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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科23巻5号

1968年05月発行

雑誌目次

特集 臓器移植の可能性

対談—臓器移植の可能性と倫理

著者: 榊原仟 ,   石川浩一

ページ範囲:P.600 - P.607

南アフリカでの心臓移植の発表は,外科医にとつても大きな関心事であつた.これにより外科が切除から移植へというひとつの大きな流れを歩みだしたわけであるが、この問題をどのようにとらえ,将来への展望をもつておられるか,榊原教授と石川教授に話し合つていただいた.

臓器移植の可能性—特に組織適合性を中心に

著者: 岩崎洋治

ページ範囲:P.609 - P.616

はじめに
 1902年Carrelが血管吻合法を考案してから今日までの半世紀間に医療の世界に導入された新技術は目をみはらせるものがある.抗生物質,麻酔法の改良,血液抗凝固剤,さらに化学の発達により材質の改良が可能となつて人工臓器を生みだした.かくして人間のどの部分にもメスを加えられるようになつた外科医が,これらの知識を導入して,次の課題として挑戦したのが臓器移植である.
 1956年Merril等1)によつて報告された一卵性双生児間における腎移植の成功は,臓器移植への道を大きく開いた.

心移植の可能性

著者: 近藤芳夫

ページ範囲:P.617 - P.624

はじめに
 昨年11月,大阪で開かれた第3回日本移植学会総会で"臓器移植の可能性"と題するシンポジウム形式の自由討論会が陣内教授会長,山村教授司会のもとに行なわれ,基礎側の免疫学者,臨床側の移植研究者がそれぞれの立場から腎,肝,心,肺,脾など,大型臓器の移植可能性について忌憚のない意見を交換し合つた.その席で著者は"心移植の可能性"について述べ,「いろいろな角度からの動物実験の成績を綜合して,心臓の移植はむずかしい仕事ではあるが,手技的には可能である.移植後の機能,免疫反応等の生物学的問題は,肝,腎,肺などと比べてむしろその見通しは明るい.臨床的適応という面でも心移植の将来性は大きい.もちろん,これらの問題は今後も研究をつづけられなければならないし,その成果に期待するところは大きいが,とりあえず残された難問題は,長い問生死を代表すると考えられてきた心臓を,donor, recipientの両者について,いかなる時点で,いかなる状態で移植にふみ切るかということであつて,医学的には個体の死という現象に対する再検討が必要であり,さらにはこのような手段に対する社会的認識を深めて,その背景となる法律,倫理,宗教の歩みよりを期待しなければなるまい.」と結論した.
 それから旬日後の12月3日,南アフリカ共和国から同種心移植臨床第1例の成功が報ぜられた.

肺移植の臨床応用の可能性

著者: 辻泰邦 ,   調亟治 ,   富田正雄

ページ範囲:P.625 - P.631

はじめに
 臓器切除による外科的治療の限界が次第に認識されてくるに従つて,臓器移植の臨床応用が近代外科学の重要な課題として研究されるようになつた.肺外科の分野もこの点においては期を一にしている.肺の移植実験は世界の胸部外科医の過去15年間に亘る絶えざる努力によつて,自家ならびに同種肺移植に関する生理・免疫学的な多方面での基礎知識に漸次明らかとなり,加うるに数例の臨床例が行なわれた.たとえ短期間の生着しかえられなかつたとはいえ,今後における臨床応用の進歩に大きな役割を果たしたものといえよう.ここに最近における肺移植の概況と臨床応用にあたつて障害となつている諸問題点について述べる.

肝移植の可能性

著者: 村上文夫

ページ範囲:P.632 - P.641

はじめに
 肝移植の術式は大別して同所性移植(orthotopictransplantation)と異所性移植(heterotopic trans-plantation)との2種に分類される.同所性移植はrecipientの肝を剔除し,そのあとにdonorの肝を移植する方式で,将来の臨床応用を考えると原発性肝癌,肝門部胆道癌など,肝・胆道悪性腫瘍の治療に適すると考えられる.異所性移植は解剖学的位置から離れた部位にdonor肝を移植する方式で,高度の肝機能不全におちいった肝硬変症,電撃性肝炎,先天性胆道閉鎖症などの難治性良性疾患あるいは血友病B (第IX因子欠乏)・低プロトロンビン血症(第II因子欠乏)などの重篤な血液凝固障害の治療に適すると考えられる.
 1956年Goodrich, Welchらはイヌの右下腹部腹腔内に同種肝移植をおこない,はじめて5日以上の生存例を得たが,これが血管吻合による肝移植手術に成功した記念すべき第1例であり,これを契機として肝移植に関する実験的研究はめざましい進展をとげることとなつた.そして10年後の現在では肝移植の臨床例が相ついで報告せられ,ついには移植後5カ月もの長期生存が報ぜられるにいたつたのである.以下現在の時点における肝移植研究の進展状況について概説し,これにもとづいて今後における臨床的肝移植の可能性を論じてみたいと思う.

グラフ

人工弁—各種人工弁ならびにSAM弁の臨床

著者: 新井達太

ページ範囲:P.585 - P.590

 人工弁研究の歴史は,心臓外科の黎明期にあたる1952年頃にさかのぼる.機能の廃絶した心臓の弁膜を何らかの形でこれに代わる機能を有する人工弁をもつて,機能を正常に近づけようとした.この試みはHufnagelのBall弁をもつて研究の門が開かれた,その後,Ball弁の改良,大動脈弁のHomograftを用いた実験と臨床,Leaflet Valveの研究が盛んに行なわれる様になつた.
 1960年から1962年頃にかけては,Leaflet Valveが脚光をあびた.これはTeflonの布を用いたもので,Teflonの布が柔かく,天然の弁に近い型を作ることができ.天然の弁の機能に近かつたからである.しかし,1963年の中期になると,TeflonのLeafletValveに批判の声が出てきた.すなわち,弁の穿孔,弁の萎縮,弁の肥厚による弁機能の脱落である.最も多くLeaflet Valveを使用していたClevelandのE.B.Kayも1964年には多くの欠点を見出して,Ball弁を使用するに至り,TeflonによるLeaflet弁は全く用いられなくなつた.それに代つて脚光をあびて来たのがBall弁である.

外科の焦点

残胃に関する問題点

著者: 上垣恵二 ,   浅見恵司 ,   板垣潔 ,   川口政行 ,   木下智治 ,   額田克海 ,   宮田道夫 ,   近藤正太郎

ページ範囲:P.591 - P.598

はじめに
 外科医のあいだで,最近,残胃に対する関心が急速にたかまつてきた.それは,残胃という新しい環境の下で,本来の胃の形態や機能がどのように修飾されてゆくのかが,検索方法の問題もあつて,十分に解明されておらず,その状態をつくりだす外科としては,放置しておくわけにゆかぬ重大な問題と考えられるからである.過去においても,この問題の解明に多くの努力がはらわれ,着々と効果をあげてきたことに間違いはないけれども,最近の各研究分野における新しい方法の開発はめざましく,それらを応用することによつて,残胃の研究にも新しい局面がひらけ,解明のピッチは急速さをくわえてきたということになる.
 さて,残胃の環境を規制する因子としては,胃運動機能では,蠕動発現の変化,食物の通過・貯溜機構の変化,幽門括約筋不在の影響,内容排出状態の変化,胆汁逆流の影響,胃内floraの変動などがあげられ,また胃液分泌機能にかんしては,阻血性因子の影響,外来神経遮断の影響,gastrin分泌領域切除の影響,壁細胞数減少の影響,内因子減少の影響などがあり,また残胃粘膜にかんしては,残胃胃炎発生の問題がやかましくとりあげられている.これらの因子は独立して存在するものでなく,たがいにからみあつて,影響をおよぼしているし,また,その一つ一つの事項についてすら解明は不十分で,ましてや残胃全体にわたつての様相は複雑きわまりなく,その解明は容易なことではないと考えられる.

論説

Radio-mammography—新しい乳癌診断の試み

著者: 佐藤博 ,   広田和俊 ,   大坪雄三 ,   平島毅 ,   西村明 ,   佐々木守 ,   黄江庭 ,   大山修身 ,   三好弘文 ,   竹島徹 ,   金城和夫

ページ範囲:P.649 - P.654

はじめに
 元来,腫瘍細胞は正常細胞に比べて放射性同位元素をよく摂取することが知られている.1946年,Low-Beerは300〜500μCiの32Pを静脈内に注入したのち,ガイガー・ミューラー管(GM管)を使つて始めて乳癌の診断を試み,その適中率は89%であつたと報告した.以来,諸家の追試と改良法による検討が行なわれてきたが,それらの成績は必ずしも満足すべきものではなく,現在ではこの種の診断法は余りかえりみられなくなりつつある.その最大の理由は,32Pより発するβ線の組織内飛程距離が4mm前後にすぎず,したがつて,GM管を用い乳腺皮膚表面から測定する可能であ4mm以上深在性の乳腺腫瘤の測定は不限りではるためである.多くの乳癌が比較的厚い脂肪層を距てて4mm以上の深部に存在することを考えると,GM管による32Pの診断法は事実上意義がすくないと考えざるをえない.
 私どもは,この点に着目し,GM管の代りにβ線に比較的感受性の高い工業用X線フィルムを使用し,フィルムの黒化の具合から腫瘤部分の32P摂取状況を知ろうと試みた.基礎的検討を経て,昨春以来臨床例を重ねているが,乳癌の補助的診断法としていささかなりとも御参考になれば幸いと存ずるしだいである.

胃良性疾患の手術成績について

著者: 松倉三郎 ,   吉葉昌彦 ,   大塚敏文 ,   石郷岡政彦 ,   藤木弘毅 ,   箱崎敬 ,   山下精彦 ,   塚原英之

ページ範囲:P.655 - P.659

はじめに
 消化性潰瘍,慢性胃炎および胃ポリープを始めとする良性の隆起性病変等のいわゆる胃良性疾患というものを,単にある一人の患者のもつている胃という組織にみられた局所的な病気とのみ考えるのではなくて,これらの病変によりきわめて種々なる影響を蒙むることになるであろう病人の長い一生という立場から考慮する場合には,本症に対するきわめて適切な手術適応については,今日なお,未解決の問題が少なくない現状である.
 この点,胃癌に対する外科的手術が,その絶対的な治療方針となつているのとはいちじるしく異なつている.

頸推鞭打ち損傷の予後と治療

著者: 吉良貞伸

ページ範囲:P.661 - P.668

はじめに
 自動車交通の発達とともに急激に増加したいわゆる頸椎鞭打ち損傷は,学会でも多くの報告がなされ,マスコミの力にものつて今や車を運転するものはもちろんこの疾患名を知らぬものがないほど一般化されてきている.これらの問題に関して各方面から積極的に追求されつつあり,すでに本邦においても数多くの文献がみられる.
 しかし本損傷の臨床症状の決定的把握の困難なことから,いかなる治療法が最も適切なるものか,またはたしてどの程度治療すれば治癒するものか,未だに確立されていない現状である.

トピックス

新しい術前術後管理—血行動態からの観察法

著者: 後藤田圭博

ページ範囲:P.675 - P.675

 一見非常にかけはなれたようにみえる新生児と老年者という生体の間に類似点がみられるのである.これをVascular bedという観点からみると,その関係がかなり理解できる.
 小児,とくに新生児の術後管理にさいしてHyper-volemiaにしてDry sideにおくということがいわれる.従ってIncubatorの中で高湿にして不感蒸泄を抑え水分を制限してPlasma-substrateを輸液することになる.老齢者の手術にさいしても大きな手術侵襲が加わつたとき,Hematocrit値にとくに変化がみられず,出血がみられるわけでもないのに血圧が下り,状態の悪化することがある.このようなとき,経験的に血液やPlasma-substrateを輸液することにより状態の著しい改善がみられることはまれなことではない.

海外だより

人工弁と心移植

著者: 瀬在幸安

ページ範囲:P.676 - P.679

人工弁で高名なOregon大学医学部心臓外科Starr教授のもとに2年余り留学し,心臓血管外科の研究と臨床を行ない,またこの間に彼地でみたアメリカの心臓外科の動向を,気がつくままに記してみたいと思います.

学会印象記

迷切は幽門痙攣を起こすか—欧米学会と遊説旅行から

著者: 白鳥常男

ページ範囲:P.680 - P.683

 昨年8月上旬から10月下旬にかけて,わたくしは,弘前大学大内外科の小野慶一博士と慈恵医大大井外科田中直樹博士と3人で,ストックホルムで開かれた第7回国際医用電子生体工学会,ウイーンでの第22回万国外科学会,およびシカゴでの第53回アメリカ外科学会の3つの学会に出席した.その間欧米の腹部外科,ことに消化性潰瘍および胃の運動病態生理を研究している大学の外科を視察するとともに,幽門保存胃切除術と分節的胃切除術の映画を供覧し,かつ胃の運動病態生理に関するわれわれの成績の紹介を試みた.世界的に知名な学者たちと意見の交換ができ,まことに有意義な旅行であつたが,いま,その概要を思い出すままに述べてみる.

手術器械の豆知識

胃腸縫合器

著者: 島文夫

ページ範囲:P.683 - P.683

 ペッツ氏胃腸縫合器で代表される各種縫合器は,アンドロゾフ氏胃腸吻合器(ソビエト製)まで進歩した.機械的に消化管の縫合ないし吻合が自由に出来ることは,短時間で均一しかも確実な縫合が出来る点が大へん魅力的である.
 胃腸吻合器は,現在まで一般化されていない.しかし胃腸縫合(閉鎖)器は歴史は古い.術式や使用される縫合器の種類によつても異なるが,縫合部切断端から時に出血を見ることがある.このような場合には,止血のため全層縫合を加えているが,これと同様の出血が粘膜側にも起つていないかどうか考えねばならない.器械による縫合ないし吻合は,止血縫合が内容漏出防止と共に,短時聞で出来るのが本来の機能であるべきなのだが,止血の点で不十分なことがあり,最近クリップが3列組まれた縫合器が製作されている.2列のクリップが互いにクリップ間隙を埋めるように縫合しようとするものである.現実にはこの場合にも出血することがあるが少ない.1列でも2列でも,組織の挫滅や,細小血管へのクリップの刺入のチャンスは,特に変らないように思う.縫合器の遮断圧挫力が適当にコントロールされ,胃腸管壁の厚さや,縫合器の圧挫部の幅,クリップの大きさ,位置などの関係は,果して十分吟味されているだろうか.

外国文献

頭蓋内動脈瘤,他

ページ範囲:P.686 - P.689

 手術時期と危険性との関係はHunt(J.Neurosurg.18:34,1962)その他の報告で知られているが,Hunt(J.Neurosurg.28:14,1968)は275例をBotterell(J.Neurosurg 13:1,1956)のgrade Ⅰ (61例),Ⅱ(88例),Ⅲ(79例),Ⅳ(35例),Ⅴ(12例)に程度をわけたが,Ⅱ,Ⅲが最も多い.I,Ⅱは診断つき次第手術,Ⅲは治療でI,Ⅱに改善するのを待つて手術.Ⅳは71%,Ⅴは100%の死亡.入院後治療で手術の時にIとなつた90例では死亡5.5%,Ⅱになつた69例では25%,Ⅲになつた159例では14%の死亡.Ⅰ,Ⅱで非手術で死亡15例(再出血14).intracranial ligationに限るとⅠ1.4%,Ⅱ22%,Ⅲ40%,Ⅳ43%(全平均16%)になる.手術をおくらせたⅢ(出血でそのまま手術すると上述のように40%の死亡)では,この待機間に再出血は多くないが,手術しないと(23例あり)16例死,不具廃疾7となり,(再出血よりも脳硬塞が主な死因),Ⅱ度に改善すると35%,I度に改善すれば20%の死亡だが,Ⅲのままで改善しなかつた少数例でも11%の死亡であつた.good conditionは早く,ⅢはⅡ,Ⅰに改善させて手術せよということになる.

臨床メモ

体外循環と意識障害

著者: 原宏

ページ範囲:P.690 - P.690

 体外循環後の意識障害は無尿,乏尿とならんでもつとも重要な合併症であり,その成因,治療とも現在なお未解決の問題が多い.
 成因を大きくわければ,a)術後心機能低下に基づく低搏出量症候群〜体外循環の低流量が関係するもの,b)空気,脂肪など各種の塞栓子が関係するもの,c)腎機能不全,d)代謝障害〜酸塩基平衡失調などである.

手術手技

人工肛門のつくり方

著者: 鍋谷欣市

ページ範囲:P.691 - P.696

はじめに
 人間にとつて食物を摂取する口が絶対に必要であることと同様に,その摂取した食物を消化吸収したあとの不要物の一部,すなわち糞便を排泄する点において,肛門は絶対に欠くべからざるものであり,しかもその機能を十分に果たすことが望まれる.排便のできない疾患,たとえば先天性鎖肛,腸閉塞症,直腸癌による狭窄等の場合,そのままでは致命的となるのでまずできるだけ早期に排便を可能ならしめる処置をとらねばならない.かかる場合の処置としてその原因を除去し根治的手術を行なうことはもちろん大切であるが,救急的処置としてはしばしば人工肛門造設術が行なわれる.すなわち狭窄部の口側において,糞便を排泄できるような腸管の開口部を作成するのであるが,一般に,腸管壁の一部を腹壁に固定し糞便を排除させるものは糞瘻Kotfistelといわれ,したがつて一部の糞便は肛門側にも搬送されるが,これにたいして腸管の全内腔が体外に開口するように固定するものは人工肛門Künstlicher Afterといわれ,人工肛門以下の肛門側腸管には糞便が搬送されないものである.
 このような人工肛門の役割によつて,人工肛門造設術は,実に多くの疾患に応用されている.したがつて今までにも幾多の方法が試みられているし,実際の症例に応じていろいろ工夫されるべきものと考える.

カンファレンス

下腹部悪性新生物・同腹腔内転移・両側腸骨静脈血栓症

著者: 小島憲 ,   林豁 ,   大橋成一 ,   ,   ,   ,   高木顕 ,   小沢啓邦 ,   上野幸久 ,   大出良平 ,   渡辺觔 ,   太田怜 ,   森永武志 ,   藤田五郎 ,   長瀬行之 ,   吉崎正 ,   佐久間徹 ,   中村哲也 ,   都丸昌明 ,   内藤誠

ページ範囲:P.699 - P.707

高木(司会) 今日,われわれ自衛隊中央病院と,在日米軍病院とで,日米合同のCPCを催します.検討会をはじめるにあたり,吉崎医官より,症例の説明をして頂きます.

症例

嚢胞性大動脈中膜壊死を伴つた肺動脈狭窄症の1例

著者: 陶棣土 ,   佐々木真爾 ,   陶易王 ,   寺島重信 ,   川嶋淳 ,   石橋武彦 ,   横山成樹 ,   安江満悟

ページ範囲:P.709 - P.711

はじめに
 結合織または支持組織の脆弱がある場合,たとえば大動脈中膜壊死を伴う心奇形の症例に,開心術を行なつた報告例はきわめて少ないが,危険を伴うことは当然考えられ,特別な注意を払わねばならない.われわれは最近,肺動脈狭窄症の診断で開心術を施行し,大血管操作時に血管が破綻し,大出血をきたし死亡せしめた症例に遭遇した.病理学的検索で大動脈中膜壊死,弾力線維の断裂等を発見し,臨床的所見と併せ不定型のMarfan症候群と考えたので,ここにその大要を報告し,反省の資料にしたいと考える.

動物性食餌による閉塞性イレウスについて

著者: 小金沢滋

ページ範囲:P.713 - P.715

はじめに
 食餌による閉塞性イレウスは決して稀な疾患ではなく,すでに内外の文献にその原因となつた多くの食餌の種類や種々の素因性因子などが報告されている.
 本邦では,植物性線維腫とくに柿胃石や昆布による本症がしばしば報告されているが,動物性食餌による本症の報告はきわめて少ない.

内頸動脈サイフォン部狭窄を示した視交叉蜘網膜炎の1例

著者: 斉藤義一

ページ範囲:P.716 - P.717

はじめに
 内頸動脈閉塞についてはHunt1)(1914)がすでに今日におけるごとき症状の解明を行なつており,Moniz2)(1937)の脳血管撮影による確認以来生前の診断確実になり,本邦における症例報告の数も増加した.
 Fisher3)(1954)は内頸動脈の重大な閉塞性障害はふつう頭蓋外にあり頭蓋内のものより多いと述べ,原因に関しても種々の症例が報じられているが,動脈硬化性のものが大多数を占めることは周知のごとくである.しかしながら原因不明のいわゆる特発性内頸動閉塞症も清水ら6)により報じられている.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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