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文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻7号

1967年07月発行

特集 救急患者の取扱い方

肝不全の救急処置

著者: 上野幸久12

所属機関: 1自衛隊中央病院内科 2東大

ページ範囲:P.958 - P.961

文献概要

はじめに
 外科領域において肝不全をきたすのはどんな場合が考えられるかというと,第1には手術前にすでにある程度の肝臓の器質的障害(肝炎,肝硬変,胆管肝炎)などが存在していて,手術という侵襲によつてそれが悪化し,重篤な経過をたどつて肝不全におちいつた場合である.第2には手術のために輸血し,それによつて血清肝炎に罹患し,それが劇症化した場合である.第3には手術時の麻酔に使用した薬剤,とくにハローセンなど,あるいは原病の治療のために投与した諸種薬剤によつて,時としていちじるしい肝障害をきたすことがある.以上は肝障害が高度であるため肝機能がいちじるしく低下した状態で,本来の意味での肝不全である.第4には以上と多少おもむきを異にする肝脳症候群portal systemic encephalcpathyがある.これは意識障害をくりかえす猪瀬型肝硬変にみられるが,外科と関係が深いのは門脈圧亢進症に対する門脈下大静脈吻合術後におこるEck症候群である.この際は肝実質の障害そのものは前3者ほどいちじるしくはないが,意識障害など肝不全に特有な症状を呈するものである.このように肝不全と肝性昏睡とは必ずしも同義的ではないが,両者の対策はほぼ同一と考えて差支えない.本稿においては,外科医諸氏が対処しなければならないこれらいろいろの原因による肝不全ないし肝性昏睡に対し,われわれがとつている救急処置を述べて参考に供したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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