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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科24巻9号

1969年09月発行

雑誌目次

特集 緊急手術の手技・Ⅰ

急性頭蓋内血腫

著者: 中村紀夫

ページ範囲:P.1203 - P.1210

はじめに
 急性頭蓋内血腫の開頭手術は,救急手術のうちでもはなばなしいものの一つである.これを見逃せば患者の生命はいわば絶体絶命と思われるが,開頭術によつて血腫を取り除いて引続き適切に治療すれば,その約7割を救うことができるのである.
 この手術成績を向上させる要因としては,幾つかのものが挙げられる.

脳嵌入

著者: 石森彰次

ページ範囲:P.1211 - P.1215

はじめに
 脳嵌入,すなわちherniationが脳神経外科領域において,患者の生命を左右する重大な病的状態であることは,広く知られているところである1)2)4).本論文において,脳嵌入をきたす機序,それにより惹起される神経症状等の詳細についての記載は,紙面の都合上割愛せねばならない.よつて脳嵌入の種類,およびこれを惹起する原因を若干のべ,次いでこのさい行われねばならない救急手術および処置についてのべる.

気管切開

著者: 石原昭

ページ範囲:P.1217 - P.1221

はじめに
 古来欧米では,一刀の下に気管切開のできない者は小児科医にあらず,とジフテリアによる喉頭部閉塞に対する気管切開に腕を競つた時代があつた様である,しかし次第に医療の発達,特に化学療法の発現により,この種の気管切開は少なくなつてきた.現在では容易に無菌的に安全に何時でも気管切開ができる状況にある為に,ややもすれば,不適当な症例にも気管切開を乱用する傾向がある.また一方では簡単な道具で気管切開ができるのだということを,すつかり忘れて終つた様な一面もある.著者はIntensive care unit(ICU)にて多くの呼吸不全患者を取扱つている経験からその概要を述べてみたい.
 急性呼吸不全の患者の上気道確保は経口(または経鼻)気管内挿管と,気管切開の二者に分れるが,短時間のreliefには経口気管内挿管が有利と考えている.しかし,それぞれに長短所あり,これを症例の病状とにらみ合わせて選択することが大切である.

急性心タンポナーデ

著者: 川島康生

ページ範囲:P.1222 - P.1225

はじめに
 急性心タンポナーデは主として開放性心外傷によつて発生するものであるが,鈍性外力による非開放性外傷によつて生ずる場合もある.また心臓カテーテルの穿孔1)2)によるものも報告されている.これ等はいずれも心嚢内に心臓からの血液が噴出し心臓の拡張を妨げてvenous returnを障害し心拍出量の減少を招来するものである.このように急性心タンポナーデのほとんど全てはhe-mopericardiumに由来するものであるが,稀にはpericaditisのためにpyo-or hydro-pericardiumを起し,あるいは外傷によつて心膜と肺とが同時に損傷されpneumo-pericardiumをきたして急激に心タンポナーデをきたす場合もある.本文においては主としてhemopericardiumによるものについて述べ,特殊なものについては略述するに留めたい.

緊張性気胸

著者: 早田義博 ,   萩原勁 ,   吉岡孝明

ページ範囲:P.1227 - P.1230

 気胸とは胸膜腔内に空気が貯溜し,肺の虚脱せる状態をいうが,その原因により,a)外傷性気胸,b)自然気胸とに分けられる.前者はもちろん,外傷が原因となるものであり,後者は認められるような外傷がなくて,肺胸膜に何らかの原因で断裂が生じ,肺胞気が胸膜腔に漏出して肺虚脱をきたしたものである.このうち明らかな原因に基づくものを病的気胸あるいは続発性気胸とよび,臨床的に明らかにできぬものを自発気胸とし,これのみを自然気胸とするものもある.一方,気胸腔と外界あるいは肺との交通状態により,a)閉鎖性気胸,b)開放性気胸,c)緊張性気胸あるいは弁状気胸の3つに分けている.
 緊張性気胸は,胸腔内圧が陽圧となるためもつとも危険とされている.すなわち,縦隔は圧迫されて常に健側に移動し,開放性気胸のように縦隔動揺,奇異呼吸および振子気はおこらないが,健側肺の換気は妨げられ,胸腔内圧の上昇により静脈還流が阻害され,チアノーゼ,高度の呼吸困難,ショック症状を呈するいわゆる,急性呼吸循環障害を招来するようになる.

食道静脈瘤出血

著者: 板谷博之

ページ範囲:P.1231 - P.1235

はじめに
 門脈圧亢進症における食道静脈瘤からの出血は,現在でもなお,すべての上部消化管出血のうちでもつとも迅速,適切な治療が要求される重篤な合併症の一つである.とくに肝硬変症の場合には,一旦出血すると止血がしばしば困難で,大量出血,をきたして出血死となり易く,たとえ死をまぬがれたとしても,出血による低血圧のため肝への血流が減少し,既存の肝障害はさらに悪化し,加うるに胃腸管への出血により生じた毒素の肝での解毒が十分に行なわれず,高アンモニア血症をきたし,肝性昏睡により死亡する危険性もきわめて大きい.急性食道出血例に対しては,輸血,Pitressin点滴注射,Sengstaken-Blakemore TubeにょるBalloon Tamponadeなどの保存的療法,あるいは胸管ドレナージなどをまず試みて止血をはかり,止血困難な症例に対しては,時期を失することなく,全身状態の許す限り外科的救急処置を行なう,というのが現在一般にとられている方針である.Orloff1)は1942年から1962年までの20年間に,食道静脈瘤出血に対してなされた保存的治療と外科的治療に関する諸家の成績を比較検討した結果,前者の死亡率65%に対し,後者は30〜40%であったところから,救急処置としては矢張り外科的治療を優先すべきであるとしている.

横隔膜ヘルニア

著者: 森田建 ,   岡部郁夫

ページ範囲:P.1237 - P.1241

はじめに
 横隔膜ヘルニアは,横隔膜に生じたヘルニア門を通じて腹腔内臓器が胸腔内に入り,呼吸・循環障害や消化器症状をきたすものであるが,その症状の強さや発現の速さは原因疾患によつて異なり,手術の緊急度にも差異を生ずる.
 先天性横隔膜ヘルニアのなかでも最も頻度の高い胸腹裂孔(Bochdalek孔)ヘルニアは,大部分がヘルニア嚢を欠く仮性ヘルニアである関係上,生後間もなく重篤な呼吸・循環障害をきたし,緊急手術によらない限り,本症の大半が新生児期ことに生後数日以内に死亡することが明らかにされており,横隔膜ヘルニアのなかでは緊急手術を要する代表的なものとなしうる.新生児期以降では緊急手術の必要性は少なくなるが,常に呼吸障害が急性増悪しうることを心得えておく必要がある.横隔膜挙上症(弛緩症)では保存的療法が優先するが,生後早期には呼吸障害が急激に強くなり,緊急手術を要することも少なくない.

胃・腸管出血

著者: 長尾房大 ,   池内準次

ページ範囲:P.1243 - P.1246

はじめに
 胃腸管からの大量出血は,いわゆる吐血・下血の現象として,われわれ臨床医にとつては,日常しばしば遭遇する疾患の一つであり,この出血対策として,常に手術の適否,あるいは要不要が問題にされているものである.常識論的にいえば,手術すべき時に手術をするということにつきるのであるが,さて,この判断が,実にまちまちであり,出血対策上の混乱を招いている.これは,内科側なり,外科側なりが,それぞれ自分達のとりあつかつた症例側からの一方的見解にもとづいて論議を組みたててきたための混乱であり,それぞれの立場からみると決して間違いではないが,全体総括的に,一つの疾患を内,外科両側から密接な連絡の下に観察することが等閑視されていたためでもある.また,その原因のひとつに,自然止血の可能性の問題があり,手術的対策の是非に対する論議の分界点の一つになつている,内科的療法を是とするものは,自然止血の可能性を高く評価し,保存的療法で十分救命できるので手術的療法はその必要がない場合が多いという方針であり,一方,外科的療法を支持するものは,自然止血の可能性に未練をもちすぎて,手術の時期を失することの危険性を主張して,手術による永久的止血が最も安全であると主張するものである.

肝損傷

著者: 羽鳥俊郎 ,   須藤政彦

ページ範囲:P.1247 - P.1250

はじめに
 肝は最も大きな臓器であるが移動性が乏しく,また実質性臓器であるので外力によつて損傷を受け易く,それによつて腹腔内に大出血をきたし重篤な症状を呈するものである.肝損傷は損傷の部位・程度によつて次のごとく分類されている.

脾損傷

著者: 鍋谷欣市

ページ範囲:P.1251 - P.1254

はじめに
 脾損傷は,開放性損傷と非開放性損傷に大別される.開放性損傷は刺創,切創,銃創等であり,非開放性損傷は皮下損傷で,打撲,衝突等の強い外力による外傷性皮下破裂traumatische Subku-taner-milzrupturがその代表的なものである.一般にこの皮下破裂は,マラリア,バンチ氏病のような病的脾腫がある場合に発生し易いといわれている.また,特殊な損傷としては,手術中に脾を損傷して止血の困難な場合がある.
 脾損傷をその損傷部位,損傷程度からみると,単に脾被膜の一部剥離や,断裂によるものから,脾実質の断裂損傷におよぶもの,あるいは脾門部血管の損傷によるものなどがある.しかし,かかる脾損傷の中で緊急手術を要するものは,いわゆる脾破裂Milzrupturであつて,出血を伴なう血圧下降がみられ,ショック状態に陥る場合がある.

グラフ

顔面中央部の骨折とX線像

著者: 田嶋定夫 ,   原科孝雄

ページ範囲:P.1185 - P.1191

最近の各種産業災害とくに交通災害の多発により、身体各部外傷はますます増加しつつある.各科における外傷学の進歩によつて,重症外傷患者も救命される機会が多くなつたが,顔面外傷への関心はまだ低いようである.顔面各部の機能障害と醜形のため.せつかく救命されても十分な社会復帰と豊かな精神生活が送られないというような例も少なくない.

外科の焦点

気管損傷の診断と治療

著者: 三浦健 ,   羽田野茂

ページ範囲:P.1193 - P.1201

はじめに
 外傷による下気道の損傷を適切に治療した報告例は決して多くない5)7)10)16),ところが近年自動車交通事故の激増に伴い頸部・胸部外傷の患者はかなり多く,実際には下気道損傷の症例もかなりの数にのぼる筈である.しかし実際にはこれらの下気道損傷の患者の中には何らの治療も受けないうちに死亡している例が多い.否,下気道の損傷にさえ気付かぬままに死亡していることも多いように思われる.
 これらの下気道損傷は決して致命的ではなく,適切な治療を行なうことによつて救命し得べき筈のものである.以下,下気道損傷の病態を述べると共に,下気道の損傷は早期に気道を確保し,肺虚脱を治療しつつ,損傷した気管・気管支を観血的に処置することによつて救い得ることを解説したいと思う11)

論説

急性末梢動脈塞栓症の手術成績

著者: 粟根康行 ,   上野明 ,   丸山雄二 ,   根本〓 ,   多田祐輔

ページ範囲:P.1259 - P.1264

はじめに
 東京大学医学部木本外科,第二外科,胸部外科各教室において昭和26年1月から昭和43年5月まで,四肢末梢動脈塞栓症32症例(34塞栓)を経験した.本報告は以上の症例を分析することにより,本症の実態を検討し,またFogarty catheterという新しい武器を使用,塞栓除去技術に多分の進歩が得られたので,その成績についても言及したい.

直腸癌の統計的観察

著者: 西島早見 ,   榊原幸雄 ,   橋本常世 ,   仁井弘 ,   西井博 ,   日下和昌 ,   中田昭榿 ,   原田隆浩 ,   渡辺英生 ,   小川靖

ページ範囲:P.1265 - P.1270

まえがき
 直腸癌は消化器系に発生する癌腫のうちでは,胃癌についで発生頻度が高く,外科的に重要な疾患の一つである.瀬木1)らの統計的調査によれば本症は近年,諸外国にくらべ増加の傾向があるとされている.
 直腸癌は,皮膚,乳腺,口腔などの癌のごとき表在性のものについで早期発見が比較的容易であるといわれ,また病理学的,解剖学的特長に基づいて,その予術成績も他の臓器の癌にくらべ良好であるとされている.

第69回日本外科学会総会印象記

脳外科領域

著者: 東健一郎

ページ範囲:P.1275 - P.1277

 本年の日本外科学会総会は,他学会における発表と重複しない新しい内容のもののみをという榊原会長の方針によつて,演題申込が各施設1題に制限されたため,演題がかなり整理され,第2日,第3日の両日は日本武道館一会揚のみで討論が行なわれた.しかし,それでもまだ一会揚では処理できない専門的分野にわたる演題が多く,第1日(4月11日)のみは4会揚に分れて討議された.
 脳外科領域の一般演題は,第三会場(千代田公会堂)において第1日目の午前中に19題と,それに対する追加が8題あり,神経生理,神経放射線,外傷,腫瘍,高気圧療法などの各方面における新しい知見が次々と発表され,活発な討議が行なわれた.ここでは第2日目以後のシンポジウムの演題を中心として,この領域の新しい動向についての私見をのべてみたいと思う.

心臓外科領域

著者: 田辺達三

ページ範囲:P.1277 - P.1279

 第69回日本外科学会は榊原会長の慎重な配慮によって,第1日目の一般演題では新しい研究成果を主眼とする発表を,第2,第3日目は会員一同が武道館に会して共通演題,各領域における術後5年遠隔成績に関する依頼講演を討議,拝聴するという企画の下に行なわれた.著者は心臓外科領域についての印象記を依頼されたが,それにつけても日本外科学会に相当すると考えられるAmerican College of Surgeonsでは,権威ある指導者によつて発表講演についてWhat's new in surgeryのタイトルの下に厳しい論評がなされ,それは雑誌SGOに掲載されている.研究の意義と将来性についての討議,示唆が会期中に行なわれれば,より綿密に講演内容を評価検討することが出来,外科研究の進展に与る点が少なくないと老えられるので,日本でもかかる企画の盛んに行なわれることが期待される.若輩の著者にはとても,今日,最も著しい進展を続ける心臓外科領域全般にわたる研究のすべてを論じえないが,ここでは著者なりの印象を中心に述べ,責を果したい.
 この領域では演題数からもうかがわれる如く,手術補助手段としての人工心肺法,低体温法の長短,改良をはじめ,先天的心疾患ではとくにファロー四徴症,後天的心疾患では弁膜置換手術,冠動脈の外科や心臓移植などを中心として,急速な研究の進展をみる反面,まだまだ慎重な検討を続けねばならない点も多い。

消化器外科領域

著者: 草間悟

ページ範囲:P.1279 - P.1280

 満開の桜の花にかこまれた北の丸公園内の武道館を中心として,九段会館,千代田公会堂,科学技術館の四会場で4月11日から3日間にわたつて第69回日本外科学会総会が開かれた.
 各大学に吹き荒れている大学紛争の余波をうけて演題中止やら,いつも見る顔がみられないという淋しさはあつたが,成果をおさめて無事に学会が終了したことをよろこびたい,内定しかかつていた外科専門医制度は急に広く反響をよび,評議員会においても,また総会議事においても強い反対の声があがり,今後広く研究をかさねたうえで,再検討を加えることになつた.外科専門医制度は昨年の評議員会で一部可決されたのであるが,これにこだわらずに,これからこの資格をとるであろうと目された若い外科医の声に耳をかたむけるという態度は外科学会の進歩というべきであろう.

小児外科領域

著者: 池田恵一

ページ範囲:P.1281 - P.1283

 外科においても専門的分野への細分化として多くの分科会が生じつつある反面,これを統合して外科共通の場として論ずべき学会が必要であり,外科学会総会はかかる統合の場として,あるいは外科一般の教育の場として運営されるべきであり,この度の榊原会長の苦心の運営もその点にあつたものと推察される.今後,専門的な研究発表は外科分科会で主に取り上げ,外科学会総会では統合的あるいは教育的演題を主とすることが,数多くの外科系学会を運営する上に是非共必要なことと考える.
 さて,小児外科関係の発表は第1日目午後,第一・第三・第四会場と散在して開かれ,小児の脳外科,心臓外科関係も一緒に発表されたが,ここでは主に小児の内臓外科に限つてその感想を申し述べる.

移植・人工臓器

著者: 富田正雄

ページ範囲:P.1283 - P.1284

 木本誠二名誉教授を座長に心移植3題,心臓ペースメーキングの研究1題,肝移植1題および肺移植2題が発表された.

外国文献

ショックにおける胸管リンパ,他

ページ範囲:P.1285 - P.1287

 胸管リンパは肝・腹部内臓の毛細管系から来るので,動脈,静脈より正確にその代謝を反映する.Berman(Ann.Surg.169:202,1969)はイヌで気管内挿管respiratorで動脈pO275 mmHg以上, pCO235〜45mmHgとして,右胸管リンパを無菌的にあつめるようにして,出血で血圧80→40mmHg,30分後これを再輸血した.一方大腸菌endotoxin 2 mg/kg静注でendo-toxinシヨックをつくつた.胸管リンパ流量はどちらも不定ながら増加した.対照baseline O.5cc/minだが出血では1ccに,endotoxinでは1.O〜1.5 ccに達した.リンパのpO2は動脈pO2低下と静脈pO2低下の中間を低下し,再輸血で,やはり両者の中間を元値に上昇した.脾はこれに関係ない.endotoxinの低血圧初期にはリンパpO2は不定(動脈は著明に低下),末期には予想されたように低下した.リンパpH低下は血液のそれに一致している.リンパのacid Paseはどのシヨックでも上昇,β-glucuronidaseは血清より低い.著者はシヨックでも内臓における動静脈吻合の可能性を論じている.

患者と私

医界の嘘をなくしてほしい

著者: 塩月正雄

ページ範囲:P.1288 - P.1289

 日常の診療活動はすべてが「患者と私」はもとより「患者と全職員」の関係であり,さらに「患者と医療界」につながります.
 患者も医師も,前時代の個人的な機会を頼りとした頃と違い,今日では医療界の組織があつての「患者と私」ということになります.

講座 血管外科入門・2

血管造影手技

著者: 三島好雄

ページ範囲:P.1292 - P.1300

はじめに
 近年の脈管外科の進歩は外科手技上の進歩とともに脈管造影法の進歩に負うところが多く,その適応もますます拡大している.とくに血管外科の立場からは必須の検査法の1つとされている.以下に主要な造影法を紹介する.

症例

外傷性横隔膜ヘルニア

著者: 渡辺裕 ,   嘉屋和夫 ,   棚橋映二 ,   堅田洋 ,   水谷正信

ページ範囲:P.1302 - P.1307

はじめに
 近時,交通機関の発達に伴い頭部,四肢などの外傷が増加し,これらの外傷は比較的容易に診断されうるが,横隔膜損傷またはヘルニアは比較的少なく,受傷後診断までに数時間あるいは十数年を要することがある.この場合外傷性横隔膜ヘルニアと習慣的に称しているが,ヘルニア嚢はなく腹部臓器の脱出したものまたは脱出しうる状態のものを含めておりProlapsus viscerum transdia-phragmaticusと称されるべきものである.さきにわれわれは食道裂孔ヘルニアについて述べたが,ここにわれわれの経験した外傷性横隔膜ヘルニアの症例を述べたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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