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文献詳細

雑誌文献

臨床外科24巻2号

1969年02月発行

文献概要

特集 乳腺疾患—その診療の進歩

超音波断層写真法による乳癌の診断

著者: 高橋勇1 高田貞夫1 井上善弘1 岩淵正之1 林和雄1 川島健吉1 伊藤久寿2

所属機関: 1東京医科歯科大学第一外科学教室 2東京医科歯科大学放射線医学教室

ページ範囲:P.205 - P.211

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はじめに
 現今ほど,癌に対する恐怖と関心がたかまつている時代はなく,あるゆる分野で,癌への対策が,日夜努力されている.とくに乳癌は他の癌に比べて,予後が比較的良いといわれながらも,乳癌全体の予後は決して楽観し得ない現状であり,根治手術後の5年生存率が60%前後であるということは,その重大さを改めて認識させるに十分な数値といわざるを得ない.しかも,多くの人々の努力にも拘らず,近年,この乳癌全体の予後が著るしく改善されているとはいいきれないのが実情であろう.歴史を劃するような,癌への特効薬が開発されるならば,問題は比較的容易であるけれども,少なくとも現状では幾多の研究者の努力をまつほかはない.このような現状であれば,癌制圧のため,現在最善のものとしてなし得ることは,すべての癌にあてはまる合言葉として叫ばれている「早期発見,早期治療」に努力を傾倒することであろう.
 この観点からすれば,乳癌は表在性臓器に発生する癌であり,他の臓器の癌に比べて,問題解決のための最短距離にあるともいえる.事実,往時に比べて,患者自身の乳腺内腫瘤発見時の大きさが,次第に小さなものになりつつある傾向を示している.予後を左右する因子は幾つか挙げられるけれども,結局は,小さな腫瘤のうちに発見することが最も重要であり,世人への啓蒙は,いくら行なつてもやりすぎることはないのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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