文献詳細
特集 Encephalopathyの臨床
InsulinomaとEncephalopathy—症例および綜説
著者: 田中早苗1 田淵勝輔1
所属機関: 1岡山大学医学部第1外科教室
ページ範囲:P.1607 - P.1612
文献概要
HyperinSulinismにより低血糖症状をきたし,意識消失および痙攣発作等の脳症状を呈する疾患の原因として,膵島腫瘍(insuloma)が考えられたのはそう新しいことではない.すなわち,1924年,Harris1)がhyperinsulinismの概念をのべているが,1926年にはWarren2)が20例のinsulomaを剖検例より発見し,病理組織学的に観察している.ついで1927年,Wilder3)は意識消失および痙攣発作を頻発,死亡した症例に悪性の島腫瘍を発見し,さらにこの組織にinsulin活性が認められたことから,この患者にみられたhyperinsulinismによる臨床症状が,膵島β細胞の悪性変化に由来するものと推論した.ここにhyperinsulinismとinsulomaの関連がはじめて実証されたわけである.1929年にはHowland4)が初めて外科的にinsulomaを剔出して臨床症状を消失せしめた.
このようにしてinsuloma,すなわちβ細胞の機能亢進によるinsulin過分泌の結果,低血糖発作がおこつてくることが明らかになり,以後欧米では数多くの症例が報告されてきている.
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