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文献詳細

雑誌文献

臨床外科22巻9号

1967年09月発行

特集 甲状腺疾患の問題点

甲状腺癌の疫学的問題

著者: 釘本完1 丸地信弘1

所属機関: 1信州大学医学部公衆衛生学教室

ページ範囲:P.1255 - P.1260

文献概要

はじめに
 従来甲状腺腫に関する疫学的研究は,地方病性甲状腺腫の存在の有無についてのものが中心となつていて,これに関する報告は少なくない.もつともこれまでの成績を通覧すると,その存在を肯定する報告も相当みられるが,内容を詳細に検討すると,わが国の甲状腺腫は頻度的にも諸外国の多発地帯に比較してそれほど多いものではなく,またその腫大程度も軽度のものがほとんどで,したがつてわが国の甲状腺腫の発生を諸外国のそれと同列に評価することは困難のように思われる.このため最近では,むしろわが国での地方病性甲状腺腫の存在は疑問視する傾向が支配的になつてきている.
 われわれの教室では,ここ数年来一般住民を対象としたいわゆる循環器成人病の集団管理法について検討を行なうため,長野県下地区で調査,検診活動を続けてきているが,たまたまその活動の過程で住民の中にかなりの頻度で甲状腺腫が認められ,かつ要医療と考えられ手術を行なつた住民の中から,数例の甲状腺癌が発見されたため,以来甲状腺腫の実態に関する検討を行なつてきている.これまでの成績によると,もちろん地方病性甲状腺腫の存在は考えられないが,当初想像されていたよりも高い頻度で甲状腺癌が発見されてきており,したがつて今後甲状腺腫の疫学的研究は従来のような地方病性甲状腺腫にのみとらわれることなく,悪性甲状腺腫の疫学という新らたな観点からこれを究明する必要があろうと思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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