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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科23巻10号

1968年09月発行

雑誌目次

特集 肛門外科

診療に必要な解剖の知識

著者: 鬼束惇哉 ,   檜垣潜

ページ範囲:P.1427 - P.1432

はじめに
 肛門部は,消化管の上端とは解剖的に,1)皮膚と粘膜との間に特別な移行皮が介在し,2)複雑な括約機構を持ち,3)知覚神経が豊富に分布していることなど似たことが多いが,機能的には入ると出るとで全く異質な部分であって,やはり特異性が明らかで,例えば壁に若干の壁龕があり,歯は無く,血管は3系統で,静脈叢が発達していることなどいろいろちがう.かかる肛門部の解剖は一般になおざりにされているけれども,この知識は口唇部のそれに比べると臨床的に格段に重要なもので,例えば口唇付近の顔面筋の解剖知識が特別な医家だけの問題であつても,肛門括約筋や恥骨直腸筋のそれは肛門指診がroutine検査であるかぎりは,はるかに多くの医家に大切であり,肛門外科においてはもちろん不可欠な基礎である.この外科的解剖知識は,奇形,外傷,炎症,腫瘍など対象群によつて重点のありかがちがう.また微細構造については学者の見解がまだ一致していぬところがある.ここではなるべく片寄らずに全般的な概略を述べることが,私どもの役目かと思う.

痔核・脱肛の治療—私の治療法

著者: 小平正

ページ範囲:P.1433 - P.1437

はじめに
 25年余の長い間,根治療法ならこれに限るとして,大部分の症例にホワイトヘッド法を行なつてきた私が,10年程前から段々にそして近頃ではほとんど全症例に結紮切除を行なうようになつたのには,幾つかの理由がある.
 結紮切除といわれる手術法も,これを行なうひとによつてかなり内容的に相違があるように思う.手術の術式といものは,細かい点になると,各自の考え方と習慣で,それぞれかなり異なつたところが見られる.自分のやり方を最上として他人に押しつけがまじいことをいう筋合いのものではない.

肛門直腸周囲膿瘍,痔瘻の手術はどうするか

著者: 土屋周二

ページ範囲:P.1439 - P.1445

はじめに
 痔瘻は太古から人類をなやましたものとみえ,古代バビロニアやエジプトの古文書にも記載されているという.Hippocrates(B.C.450年)の書(liber de fistulis)にはすでにその詳しい治療法がのべられている.その後さまざまの治療法が多数の人々によつて提唱され今日に及んだ.しかしなおこの種疾患の難治性が広く一般に信ぜられ、また不十分な治療による再発や増悪が現在でも時にみられる.この疾患の本態に関する考察と臨床例の観察から得た知識をもとに合理的と考えている治療方針につき以下のべてみたい.

裂肛の治療はどうするか

著者: 渥美和郎 ,   小野田肇

ページ範囲:P.1447 - P.1454

はじめに
 裂肛Fissura ani, Anal fissure, Fissure-in-anoと肛門潰瘍Anal ulcerの区別を,日常の診療で,臨床家は特に厳密に分けて云々することは少ない.前者は肛門上皮Anoderm の単純な"裂け"Crackを指し,後者はそれの慢性化した陳旧性の裂肛であり,いろいろの付随した変化を伴つたものと解釈してよい.したがつて,急性裂肛と慢性裂肛に分類している者もあるし35),あるいは簡単に,裂肛は肛門における良性の潰瘍性病変をつくるものと定義している者もある8
 本症は排便時の激痛と,括約筋痙攣を伴うのが特徴で,血液が滴下することもあるが,多量ではない.この疼痛は甚だ執拗で,長時間続くので仕事に支障をきたすこと非常に大であり,患者自身も排便に恐怖感を抱く程である.そして,排便を我慢し,便秘に陥り,硬便を出して再び悪化させ,さらに,炎症も進行するといつた悪循環をみるのである.

肛門疾患の保存療法とその限界

著者: 三輪徳定

ページ範囲:P.1455 - P.1458

はじめに
 肛門疾患には,痔核,肛門裂創,肛門周囲炎,痔瘻,肛門掻痒症等があるが,これらの内,痔核が代表的に多い疾患であるので,保存的療法についても,痔核を対象として記載することにした.男子においても,また女子においても同様であるが,大体2O歳ないし30歳位で大多数の者が直腸肛門部に多少とも痔核の変化をきたす.しかし解剖的に変化があつても,初期には自覚的症状を欠く事が多い.私はこのような痔核を無自覚性痔核と称している.このような無自覚性痔核を有しておる者が,不摂生その他種々の原因に依つて無自覚性痔核に刺激が加わつて初めて直腸肛門部に疼痛,あるいは出血,腫脹,脱肛等が自覚され,医師なり薬局なりに相談に行くという症例が多い.また女子の場合には妊娠,出産等に際し直腸肛門部の変化に気付く事が多いように思う.
 活動性の痔核の際には種々の症状と病形を呈して来るが,大多数の症例においては,安静と全身および局所の対症的療法を行なえば,1,2週間前後において自覚的症状の大半は軽快,あるいは治癒して,再び無自覚性痔核の状態に復帰する事が多い.現在多くの医師は,初診時の所見により,直ちに観血的療法を決定するが,私は初診より1,2週間保存的療法を行ない,経過を観察し,観血的療法の適応を決定すべきであると思う.

各種麻酔法の得失と肛門手術体位

著者: 隅越幸男

ページ範囲:P.1460 - P.1464

Ⅰ.各種麻酔法の得失
 肛門手術にさいしては,いろいろの麻酔法があるが,どういう方法で行なうかということは患者の全身状態も考えて,その手術が安全に,充分に行なわれるような方法をとることが大切である.次に順にその方法をのべてみよう.

術後合併症と術後管理

著者: 荒川広太郎

ページ範囲:P.1465 - P.1469

はじめに
 肛門外科に限らず疾患の治療には軽重の差こそあれ種々の合併症が起こり得る.これに対して個々の病状に応じた適切な術後管理が必要であることは当然である.
 肛門疾患には現在多種多様の治療法が行なわれ,術後の経過もさまざまであるが,ここでは非観血的療法は別として外科的療法に伴う合併症についてのみ論ずる.しかし,それぞれの合併症の発生率を統計的に正確に調べ対策を講ずることは,不可能なことである.したがつて私はこれらの数字を書き並べるよりも,むしろ合併症の成因や経過を考えながらそれに対処する心構えを経験を通して述べたいと思う.

グラフ

人工肺臓

著者: 川島康生 ,   上田武

ページ範囲:P.1411 - P.1416

人工肺は十数年来開心手術を行なうための手段として,体外循環中の肺機能を代行せしめんとする外科医の手によつて急速な発展を遂げ,臨床使用の拡大に伴つて,その換気特性も次第に解明されて,機能と構造の両面から改良が積重ねられ,昨今では幾種もの中から陶汰されたものが広く用いられ,既に規格化された製品が医療器機として市販されるに至つている.そして又,心臓外科のみならず,肺臓外科,脳外科領域においても利用されるようになつている.

外科の焦点

外傷のIntensive therapy

著者: 杉本侃 ,   桂田菊嗣 ,   太田宗夫 ,   田中範明 ,   北脇哲男 ,   浜中雄二 ,   美馬昂

ページ範囲:P.1417 - P.1426

はじめに
 外傷患者は,局所の変化のほか,呼吸磯能,循環動態,代謝等全身的に大きな変化をうけている.局所の治療は,もとより重要であるがそこに目をうばわれている間に患者の全身状態は急速に変化してゆく.しかもこれら全身状態の変化は,頭部外傷,胸部外傷,四肢の外傷等部位によつて特徴があり,はこびこまれた時,何をまず行なうか若干の相違がある.わたくしどもは,昭和42年8月特殊救急部開設以来,重度外傷患者を対象として収容し治療にあたつてきたので,これらの単独重症例のほか,多発性損傷も多くあり,常に十分の検査を行なつて全身状態を把握する必要があつた.現在の医療は,各科専門にわたり縦割り型で横の連絡に乏しいため,わたくしどもは重度外傷についてはこの方式をあらため,患者を中心として必要な専門家が集つて治療にあたり,そのための検査機械,治療機械も1カ所に集中している.看護にあたるナースも特別に訓練しこれにあてている.このように局所的な治療のみならず全身的な管理に重点をおくのがわたくしどもの重度外傷にたいするIntensive therapyであり,以下記載するデーターは,その中からできあがつたものである.

論説

腎血管性高血圧症—外科的治療の成績と問題点

著者: 稲田潔 ,   勝村達喜 ,   平井淳一 ,   九冨勝美 ,   林繁樹

ページ範囲:P.1475 - P.1484

はじめに
 腎血管性高血圧症は高血圧症の一部をしめるのみであるが,外科的治療により根治しうる点で臨床的に重要であり,最近選択的腎動脈造影術あるいは放射性物質によるレノグラムなど,診断法の発展,普及によりようやく血管外科医のみならず一般臨床家の関心をよぶようになつた.すでに欧米では1000例以上の手術例が報告されているが,本邦ではまだ多数例についての報告は皆無である.著者ら1)はすでに数回にわたり本症について報告したが,その後経験した興味ある症例とともに,少数例ではあるが術後の遠隔成績を報告し,本症の外科的治療上問題となる点について述べ一般の参考に供したい.

消化性潰瘍244例についての術後長期の遠隔検査成績

著者: 白鳥常男 ,   関根毅 ,   塚本長 ,   菅原俠治 ,   黒田俊 ,   岡林敏彦 ,   斉藤禎量 ,   横山成樹 ,   伊藤昭治

ページ範囲:P.1485 - P.1493

はじめに
 今日,外科学の進歩と相俟つて胃切除術は安全に,かつ広く普遍的に行なわれている.しかしながら,胃切除後に種々の愁訴を残すものも少なくなく,例えばダンピング症候群,貧血,過酸および術後の潰瘍の再発などが,いろいろの角度から検討されてきている.
 さきに,われわれは昭和16年1月から40年12月までの25年間に教室で手術した消化性潰瘍1210例のうち469例についてアンケートによる術後遠隔成績を報告1)した.その後,さらにこれらの症例について直接来院を求めたところ,244例について臨床検査を施行することができた.今回はこれら術後長期例の遠隔検査成績を中心に胃切除後の後遺症の実態について若干の考察を加えて報告する.

結腸癌の臨床統計観察

著者: 宮崎五郎

ページ範囲:P.1495 - P.1499

はじめに
 わが国の全国死亡統計が示すところによると,癌による死亡は昭和28年以来第2位にのし上り,且つ死亡率そのものも逐年増加を示している.消化器癌は癌死の中で圧倒的地位を占め,男性においてこの点は特に顕著である.消化器癌中胃癌によるものは約70%を占め,早期診断,早期治療の原則を実施すべく努力が傾注されている現状である.飜つて小腸および大腸(直腸を除く)の癌による死亡は全消化器癌死亡の2.5%(男)−4.8%(女)に過ぎない.私共の取扱つた結腸癌の例数も多くないが,統計観察を試みたのでそれに考察を加えて大方の御叱正を仰ぎたい.

トピックス

臨床研修病院とカリキュラム発表さる

ページ範囲:P.1501 - P.1501

 さる7月11日,医師試験研修審議会臨床研修部会(部会長,順天堂大学教授,懸田克躬氏)は,園田厚相に対し,臨床研修に関する意見書を提出した.
 厚生省は,この意見書をもとに同日午後医師法改正に基づく2カ年間の臨床研修のための教育病院126施設(104頁参照NEWS欄)と,教育病院における臨床研修運用方針ならびに診療科の臨床研修計画の参考資料を発表した.これによりインターン制度廃止後の医学部卒業後における2年間の臨床研修のうち,大学付属病院以外の教育病院で行なわれる臨床研修は,今後この運用方針とカリキュラムを参考に各教育病院で決定運営されることになつた.

患者と私

病気だけでなく病人を治したい

著者: 石田一夫

ページ範囲:P.1502 - P.1503

 病気を持つている人
 病気の種類の多彩性については今さら言うまでもないことであるが,それに悩む人自身にも年齢,性,家庭,職業,社会生活,知性,経済状況など複雑多岐な条件がそなわつているのである.したがつて,たくさんの患者を診療してゆく医師の努力も大変なものである.とくに,慢性疾患患者となると,病気だけでなく人を治す努力が大きく加わつてくるので,医師たる者の苦労もまた格別と思われる.

学会印象記 第1回 日本消化器外科学会を聞いて

多数の胃手術症例の発表

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.1504 - P.1505

 胸部外科学会・脳外科学会・小児外科学会が分れ出た今日やや遅きに失した観があるが,外科学会の最も中心的存在と目される消化器外科が分れ出たことは誠に意義深いことである.
 日本外科学会が年1回のみであるにかかわらず,その会長にふさわしい教授が多数おられるが,その多くが消化器外科を主としておられる.したがつて消化器外科学会の設立は誠に当をえたもので,創設のきつかけを作つた中山恒明教授その他の世話人の教授方の功績は高く評価される.このように消化器外科は多士済々で今後一層の活躍が期待される.ことに本会の会則によれば,総会の他に大会を持つことができることになつていて,早速明春1月末頃には東京医科歯科大学外科川島健吉教授の会長で第1回の大会が持たれることに決つた.なお第2回総会は明年,徳島市において徳島大学教授田北周平会長の下に開催されることに決つた.

特に胃の良性疾患について

著者: 広田和俊

ページ範囲:P.1505 - P.1506

 近年,胃広範囲切除術の遠隔患者数の増加につれて,いわゆる胃切除術後症候群について論じられることが多くなつた.栄養障害に関しても,各種の報告に接する.すなわち,鉄欠乏性貧血や巨大赤芽球性貧血など貧血に関するもの,鉄,カルシウム,ビタミンA, D, B12,B1,B2,蛋白質,脂肪などの吸収障害,それに随伴する低蛋白血症,各種ビタミン欠乏症,骨軟化症,低必須アミノ酸血症,Creatorrhoea, Steatorrhoea等の症状,体重の減少,体力の減退,社会復帰の問題,ダンピングなどである.今回もこの面からの検討が多く提出されている.
 まずダンピング症候群の解析では,セロトニン,ブラディキニン,カテコールアミン等の臨床測定や実験成績が呈出され(川上氏ら三重大,福井氏ら長大,田頭氏ら神大),いずれも説得力のあるものであつたが,これら物質の血中出現の機序,或いは相互因果関係などについては,今後の研究に俟たねばならない(林四郎教授).田頭氏らは,トラジロールの静注により,高張糖液経口投与時のキニン変動を抑制し,症状を軽減し得ている.手術術式によるダンピング発生の予防としては,友田式胃嚢形成術(原口氏ら都志見病院)や舌状吻合術B-I法B-II法(福原氏ら大脇病院)が報告されてた.ことに前者は,詳細な内視鏡的追求により食物貯留による粘膜変化の可能性を否定している.

雑感

肛門診療へ一言

著者: 三枝純郎

ページ範囲:P.1507 - P.1509

 小生過日来,体の調子が良くなく,いろいろ調べたところ血液培養にて溶連菌が検出され,関節も痛むし,当然主治医に執筆禁止を申し渡され,何もかも主治医のいうとおりとなつてGood Patientとして,日を送つているが,私はProctologistである.私からProctologyをとり去つたら何が残ろう.直腸肛門外科に関する40余の論文,二冊の著書,一冊の翻訳,またこれ迄に手掛けた数々の症例,手術,これが私の資産のすべてであり,これをとられたら私は0になつてしまう.
 この点主治医は執筆禁止というが,構わず,書きたい事,また書いておかねばならないことだけ歯に衣をきせず,正直に思つた通りのことを本特集に関連して書いてみようと思う.

ニュース

臨床研修病院きまる

ページ範囲:P.1508 - P.1509

 医師法の一部改正により,従来のインターン制度が廃止され,臨床研修制度が施行されることになつた.臨床研修は,全国56カ所の国立私立大学病院のほか,厚生省の指定する国立私立病院で行なうことになつており,このたび,下記の病院(一般病院108カ所,精神病院18カ所)が研修病院に指定された.

外国文献

astrocytomaの長期生存率,他

ページ範囲:P.1512 - P.1515

 astrocytoma(A)をpiloid型(pA),gemistocytic型(gA),diffuse(dA)型に区分すると,大脳では平均年齢pA 31.5歳,gA 38.2歳,dA 33.7歳.小脳ではpA 20.8歳.愁訴持続は大脳pA 24カ月,gA 29.8カ月,dA 27カ月,小脳pA 29.6カ月.ここで治療(手術OPあるいは照射XR)されるが小脳中央線pAは予後もつともよく,ことに嚢胞状がよい.gAはXR効少くglioblastoma multiformeに似る.KernohanはglioをIV度Aと見,RothはOP+XRで17.4カ月,OPのみで9.8カ月生存としている.dAはOP+XRが奏効するが,核分裂著明例は予後不良といわれる.Elvidge(J. Neurosurg. 28:399,1968)はpA 39例,gA 24例(うちfollow-up 18),dA 29例(follow-up19)のOP後長期生存を調査,pAでは大脳(平均7年)cystic 11.9年,noncystic 3.8年,cysticの1例は30年,1例は16.5年全く再発なし.小脳(平均13年)cystic 16.9年,non 6.5年,ことにcystic 5例は28年以上生存.gAでは5年以上生存(再手術7)10例5 1/4〜10 1/3年で平均7年.

手術手技

卵巣嚢腫

著者: 本多憲児

ページ範囲:P.1522 - P.1527

はじめに
 卵巣嚢腫は婦人科領域において主として取り扱われるが,しばしば他の外科的疾患として,たとえば腹部腫瘤,イレウス,急性虫垂炎などの診断の下に,開腹して卵巣嚢腫なることを知ることがある.したがつて外科領域においても卵巣嚢腫の剔出をいかに行なうべきかを知ることは重要なことである.
 卵巣嚢腫の手術において最も基本的であり,しかも最も重要なことは健全なる卵巣組織を出来るだけ保存することで,手術が容易であるからと称して卵巣全別出を行なうべきでない.

症例

肝臓位置異常による胃捻転と多発性小腸憩室を伴うMarfan Syndromeの1例

著者: 宮崎茂和 ,   大場正己 ,   楢原徳之 ,   阪口周吉 ,   植草実

ページ範囲:P.1529 - P.1534

はじめに
 Marfan syndromeは中胚葉性発育障害の系統的疾患として1896年Marfan1)により記載され,Arachnodactylyなどの骨・筋肉系の異常,水晶体偏位などの眼症状,心弁膜障害や解離性大動脈瘤などの心・血管系の障害などをともない,結合織の遺伝的発育異常がその根底にあるものと解釈されている2)〜4)
 小腸5)〜9),結腸10)〜12)の多発性憩室は老年者に多くみられる疾患であるが,著者らは若年者で小腸全域,胃および横行結腸に多発性憩室を合併し,肝の位置異常と横隔膜弛緩のため胃捻転を生じたMarfan syndromeの1例を経験したので文献的考察と併せて報告する.

慢性硬膜外血腫の2治験例

著者: 佐藤壮 ,   田中輝彦 ,   岩淵隆 ,   平賀旗夫 ,   佐野進

ページ範囲:P.1535 - P.1538

はじめに
 一般に硬膜外血腫は急激な経過をとるため,早期に血腫除去を行なう必要があるものとされており,その症状も脳圧迫による急性頭蓋内圧亢進症状を主としている.
 最近,われわれは慢性硬膜外血2腫2例を経験し,うち1例は受傷後主に精神症状をもつて発症し,血腫徐去直後より症状改善をみ,他の1例は受傷後軽度の頭痛を主訴として来院,頸動脈撮影により血腫を発見し,手術により治癒せしめ得たので報告する.

外発性胃ノイリノームの1例

著者: 平塚弘之 ,   清水力 ,   野松憲一 ,   染矢周一 ,   桂栄孝

ページ範囲:P.1539 - P.1542

はじめに
 Verocayによつて初めて本態を明らかにされたという1)ノイリノームは,脊髄および脳を好発部位とし,胃では少ない2)とされている.殊に,胃漿膜側にノイリノーム,また,それと関係がないと考えられる部の胃粘膜側に潰瘍を認めるという報告は稀れである.われわれは最近,胃体部後壁の粘膜側に潰瘍を,また,胃体部前壁の漿膜側にノイリノームをもつ患者に胃切除術を行ない治癒せしめ得たので報告したいと思う.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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