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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科23巻3号

1968年03月発行

雑誌目次

特集 術後困難症の処置

頭部手術後の頭痛・嘔吐

著者: 宮崎雄二

ページ範囲:P.307 - P.311

はじめに
 近年の脳神経外科の進歩普及は著るしいものがあり,各種脳手術の成績もめざましい向上を示している.これは手術後数日間にわたる注意深い患者観察と慎重なCareが一つの原因であり,この間の髄液圧調整など患者管理については諸家によつて多くの関心がはらわれている.これに反し脳手術後,相当日をへてから出現する頭痛や嘔吐などについてはあまり関心がはらわれていない.
 本誌特集の表題は『術後困難症の処置』であるが,脳手術後においては胸腹部手術後におけるような意味の術後困難症,すなわち手術そのものが直接または間接に影響して他の病的状態を招来し,しかもその処置が困難を極めるというようなものは多くはない.たとえば頭部外傷例において頭蓋内血腫除去手術を行ない救命し得たような例では軽症頭部外傷例に反し,頭痛や眩暈を長く訴えることはむしろ少ない.

胸部手術後に発生した動脈瘤

著者: 新井達太

ページ範囲:P.313 - P.318

はじめに
 胸部の手術後に発生する動脈瘤は,動脈管開存症の切断手術後,大動脈絞窄症の手術後,Valsa-lva洞動脈瘤の破裂の手術を大動脈側から行なつた場合,あるいは大動脈瘤の手術後に見られる.すなわち,大動脈に直接侵襲を加えた後に,なんらかの原因によつて起こると考えられる.このほとんどの症例は仮性動脈瘤であるが,治療がきわめて困難なことが多い.
 女子医大心研で行なつた動脈管開存症の手術症例は700例であるが,このうち3例に仮性動脈瘤の発生をみており,Valsalva洞動脈瘤の破裂の手術を大動脈側から行なつた1例に仮性動脈瘤の発生をみている.

消化管手術後の便通異常—特に胃切除,迷走神経合併術後および大腸全切除術後の下痢について

著者: 柳川荘一郎 ,   池田典次 ,   山岸三木雄

ページ範囲:P.319 - P.324

はじめに
 一般に,消化管の手術後には,いろいろの便通の異常が起こりやすいことが知られている.
 その中で,もつとも重要視されているものに,下痢,脂肪便があり,この他にも下痢をし易くなつた,排便回数の増加,あるいは便秘などを訴えるものも少なくない.

虫垂炎手術後の腹痛

著者: 西島早見 ,   伊槻敏信

ページ範囲:P.325 - P.333

はじめに
 虫垂炎はわれわれ外科医にとつて日常最も多く遭遇する疾患で,治療的には虫垂切除術が卓効を示す.外科の進歩,とくに化学療法の発達,麻酔の進歩,輸液療法の普及化などとあいまつて,今日虫垂切除術は最も容易で安全な開腹術として広く行なわれつつあり,日本全国における虫垂切除例数はおびただしい数にのぼつているものと思われる.その反面,多数の症例のうちには術後合併症や後遺症のために医療を必要とするものや再開腹術を必要とする症例は決して少なくない.外科医は常に反省しつつ,手術に際しては細心にして周到綿密な注意が必要である.
 従来われわれは腹膜癒着の問題を中心にして各種開腹術後の困難症について検討を加えてきたが,ここには主として虫垂術後障害のうち,とくに腹痛を呈する疾患について検討を加えたい.

胃切除後の貧血

著者: 古賀成昌 ,   宍戸光範 ,   古沢元之助 ,   速水璟 ,   白水玄勇 ,   饒仁信

ページ範囲:P.335 - P.339

はじめに
胃全摘をはじめ胃切除後には,いろいろの術後障害ないし後遺症の発現が認められているが,そのうちのひとつに貧血の発生の問題がある.ことに,胃全摘後には術後治療を行なわなければ,術後経過に応じて,一定の貧血が発生してくることが知られている.したがつて,かかる貧血の発生の予防,治療もまた,患者の術後管理の面でゆるがせにできないもののひとつである.よつて,かかる貧血の発生およびその予防ないし治療に関して,私どもが行なつてきた検討成績について,その概略を述べることとする.

グラフ

心臓ペースメーカー

著者: 堀原一

ページ範囲:P.295 - P.300

人工臓器の研究は、臓器移植とともに最新の外科の課題である。大阪での第5回人工臓器学会には種々の人工臓器のカンファレンスがもたれたが、そのうち心臓ペースメーカーカンファレンスで討論されたものを主にまとめてみることにする。

外科の焦点

Blind loop syndromeの治療

著者: 中山恒明 ,   羽生富士夫 ,   矢野柾多

ページ範囲:P.301 - P.306

はじめに
 腸管側側吻合は19世紀末に犬において実験的に行なわれたが,その後の外科手術の発達に伴つて腸管吻合の機会が多くなるに従い,吻合部盲端の嚢状拡張の起こることがしだいに明らかになつてきた.CannonおよびMurphyは猫を用いた実験で,口側の盲端が吻合部をこえて長い場合,ここに腸内容が貯留し拡張することを証明している.1935年にHenschenは,吻合病Anastomo-sen krankheitという名のもとに,腸管の側側吻合後おこつてくる種々の障害をまとめた.しかし,この名のもとにいかなる症候群を含めるかということは,まだ一定の説がなく,いろいろの見解がとられているのが現実である.
 Blind loop syndromeと呼ばれるものは,ほぼこの吻合病の概念と一致するものであるが,後者の方がやや広範囲の範疇を含むもののようである.すなわち吻合病のなかに胃切除後のダンピング症状,輸入脚症候群,術後空腸潰瘍,胃全剔後の逆流性食道炎を含めるとする意見と含ませないとする意見があり,現在においては後者が大多数をしめている.またBlind loop syndromeとしては,盲環の形成のあるもののみとするものと,広く悪性循環,盲嚢および盲端の形成までを含めるとするもの,あるいは輸入脚症候群まで含めるとする意見もある.

論説

頸椎鞭打ち損傷の治療

著者: 片岡治 ,   小林郁雄 ,   糸原学 ,   渡辺秀雄 ,   梁復興

ページ範囲:P.345 - P.353

はじめに
 鞭打ち損傷の病理・病態については,1943年Davisの報告以来多くの研究者がその原因を究明すべく研究してきたが,まだ定説がない.加うるに,この損傷には単なる不快感のみが,その主症状であるような軽症のものから,われわれの定義からは除外するとしても,脱臼・骨折を伴う重度のものもあるし,また適切な早期治療を行なつても2次的にinstabilityを生ずるような症例,Barré-Lieou症候群を伴う症例,明らかな脊髄症状を伴う症例等,その程度および病態は多種多様である.
 この鞭打ち損傷について,今回は不定愁訴面を主とした病態に対するわれわれの見解と,観血的療法を含めた治療法およびその成績について述べたい.

超音波記録診断装置,スーパーソノグラムとその臨床応用—とくに胆石症の診断について

著者: 三樹勝 ,   藤島義一 ,   谷口恒義 ,   矢部三郎

ページ範囲:P.355 - P.366

Ⅰ.超音波診断法の発達と超音波記録診断装置"Supersonogram"について
 オーストリアのK.T.Dussik1)が頭蓋内疾患の診断に超音波透過法による実験を行なつたのは,1942年のことであるから,超音波が医学の分野に応用され始めてから二十数年を経ているわけであるが,魚群,潜水艦などの探知,測深を目的としたSonar,重金属材質中の傷の探知を目的とした探傷器などに超音波の利用が早くより実用化されていたのに比して,超音波診断法として実地臨床上に応用され始めたのは,Wild(1950)2),菊池(1951)3),らの基礎的研究を経た後の1956年以降のことで,なかんずく,わが国における菊池,田中,和賀井,内田4)らの研究業績に負うところが大であると共に,診断装置の進歩発達が大なる要因ともなつている.
 今日では,生体に無害で患者にまったく苦痛を与えないで済むという利点が生かされて,頭蓋内疾患,乳腺疾患,甲状腺疾患,肝胆道系疾患,心疾患等々,医学各部門への普及は目ざましいものがあり,胆石症の診断分野でも今日routineの検査となりつつある.

側脳室腫瘍の手術経験

著者: 田中輝彦 ,   伊藤善太郎 ,   高橋正晁 ,   宇根岡啓基 ,   石橋孝雄

ページ範囲:P.367 - P.374

はじめに
 側脳室腫瘍は,その組織像はいろいろであるが,臨床経過の点では共通するところが多い.Dandy1)も全脳腫瘍の0.75%と述べているように,従来はなはだまれなものとされ,しかも通常,神経学的検査のみでは診断が困難であり,腫瘍の部位的特異性と相まつて,その治療成績は,現在なお良好とはいえない.しかし,腫瘍摘出に成功すると予後は良好で,正確な術前診断が成績向上のカギと思われるので,頻度は少なくても重視すべき腫瘍である.
 われわれは,東北大学桂,葛西外科,脳研脳神経外科,福島市大原綜合病院脳神経外科において,昭和41年6月まで17例の側脳室腫瘍手術例を経験したので,この集計と共に代表的症例について検討してみたい.

トピックス

心筋植込内胸動脈の血行動態

著者: 須麿幸蔵

ページ範囲:P.377 - P.378

 ビマン性虚血性心疾患に対する外科的療法は1920年発表されたJonnesco1)の頸胸部交感神経切断術をもつて嚆矢とする.その後多くの治療法が試みられたが,いずれも満足な効果はえられずすたれていつた.1946年発表されたVineberg氏法2)は左内胸動脈を胸壁より遊離し第6肋間で切断し,それより中枢側の先端部の肋間動脈を出血させたまま心筋内部に植込む方法であり,植込動脈と冠状動脈との吻合を目的とするものである.本法も長年疑念をもたれていたが,1962年Sonesの選択的冠状動脈造影法によつて内胸動脈と冠動脈との吻合が証明されて以来にわかに注目されるところとなつた.
 さて植込まれた内胸動脈は植込直後は,毎分数ccといわれるが,植込後数カ月して吻合完成後の流量は数ccから数十ccと報告者によつてかなり差異がある.吻合は,レ線学上からだけでなく血行動態面からも証明されうる.Provan3)らは慢性植込犬において亜硝酸アミル,エピネフリン投与により体血流量は減少したが植込まれた内胸動脈の流量は冠血流量と同じく増加したと報告している.筆者は昨年米国留学中内胸動脈の血行動態に関する研究を行なう機会をえたので,簡単にそれをしるす.

臨床メモ

吐血・下血の治療

著者: 長尾房大

ページ範囲:P.378 - P.378

 吐血,下血は,突発的な顕性出血であるから,治療方針といつても,まず,診断的なあたりと,救急処置的な対策とが並行して行なわれ,止血,救命を第一義的な目的として治療方針を樹てるのが理想的である.いわゆる,経過観察に名を借りて慢然と時間を費し,全身状態の悪化を招かないように注意しなければならぬ.従つて,治療の第一歩は,輸血に始まるのが原則であり,みだりに昇圧剤などを投与して,血圧の維持をはかつたりするのは誤りである.ショック状態を呈している時は,輸血も急速,かつ,大量に行なわなければならないが,一応,輸血量の目標は最低1000mlとしている.これは,日本人の体格から換算して,ショック症状を呈する程度の失血量は,おおよそ1000ml前後と考えてよいからである.この程度の急速輸血で血圧も回復し,その後も安定しているものは,失われた循環血液量もほぼ補われ,また,その後の出血の継続もなく,自然止血している可能性が大であるから,あらためて,輸血,輸液などを中心として,全身管理を行ないながら,経過を観察すればよい.
 出血が止まつているかどうかを判定するためには,胃液検査用のチューブを胃内に挿入して,胃液を吸引してみるとよい.この方法は,簡単なことであるが,意外に実施されていない.胃液中の血液の性状により,出血の新旧の程度も判るし,止血したかどうかの判定にも便利である.

海外だより

米国の2人のイレウス学者を訪ねて

著者: 四方淳一

ページ範囲:P.380 - P.383

イレウスを原因べつに分類してみると,前の開腹手術による癒着のために起こると考えられるものが増加している.癒着防止に関する,積極的かつ有効な方策が考えられない現在,当分の間,イレゥスは減りそうもない.そして絞扼性イレウスの死亡率は依然として高い.イレウスに関しては,長い間研究されて来ているが,なお,未解決の問題が山積している.

手術器械の豆知識

止血鉗子

著者: 島文夫

ページ範囲:P.383 - P.383

 止血鉗子は,その名のとおり主として止血を目的として使用される鋼製手術器械の一つである.使用頻度は非常に高く,本来の止血の目的以外にもいろいろな使い方をしている.たとえば,組織の把持,牽引,鈍的剥離,縫合糸の誘導(クリーヴラン縫合糸誘導器代り),腸管その他の切除時の切除側断端の閉鎖把持,ピンセット代り,ゾンデ代り,縫合糸やテープなどの保持,あるいはテープを使用しての一時的血管遮断,糸結びの時の手指代り,持針器代り,替刃の差しかえ,あるいはホールダー代り,その他にもゴム管などの一時的遮断,などとその使い方は広い.ということはどんな手術にも必ず使用しているので,使うことに十分なれて,いろいろなことをしているということである.
 しかし本来の目的のために,形や大きさ,構造,機能が十分吟味され完成されたものであろうか.専門化された分野での手術では,相応に神経が届いてきているが,一般にはまだ不満な部分が多い.有鉤のもの,無鉤のものがあるが,鉤はどの程度必要か.先端の幅や厚さはどうであろう.先端の組織把持力と止血の関係はどうであろうか.その一つ,先端に加わる力の大きさについて考えてみよう.

患者と私

病人こそ最良の師

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.384 - P.385

 小児と老人
 小児外科をやつていると痛感するのは患者がお喋りをしないということである.患者が口で知らせることは極めて少ない。したがつて患者の母親を始めとする家族から聞くのであるが,これも極めてわずかである.
 このようなものをいわぬ小児を相手にする場合,話として聞くその病気の経過は極めて簡単である.そこで雑念なしに臨床所見と検査成績に取り組むことになる.こうしてみると小児の患者は診断をつける上に決して難かしいものではないともいえる.また治療方針にしても比較的簡単明瞭のことが多い.

グラフ解説

心臓ペースメーカー

著者:

ページ範囲:P.386 - P.387

 日本では,現在心臓ペースメーカーの長期使用患者は100人以上とみなされているが,代表的な施設の統計についてふれてみたい.

外国文献

原発性脳内出血,他

ページ範囲:P.388 - P.391

 動脈瘤,A-V奇形,腫瘍などなしに原発性に脳内に自発的に出血した状態の外科はCook(Arch.Neurol.13:25,1965)などの報告によつて,高血圧の有無,手術時期,部位,臨床状態によつて予後が決定されるといわれている.Luessenhop(J.Neurosurg.27:419,1967)は6年間の66例を吟味している.大部分は高血圧を合併している.第1群7例(症状軽微,瞳孔・呼呼正常),第2群33例(drowsyないしstuporousで,限局神経症状著明),第3群24例(脳幹症状ありdec-orticateないしdecerebrate)にわけると,I群死亡ゼロ,II10%,III86%である.手術37例はII群8%,III群77%,非手術27例ではII群12%,III群100%となる.症例があげられている.血腫部位は1obar 26例(II20,III6),capsular 24例(II 5, III19)にわけると,死亡はlobar 11%,capsular 92%で後者が著しく悪い.手術したものに限るとlobar 4%,capsulor 79%,復職あるいは日常の生活が行ないうる程度の回復は3カ月〜6年のfollow-upで,I6例,II群は手術から8例,III群3例.回復不満足ながら生存したものを加えると40例で,このうち73%が満足に近い成績ということになる.

手術手技

交通外傷による顔面骨骨折

著者: 桜田允也 ,   田嶋定夫 ,   杉本智透

ページ範囲:P.393 - P.400

はじめに
 中,高速走行時における交通外傷は顔面外傷を伴いやすい.新鮮外傷患者の初期治療にあたつて一般に顔面骨骨折には意外に関心がはらわれていない.
 頭蓋内損傷,内臓損傷などの重篤な損傷に対する処置が優先することは論をまたないが,受傷直後の形成外科的配慮も大切である.軽度の複視,顔面変形,咬合異常,涙系損傷も処置されないまま,後遺症として片づけられる例が少なくない.これらの症例は受傷後早期に適切な治療を行なえば比較的容易に治癒していたと思われるものが多い.しかし一度陳旧性となると,手術そのものが困難となるばかりでなく,その効果を思うにまかせない.

他科の知識

脊麻の反省—脊麻による重大な循環系合併症3例を中心として

著者: 佐藤光男 ,   武藤賢二

ページ範囲:P.401 - P.406

はじめに
 脊麻は,約70年余も前にドイツのBierがコヵインを使つておこなつて以来,今では広く世界中に重要な麻酔法のひとつとして普及されている.これは方法の改善や使用局麻剤の進歩もさることながら,意識を失なわせなくても手術部位(下半身)の無痛と筋弛緩が完全であるという長所を持つているからであり,いかに全麻が発達しても捨てがたい麻酔法のひとつといえよう.しかしながら脊麻の最大の短所は, ときに急激な血圧下降,もしくは脊麻ショックをおこすことである.常に注意されなければならない.
 ここに当教室の高比重液を用いた際の脊麻実施方針を紹介するとともに,最近経験した重篤な循環系合併症3例をあげ,対策について考えたい.

症例

術後吻合部潰瘍の5例

著者: 鳴海弘泰 ,   中内幸郎 ,   杉沢利雄 ,   松野耕治 ,   嶋野松朗

ページ範囲:P.407 - P.411

はじめに
 胃・十二指腸潰瘍に対する外科的治療として,胃切除術が広く行なわれているが,近時その手術死亡率もきわめて低率となり,またその治療成績も良好となつている.しかし一方,この胃切除を含めた各種胃手術後にも,時としていろいろの合併症ないし後遺症の発現が認められる.その一つとして術後吻合部潰瘍があり,その報告も散見されるが本邦では比較的少ないとされている1)
 われわれも,今まで約10年間に胃・十二指腸潰瘍,および胃良性腫瘍の胃手術例107例のうち5例(第1表)に術後吻合部潰瘍を経験したのでここに報告し,あわせて2,3の文献的考察を加えたい.

胃壁内好酸球性肉芽腫の1例

著者: 増田義徳 ,   白崎重弥

ページ範囲:P.415 - P.417

はじめに
 胃壁内好酸球性肉芽腫は,最近,その報告が増加しているが,わが国の症例報告では,約40例程度1-3),6-13)であつて,まれなものである.
 われわれは,最近,胃集団検診から胃潰瘍と診断した患者に,一部に潰瘍の認められる胃腫瘤を胃カメラによつて発見し,胃癌を疑つて切除したところ,好酸球性肉芽腫であることを病理学的に証明した1例を経験した.

尿性腹膜炎

著者: 森岡恭彦 ,   金子信俊 ,   菱本久美郎 ,   額田克海 ,   間中純也

ページ範囲:P.419 - P.425

はじめに
 尿路系とくに膀胱の損傷で尿が腹腔内に漏出すると,いわゆる尿性腹膜炎となる.尿性腹膜炎は比較的まれな疾患とされているが,救急症例としてときに一般外科医によつても経験されることがあり,とくにその診断に苦しむことがある.著者らは,最近までに6例の尿性腹膜炎を経験したのでとくに一般外科医の立場より,本疾患の診断上の問題点について言及したいと思う.
 尿路系の損傷でしかも腹膜に損傷が併存すると,尿が尿路外へ漏出し,さらに腹腔内に貯溜し尿性腹膜炎の状態となる.これは膀胱損傷で起こることが多いが,尿管・腎盂などの損傷でもきわめてまれにおこることがある.ここではおもに膀胱損傷について述べる.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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