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文献詳細

雑誌文献

臨床外科24巻12号

1969年12月発行

文献概要

特集 全身状態とSurgical Risk

甲状腺機能亢進症の併存—とくに甲状腺クリーゼについて

著者: 降旗力男1 牧内正夫1 宮崎忠昭1

所属機関: 1信州大学医学部丸田外科教室

ページ範囲:P.1651 - P.1657

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はじめに
 甲状腺機能亢進症の併存がsurgical riskを高める理由の一つは,手術という侵襲によつて,甲状腺クリーゼ(thyroid crisis or storm,以下クリーゼという)をひきおこす危険性があることであろう.周知のごとく,クリーゼは,かつては甲状腺機能亢進症の手術後に発生し,手術死の過半数をしめていた時代もあつたが1)2)3),Plummerらの微量ヨードの投与4)5)6)や,Astwood7)のthiou-racil系薬剤の投与などによつて術前処置が進歩したので,術後クリーゼによる死亡は著しく減少し,現在では甲状腺機能亢進症の手術は他の手術とほとんど変りなく行なわれている8)9)10).しかし,クリーゼは甲状腺機能亢進症の甲状腺腫亜全切除後の他に,別の誘因によつて発生することがある.たとえば,甲状腺機能亢進症の治療が適切に行なわれていないときには,胆石症,虫垂炎,イレウス,抜歯,あるいは帝王切開などの手術が誘因となつて,クリーゼの発生することが報告されている3)11)12)13)14)
 甲状腺機能亢進症の合併があらかじめ診断され,その管理が適当に行なわれておれば,本症の合併は外科臨床上ほとんど問題にならない.しかし本症の合併に気づかなかつたり,あるいは外傷や緊急手術など止むを得ない事情のもとでは,クリーゼの発生する危険性がある.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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