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特集 膵・胆・肝の外科
腎腫瘍と誤まられた肝腫瘍の1例
著者: 北川司良1 寺村幸雄1 自見弘之1
所属機関: 1京都府立医科大学第2外科学教室
ページ範囲:P.1221 - P.1224
文献購入ページに移動わが国では原発性肝癌の頻度は,南アフリカ,アジア諸国とともに欧米諸国とくらべてきわめて高く,剖検による統計では,宮地らによると,本邦では36380例中1.75%あり,山岡らは11700例中1.3%であるとしている.このようにして,発生頻度が高いにもかかわらず,従来肝悪性腫瘍の早期手術は,外科における死角とされるくらい,原発性肝癌の診断はきわめて困難であつた.
しかし,最近,臨床医学の発展とともに,肝腫瘍の診断にも肝シンチグラム,肝生検,脈管造影,腹腔鏡などいろいろと診断技術上の進歩がみられ,次第に,早期発見や早期治療の可能性が多くなつてきている.しかし,肝癌診断の第一歩は,不特定の症状を呈する腹部疾患をみた時に,まず肝腫瘍を考えることにあるとされており,とくに上腹部腫瘤の存在は,最も大きな診断の根拠といわなければならない.しかし,こうした場合にも胃,膵,脾,横行結腸などの腫瘍と鑑別することは必ずしも容易でなく,開腹して初めて腫瘍の本態が判明することも稀ではない.最近,われわれは,腎腫瘍と誤まつて開腹手術が行なわれた肝腫瘍に遭遇し,直らに手術方針を変更して,右肝葉切除を行なつて良好な結果を得た症例を経験したので,その概略を報告する.
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