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特集 良性腫瘍
肝,胆道系の良性腫瘍
著者: 菅原克彦1 大野博通1 黒田慧1 柏井昭良1 小暮洋暉1 白倉徹哉1 森岡恭彦1 田島芳雄1
所属機関: 1東京大学医学部第一外科教室
ページ範囲:P.1095 - P.1106
文献購入ページに移動良性腫瘍を有する肝を切除することは多くの外科医の試みるところであるが,病理学者の賛同は必ずしも得られていない.一般に良性腫瘍は発生部位によつても異なるが,多少とも周囲臓器組織を圧迫したり,破綻,出血などの合併症の発来,悪性化の危惧などを理由に摘出されることが多く,肝,胆道系の良性腫瘍についてもほぼ同様の傾向にあるといえる.放置した際の予後については症例も少なく,剖検時の統計で肝切除の可否について推論することも必ずしも妥当ではない.肝,胆道系の良性腫瘍はその発生母地,分類についてなお,多くの議論があり,特殊例があり,組織標本でも断定的に納得のできる診断を下し得ない症例もある.
肝,胆道系の悪性腫瘍は診断,手技の開発により,現在では多くの場合その質,量の診定まで可能となつている.大きい良性腫瘍でも良性であることは診断し得るが,さらに腫瘍の性質まで診断することは困難で,推測に止まらざるを得ないことが多い.臨床上問題になるのは肝では血管腫,非寄生虫性肝嚢包,過誤腫,胆道系では乳頭腫などである.真性腫瘍ではないが,臨床的意義が大きいので寄生虫性嚢包についてもふれる.
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