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特集 血管の外科 研究と報告
肺動脈Banding—4例の経験
著者: 小助川克次1 猪俣和仁1 牛田昇1 豊泉稔1 外山香澄1 岸一夫1 中山耕作1
所属機関: 1聖隷浜松病院
ページ範囲:P.877 - P.881
文献購入ページに移動乳幼時期の心室中隔欠損症で,特に自覚症状がなく,心電図,レ線において変化の少ない例,すなわち小さな心室中隔欠損では経過を追つて症状を観察し,手術が必要となれば,安全な時期に行なうべきである.しかしながら,心室中隔欠損症で重症肺高血圧を合併した例では発育が遅延し,肺うつ血が著明で呼吸器感染を繰返し,心不全になりやすく,内科的治療を行なつても,症状が改善されない場合が多い.しかもその経過中突然死亡する可能性が大きい.もちろん,このような場合,一時的に心室中隔欠損を閉鎖することは理想的であるが,手術侵襲が大きく手術による死亡率が高い.Lillehei1)の報告では1歳以下で肺動脈圧60mmHg以上の心室中隔欠損閉鎖術では,40%の死亡率であり,その他,多くの人がこのような例の開心術の危険性を報じているが,いずれも死亡率は高いものである.このような場合,繰返す呼吸器感染を予防し,心不全の発生を防ぐ目的で,肺動脈血流を減少させる肺動脈Bandingを行なう.この手術は容易で,手術侵襲が少なく死亡率も少ない.われわれも重症肺高血圧を合併した心室中隔欠損症の乳幼児4例に肺動脈Bandingを行なつたのでここに報告する.
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