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文献詳細

雑誌文献

臨床外科23巻5号

1968年05月発行

文献概要

特集 臓器移植の可能性

肝移植の可能性

著者: 村上文夫1

所属機関: 1大阪大学医学部陣内外科教室

ページ範囲:P.632 - P.641

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はじめに
 肝移植の術式は大別して同所性移植(orthotopictransplantation)と異所性移植(heterotopic trans-plantation)との2種に分類される.同所性移植はrecipientの肝を剔除し,そのあとにdonorの肝を移植する方式で,将来の臨床応用を考えると原発性肝癌,肝門部胆道癌など,肝・胆道悪性腫瘍の治療に適すると考えられる.異所性移植は解剖学的位置から離れた部位にdonor肝を移植する方式で,高度の肝機能不全におちいった肝硬変症,電撃性肝炎,先天性胆道閉鎖症などの難治性良性疾患あるいは血友病B (第IX因子欠乏)・低プロトロンビン血症(第II因子欠乏)などの重篤な血液凝固障害の治療に適すると考えられる.
 1956年Goodrich, Welchらはイヌの右下腹部腹腔内に同種肝移植をおこない,はじめて5日以上の生存例を得たが,これが血管吻合による肝移植手術に成功した記念すべき第1例であり,これを契機として肝移植に関する実験的研究はめざましい進展をとげることとなつた.そして10年後の現在では肝移植の臨床例が相ついで報告せられ,ついには移植後5カ月もの長期生存が報ぜられるにいたつたのである.以下現在の時点における肝移植研究の進展状況について概説し,これにもとづいて今後における臨床的肝移植の可能性を論じてみたいと思う.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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