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文献詳細

雑誌文献

臨床外科23巻5号

1968年05月発行

特集 臓器移植の可能性

心移植の可能性

著者: 近藤芳夫1

所属機関: 1東京大学分院外科学教室

ページ範囲:P.617 - P.624

文献概要

はじめに
 昨年11月,大阪で開かれた第3回日本移植学会総会で"臓器移植の可能性"と題するシンポジウム形式の自由討論会が陣内教授会長,山村教授司会のもとに行なわれ,基礎側の免疫学者,臨床側の移植研究者がそれぞれの立場から腎,肝,心,肺,脾など,大型臓器の移植可能性について忌憚のない意見を交換し合つた.その席で著者は"心移植の可能性"について述べ,「いろいろな角度からの動物実験の成績を綜合して,心臓の移植はむずかしい仕事ではあるが,手技的には可能である.移植後の機能,免疫反応等の生物学的問題は,肝,腎,肺などと比べてむしろその見通しは明るい.臨床的適応という面でも心移植の将来性は大きい.もちろん,これらの問題は今後も研究をつづけられなければならないし,その成果に期待するところは大きいが,とりあえず残された難問題は,長い問生死を代表すると考えられてきた心臓を,donor, recipientの両者について,いかなる時点で,いかなる状態で移植にふみ切るかということであつて,医学的には個体の死という現象に対する再検討が必要であり,さらにはこのような手段に対する社会的認識を深めて,その背景となる法律,倫理,宗教の歩みよりを期待しなければなるまい.」と結論した.
 それから旬日後の12月3日,南アフリカ共和国から同種心移植臨床第1例の成功が報ぜられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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