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特集 血管の外科 綜説
血管移植法の新しい試み—とくに自家腸管遊離移植による食道再建への応用
著者: 中山恒明1 織畑秀夫1 太田八重子1 羽生富士夫1 岩塚迪雄1 野本昌三1 御子柴幸男1 浜野恭一1 鈴木茂1 秋田善昭1 今給黎和典1
所属機関: 1東京女子医大
ページ範囲:P.813 - P.822
文献購入ページに移動食道癌根治術には,種々検討が加えられており,近年その手術成績においても,めざましい向上を示している.しかし,頸部あるいは頸胸境界部にある食道癌に対する手術は,食道再建法の点に関し,今なお幾多の難点を有している.われわれは頸部食道癌根治術後の頸部食道欠損部に対しては1961年より中山式血管吻合器を使用し,動静脈再建による自家腸管遊離移植術を施行し,多数の食道再建成功例を収めているが,1965年11月には胸部上部食道癌根治手術に対して胸腔内自家腸管遊離移植を応用し,はじめて成功した.さて,食道再建術は19世紀後期より皮膚管成形術がまず行なわれ,次いで腸管の有茎挙上による方法,胃大彎側を管状に挙上する方法,いわゆるHeimlich法のごとく大彎側胃管逆挙上による胸壁前食道胃吻合術などがあるが,今日では,開胸にて病巣部を摘出,同時に開腹して胸壁前あるいは胸腔内において,食道胃吻合術を行なう方法が確立されている.中山は1960年より胸部上中部食道癌に対しては,主として三期分割にて胸壁前食道胃吻合術を施行し,手術死亡を激減せしめている.また1954年以後は60Coなどの術前短期濃縮照射を併用し遠隔成績の向上につとめている.さて,食道再建の目的で遊離腸管移植術の行なわれたのは,1926年Schamowが,犬において有茎小腸片を皮膚に包んで管状とし,皮膚遊離腸管弁として用いたのにはじまる.
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