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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科22巻7号

1967年07月発行

雑誌目次

特集 救急患者の取扱い方

東京都における救急医療の現状

著者: 鳥羽和博 ,   小池昇

ページ範囲:P.912 - P.916

はじめに
 医療制度調査会答申および昭和39年4月の消防法改正をうけて救急医療対策の責任が厚生省に移つたので,都道府県の段階ではそれら衛生局(部)に行政上の責任が移されたことになる.また救急病院などを定める厚生省令の公布を機会として救急医療が大きく医師会活動の一環として包含され,救急患者発生の際は救急担当の有無にかかわらず,もよりのしかるべき病院・診療所において初療を加えることが原則となつた.救急医療を論ずる場合,以上の2原則を忘れてはならない.ややもすれば救急病院・診療所の取り扱うケースが救急医療であるという錯誤が先行して論議が行なわれる場合もみうけられるが,救急病院・診療所における取り扱い例は正しい意味の救急医療の限られた一部であることを銘記しなければいけない.現行の法の上では救急病院・診療所とは単に消防庁の救急隊が患者を搬送することを規定された病院・診療所にすぎない.もちろん救急病院・診療所がただ法の上の義務を果たせば良いというものではなく,医療施設の社会的使命という立場から,不時に発生するあらゆる傷病に備えて万全の態勢を整えているのが現状である.その根底にあるのは社会に対する医師の使命感である.
 国および地方公共団体が狭い救急医療の観念から出発して,いわゆる救急センターの設立さえ行なえば救急医療の義務を果たしたような考えにとらわれるならば,すこぶる片手落ちな態度であるといわなければならない.

頸椎・頸髄損傷の救急処置

著者: 平林洌 ,   宗近靖 ,   関宏

ページ範囲:P.917 - P.922

いとぐち
 統計によれば全脱臼・骨折の中の約10%を脊椎が占める.そのうちの1/5を頸椎が占め,さらにレ線像に現らわれない椎間板損傷の存在などを考えると,頸椎損傷はけつしてまれな傷害ではない.
 加うるに脊髄損傷の合併率が全脊髄では43%であるのに対し,頸髄ではその解剖学的特殊性から90%と圧倒的に高く,頸髄損傷の頻度は大きい.

四肢外傷の救急処置

著者: 鈴木勝己 ,   磯見明

ページ範囲:P.923 - P.927

はじめに
 運動器官をあつかう整形外科医にとつて,そこなわれた機能をいかに回復させるか,または,いかに最小限の障害にとどめうるかが最大の使命である.もとより,生命の安全に思いを馳せることは医師として当然のことである.しかし,この点に意外な落し穴があるように私たちは感じている.生死が問題となる時点では,どの患者に対しても,生命を救うために許されないことはなく,それは患者の意志や社会的背景のいかんによらず行使されるべきであろう.さて,生に対する不安が除かれた時,その他の処置は生命に別条ないからと思うことがないだろうか.整形外科医として患者のこれからの生活—それは救われた生命の場である—を考えれば,こうした心のゆるみを生じる落し穴について一考せざるをえない.
 四肢外傷の治療効果は,受診時における治療計画のたて方と,見通しのたて方いかんにかかつているといつても過言ではない.それは救急処置の限界と,その影響を認識することによつてできる.一般的にいつて,何もかもを一次的に治療しようとする傾向があるので,むしろ何回にも分けて系統的な治療をするという考え方に慣れる必要があることを強調したい.そして,このことにあたつて,患者の年齢・職業・希望などの社会的,経済的背景を考慮すべきであろう.同一の外傷でも,それらによつて異なつた方針を立てる場台も出てくるからである.時には,機能的に次善の治療法がより好ましいこともありうる.

四肢骨折の救急処置

著者: 本多純男

ページ範囲:P.929 - P.936

はじめに
 四肢骨折の救急処置は,処置する側の設備,状態によつてたいへん影響される.もちろん患者の状態によつて左右されることは当然のことだが,いくら高等な技術をもち,理想的な処置をしようとしても,機械などが不足であれば,なにもできないことすらある.であるから,その診療機関の設備(人員を含めて)と,患者の状態—合併症の有無,老人か子供かなど—とそれにあわせて,その骨折のより正確な診断とその予後の判断をし,治療の内容を決める.
 これは,骨折にかぎつたことではないが,そういう思考を比較的短時間のうちに行ない,治療に移るべきだと思う.比較的とあえていうのは,骨折そのものの治療は,寸刻を争うものはまれであるからで合併症のあるときはそのかぎりではない.

手の外傷の救急処置

著者: 荻原一輝 ,   大城力造

ページ範囲:P.937 - P.942

はじめに
 手の外傷は,日常きわめて多く接するにもかかわらず,受傷直後には,大学病院や大病院を訪れることは珍しく,このため特別な病院(例えば工場災害などを多く取りあつかう病院)を除いては,一般外科医や整形外科医といえども,その救急処置について十分な訓練をうける機会に恵まれているとはいえない.
 このために実際に手の外傷を取あつかうことの多い第一線の医師は,いわゆるminor surgeryとして,深い興味もなく,慢然と処置をしている例が多くないだろうか? いまだに,創をみれば無分別にマーキユロクロームを塗布してこれで消毒が足つたとし,術者や患者の手の十分な無菌的処置を行なわずに,無理矢理に一次縫合を行なつて壊死や感染をきたしたり,あるいは,腱の断裂に対してなんらの「手の外科」的な考慮を払うことなく,太い絹糸で縫合したり,骨折に対しても,たんに取りあつかいや手技上の便宜から,深い考慮もなくキルシュナー鋼線を関節をとおして刺入したような例は枚挙にいとまがない.

腎・尿管・膀胱・尿道損傷の救急処置

著者: 堀内誠三

ページ範囲:P.943 - P.948

はじめに
 腎・尿管・膀胱は腹膜後腔および骨盤内に位置する臓器であり,ふつうは外力にたいして十分庇護されているので,その損傷は比較的少ないものである.現在のように戦争がない時代は大部分が鈍的な外力によるものであるが,最近の交通の発達と重工業の繁栄にともなつて,交通事故や災害事故が増加している.これは一般外傷が近時いちじるしく多くなつてきたためである.わが国の泌尿器科外傷は,多くの報告を総合すると,なお工場の災害がいちばん多く,ついで交通外傷である30).しかし欧米の統計では交通事故が最高をしめている.これらの事実は社会環境の相違によるものであろう.
 著者はここに救急処置を理解するに必要なていどの統計,原因,病理をのべ,主として症状と診断と治療(特に救急処置)に重点をおいてのべる.しかし一般に本邦泌尿器科の医師は尿路外傷の経験例が乏しく,著者も小数例しか経験していないので,満足できるものが書けないが,読者諸賢のなんらかの参考になればさいわいと思つている.

熱傷の救急処置

著者: 塩谷信幸

ページ範囲:P.949 - P.956

はじめに
 熱傷の治療法は現在これから発展していく学問の分野であり,どの一つの問題を取りあげても全く相反する幾つかの意見に出あうことが珍らしくない.これは熱傷の基礎的な研究,臨床的な研究がいままであるていど等閑にされていたということもある.また現在諸外国において熱傷をあつかうのは,形成外科とされているが,この形成外科自身が非常に新しい専門分野であり,その発展途上にあるためであるともいえる.このようにいろいろ解明されなければならない問題をもつているということは,研究するものにとつては,非常に面白い分野となるが,第一線で熱傷の治療にあたられる方々は,実際の治療にあたつて,どのような治療方法をえらべばよいかしばしば迷われるのではないかと思われる.そこで今回は最新の学説,ないしは問題点はさておいて火傷の患者が救急にかつぎ込まれた場合,どのように治療するのが一番実際的でしかも安全な線であるかという点について述べてみたい.すなわち現在認められている火傷の治療の原則に基づいて,日本の医療体制のなかで可能な実用的な方法をえらんでいきたいと思う.
 著者は最近8年間ニーユーヨーク州のオルバニー大学において,一般外科と形成外科を研修する機会を与えられた.

肝不全の救急処置

著者: 上野幸久

ページ範囲:P.958 - P.961

はじめに
 外科領域において肝不全をきたすのはどんな場合が考えられるかというと,第1には手術前にすでにある程度の肝臓の器質的障害(肝炎,肝硬変,胆管肝炎)などが存在していて,手術という侵襲によつてそれが悪化し,重篤な経過をたどつて肝不全におちいつた場合である.第2には手術のために輸血し,それによつて血清肝炎に罹患し,それが劇症化した場合である.第3には手術時の麻酔に使用した薬剤,とくにハローセンなど,あるいは原病の治療のために投与した諸種薬剤によつて,時としていちじるしい肝障害をきたすことがある.以上は肝障害が高度であるため肝機能がいちじるしく低下した状態で,本来の意味での肝不全である.第4には以上と多少おもむきを異にする肝脳症候群portal systemic encephalcpathyがある.これは意識障害をくりかえす猪瀬型肝硬変にみられるが,外科と関係が深いのは門脈圧亢進症に対する門脈下大静脈吻合術後におこるEck症候群である.この際は肝実質の障害そのものは前3者ほどいちじるしくはないが,意識障害など肝不全に特有な症状を呈するものである.このように肝不全と肝性昏睡とは必ずしも同義的ではないが,両者の対策はほぼ同一と考えて差支えない.本稿においては,外科医諸氏が対処しなければならないこれらいろいろの原因による肝不全ないし肝性昏睡に対し,われわれがとつている救急処置を述べて参考に供したい.

救急外科の麻酔

著者: 北原哲夫

ページ範囲:P.962 - P.966

はじめに
 救急外科とひと口にいつても,その内容は多種多様で,たとえば急性虫垂炎のごときは,通常患者の体力が十分で,その手術にさいしての麻酔も格別とりたてていうほどのものはないから,ここでは論外とする.しかし一般に救急外科患者は,たとえば内臓破裂とか,胃・十二指腸潰瘍穿孔,あるいは絞扼性腸閉塞など,状態の重篤な揚合が多い.しかも術前準備がまつたく不満足で,胃内容も空虚でないことがしばしばあり,これらは麻酔施行上の大きな制約となる.一方診断も必ずしも的確でなく,実施される手術の種類や時間も予測が困難である.手術や麻酔に携わる人員,設備も不十分な環境で,やむをえず行なわれる場合が少なくない.
 しかし救急外科といつても,真に一刻を争うものはむしろ少なく,術前1〜2時間の猶予があるのがふつうだから,この期間を最大限に活用して,患者の体力評価に役立つデーターを少しでも集め,これに対処する術前準備をなすべきである.

腎不全と水分・電解質アンバランスの処置

著者: 前川正信 ,   松永武三 ,   河西宏信 ,   甲野三郎 ,   結城清之 ,   辻田正昭 ,   井上堯司 ,   平林国男 ,   大道彰 ,   早原信行 ,   中西純造

ページ範囲:P.967 - P.971

はじめに
 腎不全の治療を論ずるには,ここ数年を境として周囲の条件が格段に改善されていることを念頭におかなければならない.すなわち,1)各種電解質溶液の入手が容易になつた,2)腹膜灌流法のための灌流setおよび灌流液の商業製品が出そろつた,3)性能のよい国産の人工腎血液透析装置を利用できるようになつた.等々により,今や慢性腎不全の長期積極的管理すら可能となろうとしている.したがつて,腎不全管理について正確な知識をもち,血液透析および腹膜灌流法を積極的にタイミングよく応用すれば,急性腎不全による死亡を大幅に減少せしめうるであろうし,さらに慢性腎不全に対しても確実に延命効果を期待しえるであろう.
 そこで自験例を中心に,腎不全に対する検査の進め方と管理の大要を記載し,さらに主としてdialysis (HaemodialysisおよびPeritoneal dialysis)の効果を施行症例について検討してみよう.

外科領域における代謝異常の処置

著者: 饗場庄一

ページ範囲:P.973 - P.978

はじめに
 生命現象のすべてがすなわち代謝(新陳代謝)ともいえる.蛋白質,脂質,糖質,無機塩類,水,ビタミンなど栄養素の摂取,吸収,利用,排泄などの全過程が適当にバランスされていることが正常健康状態である.これら栄養素の出納には多数の酵素系,内分泌系,神経系が複雑に関与して呼吸,循環,吸収,排泄などの働きとして円滑に回転されている.代謝の種類は目的によつて多数に分けられるが,綜合すれば分解と合成,すなわち異化作用(catabolism)と同化作用(anabolism)とが代謝のすべてということになる.生命のしくみには相当の代償作用が許されて相互に融通が可能であるが,一度破掟を生じた場合には,代謝異常として症状的にも表現される.すべての疾患には多かれ少なかれ全身的・局所的に代謝異常を伴い,代謝異常そのものが疾患の本態である場合もある.
 外科領域では手術侵襲それ自体が大きな代謝異常を招来するから,いちじるしい代謝異常を克服して外科的治療を行なわねばならないことが日常である.本稿では外科領域で経験される患者を中心に考えてみたい.

急性消化管出血の対策

著者: 石上浩一 ,   古家正年

ページ範囲:P.979 - P.988

はじめに
 急性消化管出血には,胃十二指腸潰瘍(60〜90%),胃癌(2〜22%),胃炎(2〜23%),食道静脈瘤(4〜14%),食道裂口ヘルニア(欧米2%)などに基づく上部消化管出血が多く,下部消化管出血の約8倍以上の頻度を示している.
 急性消化管出血,とくに上部消化管出血は非常に危険な状態であり,早期の正確な診断と治療が必要である.

術後合併症の救急処置—とくに,無尿・鼓腸・肺炎・静脈血栓について

著者: 安冨徹

ページ範囲:P.989 - P.994

はじめに
 術後合併症にはつねづね悩まされる.主目的の手術の効果が減殺されるどころか,時には生命すら危険におとしいれる.十分に警戒していても突発的に襲来するものも少なくない.ここにとりあげられたものは,急性心搏停止のように分秒をあらそうというほどのものではないが,やはり救急的な処置を必要とする.またその対策がおくれると,死に到らないまでも,難治の後遺症をのこすことが少なくない.以下著者の失敗経験を反省し,標準的な処置を文献によつて復習してみよう.

監察医の立場からみた救急患者の処置

著者: 吉村三郎 ,   並木宏

ページ範囲:P.995 - P.1001

はじめに
 戦後,わが国は基本的人権の尊重,マスコミニケーションの発達,経済力の増強,あるいは社会機構の複雑化などにより人々の生活環境にも変化をきたし,あまつさえ近年は都市およびその周辺における交通災害の激増や,労災事故の多発などによつて救急患者は増大し,さらに医療に伴う各種の紛争もまた増加の傾向を示している.いつぽう,数年前,某教授の在職中における誤診率が何%であつたかなどが巷間に報道され,これが契機となつて,それよりはるか以前からあつた医家の謙虚な反省がさらに求められるようになつた.
 医療に伴う紛争については近頃患者側の医学知識の普及とともに,その権利の主張も強化され,少しでも医師に過失があるとその責任を問い,損害賠償を要求しようとする最近のわが国の世相を反映し,それにまき込まれた医家は,たとえその事故が現代医学では不可抗力によると考えられる場合であつても,紛争によつて受ける心理的,経済的ないしは時間的な損失影響ははかりしれないものがある.しかし医師としては極力,紛争の因である医療事故の原因その他についての解明につとめねばならないことは当然である.

医学会総会印象記

多方面より浮彫りされた痛みの現象—脳外科領域

著者: 東徹

ページ範囲:P.1012 - P.1013

 4月1日より3日間名古屋市で開催された第17回日本医学会総会は,故勝沼精蔵会頭の提唱で"分化と総合"がテーマとして取り上げられた,そのためシンポジウムでは多くの基礎と臨床家が集まつて,それぞれの面から1つの問題について討議したことが大きな特色であつた,

去りつつある欧米追従時代—胸部外科領域

著者: 上野明

ページ範囲:P.1014 - P.1015

Ⅰ.外科学会総会から
 今回は医学会総会の序幕とでもいうか,30,31日両日に行なわれ,総会が多分に普遍的な教育的なテーマで進行したのにたいし,分科会だけあつてよりこまかい演題について発表討論が行なわれた.それでも一教室一題という一般演題の制限もあつたためか.一部の演題では内容の焦点がつかみ難かつたり,あるいは経験例の分析のみにとどまつた演題もみられたが,全般的な印象からすれば本会もようやく戦後の欧米追従時代が去りつつあるという実感がした.
 会場自体は各所に分散しているのが欠点といえば欠点であつたが,他分科会とくらべてその運営は筆者の聞いた範囲ではきわめて評判がよかつた.この点,橋本外科諸先生の労を多としたい.

地味な努力の積み重ねを—小児外科領域

著者: 植田隆

ページ範囲:P.1016 - P.1017

 前回の大阪における医学会総会では,小児外科のシンポジウムとして「先天性消化管奇型の外科」がとりあげられ,なお,この領域の第一人者たるSwenson教授の招待講演が持たれたが,今回は若林教授の総会講演「小児外科」一つにしぼられた.
 総会講演では,聴衆の多くがその領域の専門家とは限らず,むしろ一般的知識をえて視野を広めるために来会される方が多いから,講演内容には解説的要素が含まれていなければならない.

人工腎臓センターの設立を—人工臓器と臓器移植

著者: 稲生綱政

ページ範囲:P.1018 - P.1019

 今回の医学会総会における人工臓器と臓器移植について外科的な立場から概観してみよう.

リハビリテーション医療機構の改善を—整形外科領域

著者: 桜井修

ページ範囲:P.1020 - P.1021

 今回の医学総会のテーマは「分化と総合」であったという.総会とともにこれに先立ち,第25分科会として開かれた第40回整形外科学会総会の膨大な数の研究発表を聞きながら,私自身も学会の一員としてこのテーマの意義を考えていたものである.

外国文献

congenital dysphagocytosis,他

ページ範囲:P.1022 - P.1025

 Carlson(Pediat,35:405,1965)が米国で皮膚の進行性敗血性肉芽腫症というまれな疾患を記載し,Holmes(Lancet 1:1225,1966)は英国で小児にfatal granulo-matous diseaseという,ほぼ同一の疾患を報告している.Holmes(Nature 210:1131,1966)によれば,その本態は多形核白血球(p)の貧食作用の異常にもとづくという.MacFarlane(Lancet 1:408,1967)は5.5歳男児で同様疾患を見出した,患児は生後5週で鼠径から項,頭部へかけて膿疱を生じ,10週の時,高熱,巨脾,肝腫,頸腺腫大で入院,皮膚からStaph.aurを培養しえた(血液は陰性).白血球ならんづくp増多,γ-g1正常域.退院後もかかる頸・項・頭部の膿癒,頸腺膿瘍が再発をくりかえし,さらに腋窩,鼠径その他に皮膚炎,リンパ腺炎を招いている.その皮膚,リンパ腺は非特異性の急性,悪急性,肉芽腫性炎.erythromycinとnovobi-ocinが最も奏効した.Pの貧食能はStaph aur.に対して正常人より著しく低くかつ緩慢.Aerobact.aerog.にも,Herpes simplex virus.vaccinia virusに対しても同じである.患児の母のPも同じ傾向があつた.

手術手技

気管切開の実際

著者: 新井達太 ,   小柳仁

ページ範囲:P.1027 - P.1031

 救急患者が来院した場合に行なうべきことはいくつかあるが,そのうちで静脈および気道の確保はもつとも重要なものである.静脈の確保は輸血,輸液,昇圧剤などの注射を適時行なうことができる.気道の確保は,十分なガス交換を行なうことができ,アノキシアを防止することができる.
 緊急を要する患者の気道確保には,閉鎖循環式麻酔器を用いてマスクを用いる.次いで気管チューブを口より挿管し,気道を確保すると共に麻酔器により調節呼吸を行なう.しかしこの方法は意識が出た場合には挿管しておくことができにくく,また気管の粘膜の壊死など起こすことがあるので長時間挿管しておくことはできない.

講座

頭部外傷後遺症の治療—〈その1〉慢性硬膜下血腫の場合

著者: 景山直樹 ,   中島正二 ,   白井鎮夫 ,   田中衛

ページ範囲:P.1032 - P.1038

はじめに
 頭部外傷後遺症といつても非常に範囲が広く,かつ定義のあいまいなものである.しかし外傷後慢性期に入るまで持続している症状とか,慢性期に入つてはじめて現われる症状を後遺症とすると,これらに入りうる多くのものの中で,とくにしばしば遭遇するものが3つある.すなわち,1)慢性硬膜下血腫,2)頸部症候群ならびに頸腕症候群(むちうち損傷を含む),3)脳および脳神経挫傷に由来する後遺症(外傷性癲癇を含む)である.以下3回にわたり,これらにつき,特に治療に関して記述してみたい.

症例

猫ひつかき病の1例

著者: 奥村堯 ,   稲川勝義

ページ範囲:P.1039 - P.1041

はじめに
 左肘関節リンパ腺腫脹を訴え,リンバ腺炎と診断,対症療法を行なうも好転せず,病理組織検査で猫ひつかき病と呼ばれる珍らしい症例を経験したのでここに報告する.

熊による咬傷4例

著者: 八重樫定夫

ページ範囲:P.1043 - P.1045

はじめに
 熊による咬傷の報告は,非常に少なくかつ咬傷の軽重,治療指針などに関する記載をみない.著者は最近4例の熊咬傷を経験したので咬創の特徴と熊の襲撃本能,なかんずく人間を咬んだ場合,凶器として作用する熊の犬歯について述べてみたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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