文献詳細
論説
肺癌患者における131I-MAA Pulmogram—治療前後の肺動脈血流比について
著者: 小山田日吉丸1 米山武志2 砂倉瑞良1 尾形利郎2 渥美暁子1
所属機関: 1国立がんセンター放射線部 2国立がんセンター外科
ページ範囲:P.677 - P.684
文献概要
Taplin1)によつて変性アルブミン(MAA)が開発されて以来,シンチスキャンニングによる肺のVisualizationは一躍脚光を浴びるようになり,現在ではシンチスキャンナーのある病院では頻繁に臨床に応用されるようになつてきた.これはγ-Emitterで標識されたMAA粒子が静注によつて肺の毛細血管に栓塞を起す点を利用している.しかし文献によれば,初期においては粒子の大きさが一定しないために,小さい粒子が肝の細毛内皮系に摂取され,そのため右下肺野では適確な所見がつかめないこともあつたようである2).
わが国においては1964年,上田ら3)および小川ら4)が比較的一定の大きさを有する131I標識変性アルブミン(131I-MAA)の製作に成功して以来,われわれに対する供給が可能となつた.これによれば,注射直後はほとんど肺の毛細血管にひつかかり,それを通過する部分はnegligibleであつて,肝による肺シンチグラムの影響はまたく認められない.そもそもこの方法は前述のごとく,肺の毛細血管に栓塞を起させて行なうため,得られたシンチグラムは肺動脈系の血流分布の状態を示すものと考えてよい.したがつて,肺栓塞のような血流障害の診断には,現在のところ最も適当な方法の一つといえよう.
掲載誌情報