しかし経口法,静脈法による間接胆道造影法は黄疸が著しい場合には,胆道系を造影せず,応用できない.したがつて閉塞性黄疸患者の胆道病変の探索は開腹によるか,さらに術中に直接胆道系を造影する方法が行なわれてきた.経皮的に胆嚢を穿刺して胆道系を造影する手段があるが,これには胆汁漏出の懸念が大きく,胆嚢がすでに剔除されている場合,胆?管が閉塞しているときは胆道は造影されないわけである.ここにのべる経皮経肝胆道造影法percutan-eous transhepatic cholangiography(PTC)は,経皮的に拡張した肝内胆管に造影剤を直接注入して胆道系を造影しようとするものであつて,閉塞性黄疸患者の胆道造影に優れた臨床診断手段である.わが国でも最近では広く行なわれていると思われるが,報告は少ない.

他科の知識

災害神経症の治療

著者: 佐野新

ページ範囲:P.725 - P.728

はじめに
 「災害神経症」というのは,災害を契機として発症してきた神経症の総称であります.したがつて「災害神経症」と呼ばれる神経症の中には,神経症発生の心理過程による分類からみた,「一般神経症」,「心気症」,「ヒステリー」などの種々な病像が含まれています.
 神経症研究の歴史をみますと,身体疾患の発見の進歩にしたがつて,以前には「神経症」と思われていたものが,漸次,身体疾患の中に加えられてきました.「災害神経症」の場合にも,とくに頭部外傷においては第1次および第2次大戦を通じての経験から,患者の訴えが器質的障害の症状であつたことが明らかにされたものが数多くあります.

症例

肋骨に原発したEwing's tumorの1例

著者: 兼行俊博 ,   石田益偉 ,   小原正 ,   田村陽一

ページ範囲:P.729 - P.731

はじめに
 1924年,James Ewing5)が組織学的に既存の骨肉腫とは異なつた円形細胞肉腫を報告して以来,このEwing'stumorは多数の学者の研究にもかかわらず,いまだその本態は解明されておらず,著者によりまちまちに記載されている現状である.しかし,現在,最も一般的な見解はLichtenstein and Jaffe13)の説で,この腫瘍は骨原性でありながらまつたく骨形成能を欠き,骨髄の細網組織より由来するものといわれ,Oberling and Raileanu16),赤崎4)らも同様な意見である.組織学的には,血管の豊富な間質組織に支持された,核膜の明確な比較的大きな円形の核を有する細胞質に乏しい腫瘍細胞群が,蜂窩状に,あるいは柱状に配列し,この細胞は血管周囲へ密集する傾向があり,Pseudorosetteを形成することがある.骨肉腫のうち,Ewing's tumorの発生頻度はGeschi-ckter and Copeland6)によれば15%であるが,Kolodny11)(7.7%),小島12)(8%),前山14)(3.6%)の報告によれば比較的稀有な疾患といえよう.
 最近,われわれは左第1肋骨に原発したEwing'stumorの1例を経験したので,ここに報告し,大方のご批判を仰ぐ次第である.

Hindquarter Amputationの3例について

著者: 木村千仭 ,   堀尾慎弥 ,   松岡満 ,   大宮和郎

ページ範囲:P.733 - P.737

はじめに
 半側骨盤切除術は,その適応・手術侵襲の大なることと患者の理解・予後と高度の死亡率などの点で,日常慣用されている手術ではない.欧米においては,その報告例も比較的多いようであるが,わが国では服部(1934)・桑原教授(1950)らの報告以来,22例を数うるにすぎず,特に積極的に行なわれているとは思われない.しかしながら,近年の化学療法・麻酔の進歩に伴ない,この手術に関する問題に検討を加えることも敢えて蛇足ではないと考える.われわれは最近3例の半側骨盤切除術施行例を経験したので,ここに報告し,諸賢のご批判を仰ぎたいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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