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文献詳細

雑誌文献

臨床外科23巻12号

1968年11月発行

文献概要

特集 顔面損傷のファースト・エイド

口腔損傷

著者: 中村保夫1

所属機関: 1慶応義塾大学医学部歯科学教室

ページ範囲:P.1765 - P.1772

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はじめに
 交通事故による顔面損傷の症例が増加してきた現在においては,口腔損傷の症状も従来のものに比較して,はなはだしく複雑化を示すに到つた.これらの症例は,歯牙,口腔粘膜の損傷のみにとどまつているものはほとんどなく,上下の顎骨,頬骨ならびに頭蓋骨骨折等を併発している重篤なものが多い.そのためか,大多数の症例が口腔粘膜,口唇の開放創に対してのみ初期治療を施されて,歯牙顎骨に対してはまつたく放置されてしまうものがますます増加するのではないかと按じられる.しかし,歯牙顎骨は,食物摂取,咀嚼発語には重要な器官であるため,受傷後これらに対して初期治療が正しくなされなかつた時には,将来咬合異常が生じ,咀嚼発語機能の低下,顔貌の変形等の問題が生じて必ず患者は歯科医に不満を訴える.
 しかしこれらの症例の病歴を検討してみると,収容された当初においては,歯牙顎骨の損傷に対する診査,初期治療の施しうる状況でなかつたことは理解できたが,その経過の途上にあつて,口腔損傷に対し精査初期治療が施しえた時期もあつたことは否定できなかつた.歯牙や顎骨のみに損傷が限局した症例は,歯科口腔外科診療室を訪れているが,交通事故による顔面損傷に併発した症例では,最初外科救急病院に収容され処置を受けたのちに口腔外科に受診するか,全身的損傷の全治したのち歯科口腔外科に受診する症例がほとんどで,生命の危機を脱した時点でただちに歯科医が診査した症例は殆んどない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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