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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科24巻3号

1969年03月発行

雑誌目次

特集 消化器疾患の新しい診断法

経皮的経肝性胆道造影法

著者: 佐藤寿雄 ,   斉藤洋一 ,   武内脩

ページ範囲:P.303 - P.315

はじめに
 最初に胆道を穿刺し,胆道造影を行なつたのは,Burkhard & Müller(1921年)1)で経皮的に胆嚢を穿刺し胆道造影がえられた3例を報告している.その後Lee2)(1942年),Royer & Solari3)(1947年)も腹腔鏡下に胆嚢を直接穿刺し胆道造影を行なつている.しかし直接肝臓を穿刺し胆道造影を行なつたのは,Huard & Doxuan-Hop4)であり,1937年に胆外胆道閉塞例でLipiodolを肝内に注入し,拡張した胆管を撮影し得た2例を報告している.この方法はその後しばらく用いられていなかつたが1952年Carter & Saypo15),1953年Nurick6)らが再びとりあげてから胆道系疾患の診断分野において新らたな脚光をあびるようになってきた.
 本法に関する最近の報告も数多く7)-11),またわが国においても多くの秀れた業績12)13)がみられるようになつた.

選択的腹腔動脈撮影—肝,膵疾患を対象として

著者: 本庄一夫 ,   鈴木敞

ページ範囲:P.317 - P.326

はじめに
 肝癌や膵癌の遠隔成績は,いまなお憂慮すべき現状下にあるが,それは,ひとつには,有用な診断技法がまだ開拓されていないことに起因している.
 選択的腹腔動脈撮影は,Baレ線透視や,内視鏡,細胞診などの射程外にあるこれら実質性臓器疾患に対する新しい診断法として,ひろくとり入れられるにいたつた.本教室でもいちはやく本法を導入し,以来約300例の上腹部疾患患者に造影を施行してきた.その結果,少数ではあるが,確かに一部の症例には,より早期に,適切な処置を加える機会を与えられた.しかし,それ以上に,本法の応用により,単に診断面のみならず,血流動態の解明や,治療法の選択などに関して貴重な知見を得ることも可能となつた.

門脈造影

著者: 井口潔 ,   小林迪夫 ,   朔元則

ページ範囲:P.327 - P.334

はじめに
 肝脾疾患の診断にあたり,レントゲンによる検索の重要なことは今さらいうまでもない事であるが,なかでも門脈圧亢進症の診断と治療にあたつては,門脈本幹の閉塞の有無,肝内門脈枝の状態,あるいは肝外副血行路の発現様式等を詳細に検討する必要があり,門脈造影法は必要欠くべからざる検査法となっている.従つて,Moore1)が1951年,上腸間膜静脈の一枝より,次いで,Abeatici&Campi2)が経脾的に門脈造影を行なうことに成功して以来,門脈造影法は門脈圧亢進症の診断法として広く用いられ,その有効なことが認められている.
 われわれも,門脈圧亢進症の手術に際し,術中開腹下に,腸間膜静脈ならびに脾臓より造影剤を同時に注入する経脾経腸問膜静脈同時的門脈造影法を行なっている.ここにわれわれの門脈造影施行例200例について,検討を加え,その外科治療上,留意すべき所見について申し述べる.

胃疾患に対する内視鏡検査および狙撃細胞診とPunch Biopsy—早期胃癌を中心に

著者: 城所仂 ,   竹添和英 ,   相馬智 ,   鵜川四郎 ,   瀬戸律治 ,   城島嘉昭 ,   後藤一博 ,   山川達郎 ,   谷合明 ,   片柳照雄 ,   山之内哲雄 ,   中西宏行 ,   広瀬惇一郎 ,   浅倉礼治

ページ範囲:P.335 - P.344

はじめに
 X線検査,内視鏡検査,細胞診,生検の診断技術の進歩にともない,胃癌ことに早期胃癌の発見頻度は年々増加し,各施設からも20〜36%の高い成績が報告されている1)2)3).当教室でも全切除胃癌総数に対する早期胃癌の頻度は平均でみると17.2%にすぎないが,年度別にその推移をみると年々増加し,本年度は10月末ですでに35%にも達している(第1表).
 このような状況下で,早期胃癌の診断は,より微細なもの,またIIb病変のような肉眼的にその形態の把握が容易でないものが問題にされるようになつてきた4).そこで早期胃癌の診断から外科治療にいたる迄の一連の過程で,内視鏡,細胞診,生検が如何に評価されるべきかを外科的な立場から検討してみることは必要なことといえよう.すなわち,①癌であることの質的診断,②病変の深達度の診断,③噴門側にむかつての粘膜面の癌浸潤の範囲,これらの項目は,癌の手術に際して極めて重要な条件であるが,これらが術前にどの程度判定出来るかは,上記の検査に課せられた重要な課題であろう.このような観点から教室の早期胃癌例を中心に,内視鏡,細胞診,生検の成績を検討してみたいと思う.

結腸疾患に対するFiberscopyおよび腸Biopsy

著者: 松永藤雄 ,   田島強 ,   宇野千春

ページ範囲:P.349 - P.357

はじめに
 最近の上部消化管診断学の進歩は非常にすばらしいものであるが,これに反して,下部消化管診断学は,一般になおざりにされていることが多い.しかし,下部消化管診断は,上部消化管に比して多くの制約があるとしても,その精密な診断を要することは論ずるまでもない,このためには,X線検査,内視鏡検査および病理組織学的検査の三者が有機的に結合されることが望ましい.大腸のX線検査については,すでに詳細に記述してきており1)2),最近に至つてようやく一部の一般病院でもすぐれた検査がおこなわれてきつつある.しかし,内視鏡検査については,一,二の例外を除けば,未だ直腸S状結腸鏡を用いて,たかだか肛門から25〜30cm迄を観察しているにすぎない.これでは,長い大腸のほんの一部しか観察できず,病巣がこの部に多いことを考慮しても,全く不十分であるといわなければならない.
 われわれは,これを解決するために,1957年にSigmoidocameraを考案し,S状結腸のみならず,下行結腸,横行結腸,稀には回盲部迄の観察を大腸疾患の日常検査としておこなつており,その成果を多くの機会に報告してきた3-12).しかし,残念ながら,Sigmoidocameraは長い腸管へ盲目挿入して,盲目撮影をおこなうため,ある程度の技術を必要とし,胃内視鏡のように広く一般におこなわれる迄にはいたつていない.

膵,肝胆道疾患ならびにmalabsorptionに対するpancreozymin-secretin試験

著者: 瀬川安雄 ,   竹森清和 ,   山川至 ,   竹内靖 ,   木谷栄一

ページ範囲:P.359 - P.371

はじめに
 膵液を採取してそのamylase, lipase, trypsinの酵素活性を測定し,膵疾患の診断の資としようとの試みは古くから行なわれていたようである1).1902年Bayliss&Stirling2)によつて膵外分泌の体液性調節機転が明確に証明され,同時にsecretinが発見されるに及んで,一定量のsecretinを経静脈的に投与して膵を刺激し,これに対する膵外分泌の反応を酵素活性をもつて測定する方法が数多く試みられ,さらにpancreozyminが比較的純粋に分離されてからは,secretin, pancreozyminの両者を併用して膵分泌を刺激し,十二指腸液をsondeをもつて採取して酵素活性その他の因子を測定する膵外分泌機能検査法が確立されてきた.
 Baylissが最初にとりだしたsecretinは,いわゆる粗secretinと呼ばれるものであつて,本来のsecretinのほかにpancreozymin, hepatocrinin,cholocystokinin, enterokininが共存していたが3),その後次第に精製されて今日ではほぼ純粋なsecretinが得られている.このsecretinは膵導管の主としてSchaltstückの導管上皮に作用して,水と重炭酸塩の分泌を亢進させる.

胆道系疾患に対する超音波診断—とくに超音波断層像記録法による胆石症ならびに絣様胆嚢の診断について

著者: 三樹勝 ,   藤島義一 ,   谷口恒義 ,   市川豊 ,   寺岡資郎 ,   矢部三郎

ページ範囲:P.373 - P.388

はじめに
 現在用いられている超音波診断法の多くはパルス反射法によるものであるが,反射エコーを記録紙に描写するということは,パルス波の生体内における伝播速度が大体1500m/sという高速である為に従来は機構上不可能に近いとされていた.3年前われわれは初めてこれを可能ならしめる装置を研究開発することが出来,これを超音波記録診断装置スーパーソノグラム(Supersonogram)と名付けたのである.本装置(第1図)ならびにその原理(第2図)についてはすでに報告したが1),要するに生体の超音波断層像を記録紙上に濃淡像として描写し得ることを特色としている.そこでこの装置を用いた超音波診断法の一つとして,胆道系疾患とくに胆石症の診断を取り上げ,これについて種々基礎的,臨床的研究を重ねた結果,送受別transducerによる自然呼吸下のスキャンニング法を創案し,今日教室ではroutineの検査法の一つとして用いられるほどとなつた.これらの方法ならびに成績についてもすでに報告しているが1)2),その後もさらに一段の工夫改良を加えて記録像の鮮明化に努めているので,この点をも加味した最近の諸成績を述べると共に,本法を施行中偶然のことから従来はなはだ困難とされていた絣様胆嚢(strawberry gallbladder)の術前診断の可能性を見出し得たので,このことにも触れたいと思う.

シンチグラムによる消化器疾患の診断

著者: 菅原克彦 ,   大野博通 ,   柏井昭良 ,   黒田慧 ,   小暮洋暉 ,   白倉徹哉 ,   冨山次郎 ,   森岡恭彦

ページ範囲:P.389 - P.399

はじめに
 腹腔内の限局性疾患の補助診断には,従来の人工気腹X線写真,腹腔鏡,超音波診断法などの特殊診断手技のほかに,動脈造影法,臓器スキャニングが普及しかなり高い精度の情報を提供するようになつた.これらの診断手技を駆使することによつて,腹腔内腫瘍性病変に対して起源不明の腹部腫瘍として開腹時所見に基づいて新たに手術方針をたてなおすことはきわめて少なくなり,術前に十分かつ正確な治療指針がえられている.
 本稿では,これら診断法のうち肝シンチグラムに焦点をおいて,肝腫瘍外科の臨床の立場から,教室例を中心に若干の補足的実験を加味してのべ,併せて膵シンチグラムなどにもふれる.

グラフ

食道および噴門部のX線二重造影像

著者: 小林誠一郎 ,   羽生富士夫 ,   山田明義 ,   鈴木博孝 ,   野本高志

ページ範囲:P.295 - P.302

 われわれ外科医は,日常数葉のX線写真から手術適応(もちろん局所的適応であるが),術式の選定それに伴う危険性,ひいては予後に至るまで慎重に判断する必要がある.したがって消化管のX線診断に際しては,病変の発見はもちろんのことであるが,発見された病変をいかに処置するかの判断を的確に下し得るように描写することが重要である.病変の性状,範囲を知る上には二重造影による写真が極めて有用であることは衆知の如くである.胃の二重造影に関しては.技術およびその利点.欠点等にっいて,白壁教授をはじめとする諸賢の業蹟があり、今更述べるまでもないが,われわれはここで,外科的立場より見たX線診断の上での二重造影の必要性について,食道および噴門部を中心として言及してみたい.

臨床メモ

下肢の急性動脈閉塞症の治療

著者: 八木博司

ページ範囲:P.371 - P.371

 下肢の急性動脈閉塞症は救急処置を必要とする疾患の1つであり,弁膜症・心筋硬塞等の病歴をもつたpoor riskの症例に多く,適切な治療の時期を失すれば患肢の切断を余儀なくされ,時に生命の危険にさらされる.
 その初発症状は典型的な場合,突発的に生じ,血管閉塞部の激痛と閉塞部以下に阻血症状を呈するものであり,診断はさして困難ではないが,潜伏性の場合には,患者が自覚しないうちに経過する場合も少なくないといわれているので,診断は極めて困難である.従つて,急性動脈閉塞症をきたす可能性のある症例の場合には,下肢血管の搏動の有無を予め知つておく事が重要な事のように思われる.

外国文献

頭部外傷後の外水頭症

ページ範囲:P.411 - P.411

 CSF路閉塞があれば外水頭症(ext.hydro.)か発生するわけだが,クモ膜下に出血あることか多い.さてLewin(Brit.J.Surg.55:747.1968)は重症頭部損傷59例に気脳法で全般的な脳室拡張をみとめ,うち,39例にはCSF通路の閉塞を見出しえず,残る20例にbasal cisternに閉塞が証明された.20例の中で8例は脳圧亢進症状あり,12例はなかつた.気脳法は意識障害の残る急性期,1ヵ月後までserialに行ない,進行状況をうかがつた.di Chiro(Neurology 14:185,1964)らはRISAをCSFに注入,scintillationで24〜48時間追跡してCSF通路障害を証明する方法を用い,Bannister(Lancet2:1014,1967),Brocklehurst(J.Neur.Neurosurg.Psych.31:52,1968)が追試している.LewinもRISA法をこころみ気脳法と同じ結果を得ている.外傷後の交通性hydroではCSF圧正常でdementiaを呈する症例がある.Lewinの進行性脳室拡張では脳室圧と,その作用する脳面との間にPasca1法則に従うreciprocal作用があるだろう.CSF圧正常ということは必ずしもhydro進行を否定するものではない.したがつて気脳法でたしかめ脳室心房シャント等の療法が考えらるべきである.

患者と私

医は衣なり

著者: 安藤正孝

ページ範囲:P.412 - P.413

整形外科医
 私の専攻は整形外科であるが,かつてある骨折の患者さんを診療している間に,だんだん親しくななつて,ある日こんな質問を受けた.「先生私共は怪我をしたら外科に行くものと思つていましたが,整形外科には骨折の他,いろいろの患者が来るのですね.整形外科は鼻を高くしたり,二重眼瞼にしたりするところかと思つていました.一体整形外科ではどんな病気を扱つておられるのですか」.私は次のように答えた.「整形外科では,姿勢および運動器の変形と機能障害を取扱つています.つまり,骨骼,関節系統だけでなく,神経,筋系統の広汎な領域にわたつており,また,災害外科と切つても切れない関係にあつて,怪我をした時は,頭部,胸部,腹部等の場合以外は大低整形外科に来て頂けばよいわけです.その他,先天性の異常,義肢装具についての相談等も受けますし,肢体不自由者救護事業や,運動医学についても勉強すべきだと考えています.ちなみに,二重眼瞼にしたり,隆鼻術をしたりするのは,形成外科という分野ですが,よく混同されるのですよ」.現在では整形外科に対する一般の認識は高まつて来たが,なお未だ美容成形と混同される場合が少なくない.

論説

ムチうち症二,三の知見

著者: 渋沢喜守雄 ,   小川喜一 ,   大田早苗

ページ範囲:P.419 - P.426

はしがき
 「ムチうち症」,「むち打ち損傷」,「いわゆる鞭打ち型損傷」などという表現は,諸学会・諸学者の最も嫌い軽蔑するところであり,いやしくも研究者の会合において,かかる表現を行なえば良識さえ疑われるかの傾向がある.アカデミシヤン,ペダンティストは「頸部症候群」,「頸部捻挫」,「頸肩腕症候群」等々の表現法を用いて自己満足をおぼえている.
 われわれは,昭和38年からこの方面の仕事にボツボツ取りかかつたにすぎないが,その頭初から今日まで一貫して,本症は決して,「頸部症候群」云々で十分に表現しうる傷害ではないことを,科学技術庁,厚生省からの指定研究において,常に強調してきた.ここに,本症が「頸部症候群」云々では不可なる知見を報じ,日本津々浦々女子供までがつかい,そして恐れている「ムチうち症」という表現の方がはるかに優つていることを強調したい.「ムチうち」とは何というユーモラスな,そして多少のアイロニーをふくめた,全身傷を表白するにふさわしい語であろう.

講座

ショックの診断と治療—〈1〉Hypovolemic Shock

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.428 - P.437

はじめに
 これからのShockの診断と治療は,定量化された一定の形式に従つて行なわなければ治療成績の向上は望めない.その意味で,まず第1表を見ていただきたい.大事なことは,表中の事項を1つ残さずチェックし,連続的に記録することである.チェック出来ない項目が1つでもあれば,その1つを求めるべくあらゆる努力を払わねばならない.臨床経験による直感とad-libも大切であるが,1つのerrorが致命的とさえなるShockの治療においては,Trial and Errorの繰返しは絶対に許されるべきではない.
 Shockという言葉の定義はむずかしい.Ana-phylaxy,熱傷,脱水,感染,外傷,出血,などと,互に何の関連性もない広範囲の原因で生じる病態をShockという唯一つの診断名で表現しようとするためである.ここでは仮りに,Shockとは原因の如何を問わず,重要臓器の循環動態の失調によつて生じる"死の前兆"のようなものであつて,生活機能の極度に低下した状態の臨床的な呼び名(合詞)であるとしておこう.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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