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文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻8号

1967年08月発行

講座

頭部外傷後遺症の治療—〈その2〉特にcervical syndromeを中心に

著者: 景山直樹1 田中衛1 池田公行1 頼国壌1

所属機関: 1関西医科大学脳神経外科

ページ範囲:P.1171 - P.1178

文献概要

 頭部外傷急性期の症状が一応軽快ないし消失したあとで,頭痛,眩暈,悪心,嘔吐,視力障害(主に目のかすみ),肩こり,四肢のシビレ感,脱力感,上肢の知覚異常,運動麻痺などの不快な症状が長期間持続しているような症例はきわめて多い.これらの症状は頭部外傷の重症度とはあまり関係なく,かえつて1,2型の比較的軽い症例に多い,最近では,これらの症状は,脳自体の変化によつて起こるものではなく,大部分が頭部を打つたさいに,間接的外力を受けた頸部の損傷に由来した症状,いわゆる"cervical syndrome"であることが明らかになつてきている.そして同様の症状は,自動車の追突事故のさいに定型的な形をとつてあらわれ,一般にはそれがwhiplash injury(むちうち損傷)と呼ばれている.そのさいには頭が他の物体にあたつてはいないが,頸部はまず急激に過伸展状態となり,さらにそれについで反動的に過屈曲位をとるので,ちようどむちを打つ形となるために,この名前が用いられているのである.
 頭部を打つた時に,頸部の急激な運動が起こり,cervical syndromeが起こる.むちうち損傷のさいに,頸部の急激な運動で類似の症状をあらわし,頭はほかの物体にあたつていないので,脳の損傷がまつたくないように思われがちであるが,そのさいにも急激な頭の振れにより,脳実質は頭蓋内板へうちつけられるわけであるから,この両者の間に本質的な差はない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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