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特集 木本誠二教授退官記念特集
移植の基礎的問題
著者: 石橋幸雄1
所属機関: 1東京大学医科学研究所外科
ページ範囲:P.793 - P.799
文献購入ページに移動はじめに
過去10年間に腎移植の領域では,実にすばらしい進歩がもたらされた.この進歩のなかには,もちろん,新免疫抑制剤の開発やその使用法の工夫改良などもふくまれる.しかし,腎移植の失敗の多くは,donorとrecipientの間の遺伝的な差異と,それにつながる拒絶反応に帰せられることは多くの外科医の認めているところである.臓器移植が一応軌道に乗つた今日においては,ただそこに患者があり,そこにdonorがあるというだけで慢然と症例を重ねることは大した意義を持つていない.この辺でじつくり腰をすえて,基礎的研究を充実させることがなければ,さらに一段の飛躍は期しがたいと思われる.現状では,graftがいかなるプロセスをふんで落ちるかというもつとも根本的な問題ですらよく分つていないのである.その意味で,ここでは,移植免疫における血清抗体と細胞性抗体,組織適合性に関する問題の2つをとりあげてみた.
過去10年間に腎移植の領域では,実にすばらしい進歩がもたらされた.この進歩のなかには,もちろん,新免疫抑制剤の開発やその使用法の工夫改良などもふくまれる.しかし,腎移植の失敗の多くは,donorとrecipientの間の遺伝的な差異と,それにつながる拒絶反応に帰せられることは多くの外科医の認めているところである.臓器移植が一応軌道に乗つた今日においては,ただそこに患者があり,そこにdonorがあるというだけで慢然と症例を重ねることは大した意義を持つていない.この辺でじつくり腰をすえて,基礎的研究を充実させることがなければ,さらに一段の飛躍は期しがたいと思われる.現状では,graftがいかなるプロセスをふんで落ちるかというもつとも根本的な問題ですらよく分つていないのである.その意味で,ここでは,移植免疫における血清抗体と細胞性抗体,組織適合性に関する問題の2つをとりあげてみた.
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