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論説
ガンマ・グロブリンによる癌治療
著者: 田中早苗1 折田薫三1 武田淳志1
所属機関: 1岡山大学医学部第1外科
ページ範囲:P.1123 - P.1131
文献購入ページに移動近来,内科的診断法の飛躍的進歩に伴い,癌の早期発見,早期治療が行なわれるようになつて,癌の治療面での向上には著しいものがある.にもかかわらず癌征服への道はいまだに遠いという他ない.このような癌治療の行詰りから,再び注目されてきたのが癌の免疫学的療法である.第25回日本癌学会総会において,癌の免疫学的療法がシンポジウムにとりあげられたのも,このような情勢を浮彫りにしている.
癌の免疫療法が確実に行なわれるためには,まず第一に自然発生癌である人癌に免疫—抗原抗体反応が存在することが前提条件となる.癌を移植免疫の立場でみる時,自然発生癌が宿主に対して同種移植であるのか,自己移植であるのか,換言すれば癌が宿主によつて非自己と認められて抗原性を発揮しているか否かという問題に焦点がしぼられる.癌の抗原性に関しては,実に多くの研究1)がみられるが,自然発生癌にもつとも近いMethyl-cholanthrene誘発癌で,その抗原性を証明したKlein2)の業績以来,自然発生癌にも抗原性が存在する可能性があると考えられてきた.昨年の癌学会で発表したように3),われわれも組織培養法を用いて誘発癌の局所リンパ節細胞が癌に対して抵抗性を有する(免疫現象)ことを報告し,自然発生癌での同様な現象の証明に一歩近ずいている.
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