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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科23巻2号

1968年02月発行

雑誌目次

特集 出血の問題点

出血とショック

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.169 - P.176

はじめに
 一般に出血がある程度を越すとしばしば生命の危険を生ずることは,外科臨床においては決してまれでない事実である.
 この生命に危険をきたす場合の出血には,量と速度および部位によつていろいろ差があると共に患者の年齢および全身状態によつても,非常に差があることに気づくものである.

消化管出血

著者: 土屋周二

ページ範囲:P.177 - P.185

はじめに
 消化管の外科的疾患のうちで出血を伴うものは数多くあるが,なかでも重要なのは比較的大量の出血を主兆として来院し救急処置を必要とする場合である.この際とくに急を要するのはまず出血による全身状態の変化をとらえこれに対する適切な処置をただちに施すことである.これにつづいて大切なのは原疾患の診断と出血の部位をできるだけ確かめ,個々の場合に応じてあるいは待期的にあるいは手術的に有効適切な手段を講じることである.以下このような場合の実際的処置,診断,治療の要点につきのべてみたい.

腎出血

著者: 宍戸仙太郎 ,   土田正義

ページ範囲:P.187 - P.194

はじめに
 腎からの出血も,下部尿路からの出血もすべて血尿として認められるから,血尿を発見した場合,まず出血部位を明らかにしなければならない.
 一般に腎性血尿は,しばしば茶褐色を呈し,血膿尿の場合でも凝血をみることは少ないが,下部尿路からの血尿は凝血を含むことが多い.しかし腎出血でもそれが高度であれば,凝血が膀胱に貯留して,尿閉をきたすことがある.また膀胱以下の出血でも,小腫瘍からの出血は初発症状として,顕微鏡的血尿あるいはわずかの着色に留まることもあり,血尿の性質から出血部位を推定することは困難である.

骨・関節の出血

著者: 渡辺正毅

ページ範囲:P.195 - P.200

はじめに
 1滴の出血が死を予告するようなことは,骨・関節の場合にはないが,出血の部位と原因の診断は問題となることがある.骨・関節の出血にも,内出血,外出血が区別され,また原因も外傷性,病的の両者がある.一般には骨折による内出血が代表的で,むしろ当然のことと考えられがちである.しかし,骨折の出血にも強弱があり,大量の外出血は生命の危険をもたらし,強い内出血が神経を圧迫麻痺させることもある.また骨折部の出血は腫脹や皮膚変色から容易に識別されることが多いが,大腿骨頸部内側骨折のように関節包内骨折であるため,血腫の存在が認めにくい場合もあり,また外傷直後には著変なく,日を経て広汎な皮下溢血を発見するものもある.外傷により出血の症状が強い場合には,骨折を考えるのが普通であるが,レ線検査で骨折の存在が明らかでない場合がある.このような例では,骨折の発見が困難であるのか,あるいは骨折は存在せずに骨に近接する血管損傷が存在するためか,往々診断に迷うことがある.また骨と血管走行との解剖学的関係から,骨折骨片による血管損傷のおこりやすい骨折がある.一方骨折の部位により出血の大小がある.大腿骨骨幹部骨折・転子下骨折,小児に多い上腕骨顆上骨折および脛骨骨折などは出血が著明な骨折である.

出血と輸血

著者: 林久恵 ,   川田高俊

ページ範囲:P.201 - P.206

はじめに
 出血による生体の循環血液量の不足には輸血が最良の治療である.外科手術の場合は出血量は正確に測定することが可能であるので,その出血量にあわせて,これに相当する量の輸血を行なえばよいので,輸血量の決定は容易である.しかし,外傷や不時の出血の場合は,正確には体内の循環血液量を測定し,それによつて出血量を推定し,輸血量を決定する必要があるが,急の場合には簡単に呼吸数,脈拍数,血圧,血液のHb,Ht値の測定により,これを基準として輸血を行なわなければならない.また輸血を行なう場合,種々の検査や手続を経なければならないので,手軽には輸液を用いた方が便利であるが,出血後,全血量の回復することのできるのは主として血漿によってなされ,赤血球は急に補充されないので,人工赤血球がない限り輸液使用には限度がある.これらの量からみた,輸血,輸液量の適応や血液製剤,代用血漿の種類,適応ならびに体外循環時の血液の使用検討,輸血の副作用につき私共の経験をもととして述べる.

外科領域における出血傾向

著者: 砂田輝武 ,   志水浩 ,   河合進 ,   重本弘定 ,   藤山登 ,   尾崎光泰 ,   中矢良一 ,   島村幸夫 ,   大本武千代 ,   田淵三郎 ,   熊田佳郎 ,   林繁樹 ,   藤谷良幸 ,   源佑一郎 ,   山田良

ページ範囲:P.207 - P.216

はじめに
 外科手術は正常な止血機構を前提としてなり立つ治療手段であり,日常外科医を訪れるほとんどの患者は出血傾向に関しての心配がないのが通例である.しかし時として先天性,後天性の原因による出血傾向,すなわち皮膚皮下の点状出血,紫斑,粘膜出血,さらには手術創からの滲みだすようなとめどもない出血(oozing)があらわれ,出血が多いとショックに陥り死の転帰をとることさえある.ときたまではあつてもこういうことが起こると大変困惑させられる.
 外科領域でみられる出血傾向は,失天性の出血性素因のほか,心,肺,膵,前立腺,子宮の手術,癌手術,体外循環,低体温法,保存血大量輸血,不適合輸血,ショック・アノキシア,肝障害,悪性腫瘍の末期,外科的血液不全症,抗凝固療法,ある種の心血管疾患,麻酔,炎症,熱傷,放射線照射,精神的不安などにさいしてみられる.

グラフ

いわゆる鞭打ち損傷の臨床

著者: 土屋弘吉 ,   土屋恒篤 ,   田口怜

ページ範囲:P.155 - P.160

鞭打ち損傷の本態については,各方面から検討されている.臨床的な検討や実験的研究によつて一般に本傷害は,頸椎軟部支持組識の損傷であると理解されている.即ち,頸椎部に椎間板,椎間関節,靭帯、Luschka関節等の損傷が起こり,脊髄硬膜内外、神経根周囲に出血および充血,これに続発する瘢痕形成等が起こり,それによつて多種多様な症状を呈するものと考えられる.

外科の焦点

手術創感染の問題点

著者: 柴田清人 ,   今津市郎 ,   岡田英也 ,   木村章二 ,   伊藤忠夫 ,   水野貴男

ページ範囲:P.161 - P.167

はじめに
 手術創感染は通常皮膚および皮下組織を場とする感染症の一つであるが,理論的に感染と発症を区別すれば,微生物が宿主に侵入してその体内で増殖することが感染であり,その結果として,宿主が病理組織学的にある変化を受け,自覚的にも他覚的にも病的な状態となつたのが発症で1),厳密にいえば,手術創感染は感染症という概念よりはずれることになるが,今日われわれが慣用している手術創感染とは,両者を区別せず一括した意味で用いている.
 感染症は病原体と宿主との密接な相関関係の下に成立するものであるから,その解明にはこの相互の関係,すなわちhostparasite relationshipを対象として観察,検討しなければならない.病原菌の毒性virulenceを例にとれば,母乳を与えていない新生児に対して大腸菌Escherichiaは容易に腸壁を突破して敗血症を来たすことがしばしばあるとされている.それは菌に対する抗体が胎盤移行をしていないため,母親の抗体が存在する母乳を授乳していない新生児はその菌に対し全く抵抗力がなく重症な大腸菌性敗血症を来たすが,授乳を受けた新生児ではもはや敗血症は起こり得ない2).このように同一菌種によつてもその個体の菌に対する感受性によつて菌の毒性も違つたものとなつてくるので,それぞれ相互の関係を見る必要があり,毒性にしても宿主寄生体関係の複雑な多くの因子の総合的作用として認めねばならないであろう.

論説

補助循環の研究に関する綜括的展望

著者: 田辺達三

ページ範囲:P.223 - P.229

はじめに
 代償不全に陥りいろいろな内科的療法にもかかわらず回復させ得ない心臓の機能を,機械的に補助またはまつたく代行し,心筋の負荷を軽減し,十分な循環を維持して,生命の延長を計る研究が近年重ねられている.1時的に循環を補助する目的で補助循環,半永久的に循環を代行する目的で副心臓,完全代用心臓,または,心臓移植等が取上げられているごときが主なものである4)
 著者は,最近米国におけるこの方面の研究について若干見聞する機会を得たので,ここでは補助循環の研究の動向を総括紹介したい.広義の意味では心臓循環補助,呼吸機能補助,代謝機能補助の面から,代償不全心,ショック,進行性窒息,低酸素血症,炭酸ガス中毒,代謝性アチドーシス,腎性昏睡,肝性昏睡,外因性中毒等が対象として考えられているが,ここでは主として心臓循環補助を目標とする狭義の補助循環について論じたい.

肝内胆石症の病因および診断について

著者: 志村秀彦

ページ範囲:P.231 - P.240

はじめに
 肝内胆石症は肝内胆管に結石の発生する疾患であるが,しばしば肝外胆管内の結石を合併しているので従来特別な疾患とは考えられておらず胆管内結石として一括されていた.然るに最近胆道手術後の愁訴例を検討したところ,胆管内遺残結石症の中に難治の結石症が存在する事実が明らかとなつた.これらの難治性胆石症の大部分が肝内結石症であり,中には肝内胆管が泥状,無構造のビリルビン結石で充満されている例もある.これらの結石は単なる胆管ドレーナージ,胆管洗浄によつても容易に排出されず,頻回なる発作の後,遂には肝障害および肝膿瘍のために死の転期をとるに至るものである.
 肝内胆石症の概念は始めは病理学者の間で知られていたにすぎない(第1表).すなわちBeer(1904)は250例の屍体解剖の結果72例の胆石症の6例,8.3%に肝内胆石を発見して以来,結石の成因および治療上臨床家の注目をあびるに至つた.然しなお臨床的に肝内結石を発見することは当時として困難であり,極めてまれなものとして取扱われていた.その後本邦で稲田(松尾)(昭5)は剖検および臨床例で129例の胆石例中23例(17.8%)に肝内胆石を認め,松尾はその特有な臨床症状より肝内における結石の発生が胆汁のうつ滞,細菌感染等のほかに,肝内寄生虫の影響や肝機能と関連した胆汁組成の変化にその原因を求めた.

トピックス

多彩な国際学会

ページ範囲:P.245 - P.245

1967年の外科学界のビッグ・ニュースは,南アフリカで口火が切られた心臓移植であつた.今後ますますこの方面の研究が発表される趨勢だが,それとともに医学の国際交流はさらに活発になろう.今年は日本でも国際外科学会総会が10日6〜11日(東京,京都)に行なわれることになつている.ここに外科関係の国際学会をひろつてみることにした.

海外だより

ヨーロッパの旅—"呼吸不全"と"救急蘇生法"のシンポジウムから

著者: 岡田和夫

ページ範囲:P.246 - P.249

1966年の5月,フランスのベルサイユの学会に出席したのがついこの間のような気がしているうちに,再びヨーロッパへと旅立つたのは残暑のきびしい9月20日であつた.
 フランスのナンシーで開かれる"呼吸不全"のシンポジウムと,ドイツのマインツで開かれる"救急蘇生法"のシンポジウムに参加するのが目的であつた.

学会印象記

第26回日本脳神経外科学会—頭部外傷・いわゆる鞭打ち損傷を中心に

著者: 稲葉穣

ページ範囲:P.250 - P.251

 第26回日本脳神経外科学会総会は,昭和42年10月8,9,10日岐阜市民会館(第1会場)と岐阜商工会議所(第2会場)で,岐阜大学竹友隆雄教授の会長により開催された.演題は脳腫瘍33,頭部外傷43,鞭打ち損傷23,脳循環・脳血管32,その他,診断法,てんかん・脳波,解剖,生理・髄液,先天異常・水頭症・脳浮腫,脊髄・宋梢神経に関するもの等の198の一般演題と3題の学術映画の他,6題の特別講演,シンポジウムとして頭部外傷急性期の診断8,脳浮腫8,いわゆる鞭打ち損傷10題であつた.近年の脳神経外科の発展をそのまま表現するように今までの最多の演題数であつたが,会場の関係もあつて,筆者はその約半数を聴くこととなつた その中今回は,紙数の都合上,現在社会的にももつとも問題となり,また一般実地臨床家が大きな関心をもつておられる頭部外傷と,いわゆる鞭打ち損傷に関するものに限定して,以下その概要を述べ,些か私見を付加したいと思う.

臨床メモ

下肢静脈瘤の手術的療法について

著者: 糸井純三

ページ範囲:P.254 - P.254

 下肢の表在性静脈瘤を有する患者は,われわれ外科医が,外来において,時々遭遇するもので,多くは長時間立仕事に従事する人や妊婦・経産婦に認められる.静脈還流を阻害するような環境におかれた人々に発生し易いのは当然であろう.このような場合,主訴は単に美容上の問題とか,作業後のいろいろの程度の倦怠感・疼痛とか,あるいはまた内科的療法や一部静脈の結紮を受けたが症状が軽快しない等々である.静脈炎とかvaricose ulserの如き場合ならばともかく,主症状が比較的軽微で,しかも緊急な治療を要するほどでないために,外科的根治療法はとかくなおざりにされがちである.しかし,放置しては症状の改善は全く期待されない.そこでわれわれは,次のような簡単な器具を用いて静脈瘤の抜去を行なつているのでその手技を簡単に紹介する.

手術器械の豆知識

電気メス

著者: 島文夫

ページ範囲:P.255 - P.255

 手術器械は電動式とかエレクトロニクス関係のものは決して多くない.ごく最近のものではレーザー,やや古いものでは骨手術器械,植皮刀,マグネット,電気メス(凝固を含む)などが一般である.
 電気メスは,切開,凝固に非常に有効に用いられているが,一般的なものは,高周波の発生のためのスイッチングが手動式であつたり,対極板を使用するので,生体を一定量の電流が流れるとか,出力の微調整が不十分とか,いくつかの問題が残されている.

外国文献

1回輸血後のgraft-vs-host反応,他

ページ範囲:P.256 - P.259

 ヒトでもthymic alymphoplasia Swiss型agammaglo-bulinemia型などの患児に免疫学的競り合いリンパ球を注入(輸血)して,runt病が発生したというHathaway(N.E.J.M.273:953,1965,およびJ.Pediat.68:713,1966),Kodawaki(Lancet 2:1152, 1965),Miller(J.Pediat.70:730,1967)など数例の報告がある.Hathaway(JAMA 201:1015,1967)は11ヵ月少年,種痘のあとが壊死状で大となり発熱,γ-gl.を注射,依然高熱.そこで12日保存の全血125ml輸血.種痘の壊死増悪.ここで精査がはじまつたが,Hb 14.3g.Ht47,白15000,Coombs(+),綱赤球1.6%.培養すべて(−).TP 5.0g,Al 2.5g,α1-gl. 0.5,α2 1.2,β0.6,γ0.2,IgG 216mg,IgA<6mg,IgM 14mg,骨髄はmyeloid系増多.染色体46/XY.骨髄所見はだんだんつよくなるpancytopenia,臨床的な皮膚壊死などgraft-vs-host反応と考えられ,2300rads照射全血で交換輸血を4回行ない,競り合いリンパ球を破壊しようとした.

手術手技

交通外傷による顔面変形の形成手術

著者: 丹下一郎 ,   須田秀雄

ページ範囲:P.262 - P.268

はじめに
 昭和41および42年の2年間に,交通外傷による顔面の2次的変形を訴えて,私どもの外来を訪れた患者は121名に達する.これは新来患者総数の8.4%である.今後も,交通事故の増加および救命的初期治療法の進歩とともに,このような後遺変形,ないし醜形に悩む患者はあとを絶たぬであろう.
 ただし,ここで交通外傷といつても,その発生機転や態様が,一般の労働災害などにみられる打撃,墜落などと同様のものが少なくない.したがつて交通外傷に比較的特有の事がらだけを取上げることとする.

他科の知識

麻酔科の立場からみた緊急気管切開

著者: 黒須吉夫 ,   矢沢知海 ,   明石勝頼 ,   田村京子 ,   稲見浩三 ,   佐藤国男 ,   金城亀次

ページ範囲:P.270 - P.274

はじめに
 今世紀初頭までは,むしろ危険視さえされていた気管切開術は,以来その適応の変遷,拡大1)と相俟つてますますその有用性が認められるようになつてきた.一方,最近は外科領域においてはもちろんのこと広く内科領域においてもしばしばその適応が見られ積極的に気管切開が施行される傾向になりつつある.加えて近代麻酔学の導入は気道の確保,呼吸および循環の管理等の点で必然的に麻酔医の関与する面が生じてきた.かかる現状で麻酔科として積極的に気管切開症例に参与するのは当然であろう.気管切開施行の時期の適切な判断は,もとより受持医の主たる任務であるが,従来の報告2)3)によると約30%近い合併症発生率があるということからみても本法は決して軽々しく行なわれるべきでないことはもちろんである.また救急時における気管切開施行例においては,選択的な気管切開例より2〜5倍近い合併症4)をみるといわれている.このようないわゆる緊急気管切開例に麻酔科の立場から可及的に,より安全かつ理想的な気管切開の施行できるよう協力すべきであろう.

症例

Eledoisinの臨床使用

著者: 神谷喜作 ,   飯野三郎 ,   内木研一 ,   仁瓶正教 ,   林春男 ,   日比行雄

ページ範囲:P.275 - P.279

はじめに
 近年,血管外科の進歩とともに,その薬物療法の併用も高く評価されるようになってきた.1961年以降,Eledoisinは,医学および生物学的領域で広く研究が進められて注目をあっめるようになつてきた.
 本剤は,Erspamer1)によりはじめて1949年にたこの一種であるEledone Maschataの唾液腺から分離抽出され,1961年にErspamerとAnastasisによつて,それが11個のアミノ酸よりなるPolipeptideの一種であることが確認された.さらに翌年にはBoissonarasとSandri14)がその合成に成功して以来臨床面にも応用されることが可能になりつつある.

手術室内空気汚染に関する問題—とくにトリエチレングルコール使用経験について

著者: 中山恒明 ,   織畑秀夫 ,   秋田善昭 ,   倉光秀麿 ,   榊原宣 ,   山本勲

ページ範囲:P.281 - P.284

はじめに
 手術室内空気の細菌学的清浄法に関しては,いろいろと考えられてきた問題である1)2).また手術室の設備としての無菌空気送風による冷暖房換気の必要性が力説されている3).Phelps4)によれば,外科手術室の備えるべき条件として,1)落下細菌数0,2)気温24〜26℃,3)湿度50〜55%,4)必要にしてじゆうぶんな換気の4つをあげている.手術室を厳重に密閉し,無人室内の空気を清浄にすることは比較的容易であるが,実際問題として手術施行時,患者のみならず,術者をはじめ多数の人員が室内に出入するので,厳重に密閉した無菌的空気中で手術を行なうことは非常にむずかしい.いままで,手術室内空気の細菌性汚染を制御することについて理論的にはつぎのような方法で研究されてきた.1)エアーコンディショニング(空気調節).2)温度および湿度の調整.3)細菌濾過装置.4)室内殺菌灯の使用.5)手術室内職員の着衣.マスク,帽子およびスリッパの清浄化,6)殺菌性ベーパーの使用などである.最近われわれはいままであまり臨床的に応用されていなかつた殺菌性ベーパー,とくにトリエチレングルコールを使用する機会をえたので,その使用経験について報告したい.なお,トリエチレングルコールは,つぎのごとき化学構造をもっ無色透明,やや粘度の高い無臭の液体で,化学的な殺菌作用については明らかにされていない.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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