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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科25巻11号

1970年11月発行

雑誌目次

特集 輸液の臨床

外科領域における水分・電解質補給の問題点

著者: 綿貫喆

ページ範囲:P.1631 - P.1637

はじめに
 近年外科領域においては実にめざましい発展進歩がなされたが,この発展の原因のうち第1にあけるべきものは,手術侵襲にたいする考え方,その基礎的研究の発展,さらにそれにたいする治療法の進歩であろう.侵襲ならびにそれにたいする生体反応の研究は,古くChaude Bernardの内部環境milieu intérieurの概念に始まるが,いわゆる侵襲学は各方面で発展し,homeostasis(Ca-nnon)やalarm reaction(Selye)を初めとして,あるいは自律神経系あるいは内分泌系との関係が深く探求され,次第に生体反応の各方面のつつこんだ詳細な研究に発展してきた.これらの研究結果がもととなつて,手術前後の治療方法がとみに進歩して外科領域の発展に大いに貢献してきた.手術を中心とした水分および電解質の補給方法の進歩もその分野の大きな1つの部分である.

経中心静脈高張高カロリー輸液法

著者: 葛西森夫 ,   佐野奠 ,   小野寺時夫

ページ範囲:P.1639 - P.1646

はじめに
 中心静脈中への高張高カロリー輸液の注入法がDudrickおよびWilmoreによつて紹介されて以来,長期完全経中心静脈栄養法は経腸的栄養法が不能あるいは不足する患者に対して,多大の福音を与えられるようになつた1)−6)
 従来経静脈的に高カロリーを与えるために数多くの研究がなされ,アミノ酸液や脂肪乳剤の開発が行なわれたが,生体が必要とする熱量40〜50cal/kg/dayを補なうためには,水分の過剰投与を余儀なくされ,過水症による生命の危険を考えると,実際には不可能であつた.これに対し経中心静脈栄養法は,生体に必要な熱量はもちろん,ビケミンや無機質全てを投与して,これのみで小児を発育成長させ,成人の栄養を維持・改善することが可能である.しかしながらこのような利点の反面, ①高張輸液を行なうことにより滲透圧利尿がおこる危険を常に秘めていること.

術中の輸液管理

著者: 高折益彦

ページ範囲:P.1651 - P.1658

はじめに
 麻酔・手術中の輸液管理か患者の予後に重大な影響を及ぼすことは,今や外科的手術にたずさわるものであれば誰でも認めるところである.しかし,一般に輸液管理が合理的に広く行なわれているかというと必ずしもそうではなく,過去における経験やその場にたちあつた医師の直感によつて行なわれていることもかなり多い.そもそも,いかなる治療もその治療が行なわれる理論的根拠が十分でなければその目的を十分達成せしめることが困難である.とはいえ,理論的考察に長時間を要していては,臨床,とくに外科領域におけるごとく,一刻をあらそう実際の場においては,またその目的を十分ならしめない.数学の問題をとくにある程度まで公式を直接利用するように,実地診療においてもある程度の治療は"公式的"に行なわれることの方が便利である.非常に恒常性のある,かつ万能的な治療方針を定めることが大切と思われる.そこで,本稿においては,麻酔,手術中の輪液の基本的処方について検討するとともに,突発的な大出血に対する輸液の意義についても論及してみた.とくに輸液剤と代用血漿剤との使用上の差異,ならびにそれぞれの適応について細心の注意が必要であることを強調した.

心臓手術における輸液—水,電解質平衡からみた輸液と稀釈体外循環

著者: 藤倉一郎 ,   安西信行

ページ範囲:P.1659 - P.1662

 一般外科手術とくらべて,心臓手術はやや侵襲が大きく,とくに体外循環を用いた開心術では,従来の外科手術とくらべて,その生体に与える影響はいちじるしい.
 このような状況のもとでは,水,電解質などの平衡がみだれると,思いがけない合併症をきたすことがある.

消化器手術と輸液

著者: 砂田輝武 ,   志水浩 ,   大本武千代 ,   山田良 ,   曽田益弘

ページ範囲:P.1665 - P.1672

はじめに
 消化管の手術ではほとんどの症例で輸液が必要であり,輸液のあり方が手術の予後を左右することもある点でとくに慎重な配慮が必要である.
 本特集では他の著者と重複する点もあり,紙面の都合で詳述できない点もあるが,それは文献を参照して頂くとして,ここでは今日われわれが行なつている輸液の実際についてのべてみたい.

脳外科手術と輸液

著者: 坪川孝志

ページ範囲:P.1675 - P.1682

はじめに
 脳外科の手術後における水分,無機物質ならびにその他の物質代謝の変動は,一股手術の際にみられる変動(Moore 1952)と基本的には同一傾向を示すとされてきた(Wise 1956, 1959, McLaurinら1960).つまり手術直後は水分とNaの貯溜,K排出がみられ,体蛋白が崩壊し,負の窒素平衡に陥る.このCatabolic phaseからAnabolic phaseに手術後2〜3日目頃に移行し,次第に諸代謝は正常化へむかうのである.したがつて,脳手術後の輸液は,この代謝異常による欠損の補充と,生体の維持量を投与していく方針をとれば良いことになる.
 しかし,実際には,脳手術後の代謝面での変動ならびに輸液による損傷脳の反応にもいくつか特異な面があるので,それに対処しなければならない.その特異点をまとめると,以下の7項目に総括することができる.

小児外科手術と輸液

著者: 沢口重徳 ,   中条俊夫 ,   堀隆 ,   太田裕彦 ,   吉成道夫

ページ範囲:P.1685 - P.1691

はじめに
 近年における小児外科の急速な進歩は術前,術中,術後にわたる患者管理の進歩によるところが大きい.輸液はその中でも極めて重要なもので,小児外科臨床における不可欠の治療法である.
 輸液は体液異常の予防および治療を目的として水分電解質など体液成分を非経口的に投与する治療法であつて,今日ではその内容によつて次のごとく3つに区別して考えられているが,これは合理的でありまた大切なことである.第1は発病後輸液開始までの体液喪失を補う輸液(欠乏に対する輸液deficit therapy),第2は輸液期間における生理的維持必要量を補給する輸液(維持輸液maintenance therapy),第3は輸液期間における嘔吐,排液,胃腸液吸引などによる異常な体液喪失を補う輸液(異常喪失に対する輸液abnormalloss therapy)であり,実際の輸液はこれら3者の総和として理解される.

Poor Risk患者の輸液

著者: 玉熊正悦 ,   菅原克彦 ,   佐藤長夫

ページ範囲:P.1695 - P.1701

はじめに
 surgical riskの評価にあたり,いわゆるpoorrisk患者と判定さ封しる状態は,Woodbridge1)によれば「術前の準備を十分にしなければ手術に危険性を伴うもので,できるだけ侵襲の少ない手術法と無害な麻酔法を選ばなければならない」と表現されている.一方で林2)は,手術適応やそのriskの判定の際,患者の全身状態と予定される手術侵襲の程度のみでなく,麻酔医や術者の技術,術後のintensive careの設備と努力をも含めたdynamicな評価であるべき点を強調している.本特集でpoor risk患者の具体的な対象として筆者に与えられた心・腎不全,糖尿病,ショックなどは,一見患者側の全身状態を重視する従来の常識的な分類にしたがつて選択されているが,本稿ではこれらの治療を担当する側の重要性を十分考慮された上での見解がのべられることは申すまでもない.
 このpoor risk患者にとり輸液療法はいわば両刃の剣である.心,腎,肺など,生体のhomeo—stasisの維持にあずかる諸器管の調節能力は幅広い余力をもているため,通常の手術前後の患者ではかなり大ざつぱな概算によつて投与された輸液の量や組成でも,生体は必要に応じて取捨選択してそれに適応し,輸液の本来の目的が達せられる.

熱傷の輸液

著者: 斎藤昭

ページ範囲:P.1705 - P.1716

Ⅰ.熱傷患者診療のための基礎知識
 熱傷の治療は,受傷直後がとくに重要で,今日では熱傷面積の広汎な100%に近い超重症例も救いうる.醜形な瘢痕,機能障害などの後遺症も早期の適確な治療によつて防止できる.したがつて初療が大切で,初療時に患者の重症度を判定し,どの程度の治療が必要であるか,一般病院でよいか,あるいは専門病院に送るべきか,という見当をつけることが大切である.広範囲の熱傷の場合の死亡率は現在も相当に高く,他の外傷とは異なつて受傷直後は案外一般状態が悪くないのに,2〜3日経過してから死亡する症例が多い.
 最近10年間の熱傷死亡率は,それ以前の10年問の死亡率にくらべほとんど改善されていない.第1の難関の早期ショック期の死亡率を克服することができたとしても,第2に感染の問題がたちふさがるからである.熱傷創面からの持続的な体液の滲出(蛋白喪失は体長1%あたり2.89g/dayといわれている).これに続発する低蛋白血漿,貧血などにより全身の抵抗力は極度に低下する.このような状態では,熱傷面の皮膚欠損部から侵入する細菌は強い毒力を発揮するようになる.他の疾患ではあまり病原性をもたないと考えられている緑膿菌などまで,かなりの病原性をもつようになり,そのための敗血症か発生して死にいたる場合が少なくない.

カラーグラフ

腸壁嚢状気腫

著者: 四方淳一 ,   新井正美 ,   佐々木五郎 ,   福留厚

ページ範囲:P.1628 - P.1629

 腸壁嚢状気腫(Pneumatosis cystoides intestinalis)は,消化管壁にガスで充満した無数の嚢腫がある疾患で,Intestinal emphysema, Gas cysts of the intestine,Bullous emphysema of the intestine, Peritoneal pneumatosis, Cystic lympho-pneumatosis, Pneumatosis intestinalisなどとも呼ばれている.著者らは食道癌根治術後,十二指腸および空腸にみられた本症の1例を経験したので供覧する.

外国文献

hyperviscosity症候群,他

ページ範囲:P.1721 - P.1721

 Fahey(JAMA 192:464, 1965)が唱え出したことは周知だが,Wells(New Engl. J. Med. 283:183, 1970)はserum hyperviscosity syndrome,polycytemic hyperviscosity syndrome,sclerocytemic hyperviscosity syndromeとをわけている.外科ではさしあたりserum hyperviscosityが問題になろう.いうまでもなく血球と血漿蛋白との相互関係にもとづく.血球は数と形,血漿蛋白ではdensity,charge,size,shape(分子の)が原因になる.そこから,ひとつはformation offluid structure,もひとつは細胞膠着という2現象があらわれる.蛋白がanisometric,高密度,荷電が中性か(+)になると,以上2現象は進行する.たとえば高分子のfibrinogenが病的に高くなると細胞膠着が進行する.macroglobulin(anisometric)がふえるとwaldenström病の所見症状があらわれる.

学会印象記

第12回乳癌研究会印象記—昭和45年9月17日京都市で開催

著者: 高橋勇

ページ範囲:P.1722 - P.1723

 昭和39年12月に,第1回乳癌研究会が開催されて以来,年2回宛研究会が開かれ,今回で第12回を数えるに至つた.
 本研究会について概略すると,本会はいわゆる学会形式を取らず,従つて個人会員制度でなく,施設毎の任意加入制度によるもので,会費も施設毎から年会費として納入されるようになつている.(ちなみに,従来5千円であつたが,今回1万円に値上げが決つた).研究会事務所は,群馬大学医学部藤森外科教室内におかれている.会には,世話人会と,研究会加入の施設代表者会議とがあるが,研究会の運営や方針,主題の設定などは,世話人会で決められている,あらかじめ,2,3の主題が決められ,これに対して各施設からの研究成果を持ち寄つて,討論する方式で行なわれている.毎回の研究会出席者は約200名前後ではないかと思われる.

患者と私

切りすぎる外科医—医療危機とメスの濫用

著者: 林正秀

ページ範囲:P.1724 - P.1725

Ⅰ.目立つ外科医への批判
 いまや心臓移植の可否が大問題となるほど近年のメスの分野の進歩は目をみはるばかりである.だが,このような進歩と対照的に外科医への批判もかつてない位目立つてきた.日本における心臓移植をめぐつて,これを告発する会が誕生したのもつい先頃のことである.またガン抗体をつくる試みが人体実験として明るみにでたり,高圧酸素タンクの爆発事故がおきて世間を驚かせたのもいまだ昨年のできごとである.無胃村(無医村ではなく)の出現をマス・コミがとりあげたのを記憶している人も少なくないであろう.美容整形ブームや事故,手術過誤もマス・コミで報道されることが増えてきている.これらをめぐつてメスのあり方,外科医のあり方に厳しい批判の目がむけられてきたのは周知の通りである.一方,いまだ社会問題化はしていないものの,私たちの日常の仕事の中で外科的医原病の増加が注目されて以来,はや10年になる.これらの問題の本質的な解明は拙著「外科医の告白」(三一書房)を参照していただくとして,端的にいえばメスの濫用→外科医の切りすぎに他ならない.そして切りすぎの本質は,何よりも医療技術にある以上,メス本来のあり方を疎外する切りすぎへの責任から外科医は自由ではありえないはずである.と同時に,これを放任することは患者にとつて大問題なのは元より,外科医が自ら墓穴をほることにもなるのである.

海外だより

アメリカにおける肝臓移植の現況

著者: 河野信博

ページ範囲:P.1726 - P.1729

はじめに
 私が医学部を卒業したのが昭和36年であるから,まだ卒業後10年たつていないわけであるが,最近作られた同級生名簿を調べてみると,実に90名中50数名が海外留学中か,あるいはその経験をもつていることがわかつた.われわれより年輩のクラスでは,この比率はもつと高いであろうし,後輩のクラスの人々を羽田に送りにゆくことも,この頃では日常茶飯時のことになつたように思われる.一方,海外に赴かれた先生方の報告は枚挙に遑がないほどで,今更特にアメリカに僅か2年間滞在したに過ぎない私などが,海外だよりとあらたまつて述べる必要はないと思われるが,ふり返つて自分の送つて来た過去2年間のことを考えてみると,これまでに人の口から伝えられたことのないアメリカの素顔の一面を知り得たような気がしてならない.そういつた意味で,私がニューヨークのメモリアル・スローンケッタリング癌センターで肝臓移植の実験と臨床にたずさわりながら感じたこと考えたことなどを,事実を紹介しながら若干述べてみることも意義のないことではないと思う.

論説

循環冷却低体温による循環停止下心手術

著者: 藤倉一朗 ,   和田汪 ,   安西信行 ,   川瀬光彦 ,   岡田忠彦

ページ範囲:P.1733 - P.1737

 表面冷却による低体温法による循環停止下心内手術はBigelow1,2)Swan3らの研究に始まり,本邦でも榊原4),岡村ら5)の実験的,臨床的な豊富な報告がある.体外循環による急速冷却低体温法により循環停止を行ない,心臓手術をする方法はGollan6)に始まり、Brock7),Ross,8)Brown9)により広く紹介された.人工肺を用いないDrew10)の両心バイパス法も,体外循環を用いた急速冷却低体温の一法であるが,これに対して,Ncgre11),Kirklin12),Björk13)などが追試し,種々な合併症の問題もあり,普及をみなかつた.これは,体外循環による急速冷却低体温法では,表面冷却とくらべて,各臓器の均一な温度低下をきたすことがむずかしく,したがつて指標とする温度と,循環停止許容時間との関係が,なお明確でないことに関係があろうと考えられる.この循環冷却低体温法にほぼ近い方法で,私たらは乳幼児開心術に,表面冷却も併用して行なつて来たが14),これと異なり、まつたく循環冷却のみで,脱血温を20〜25℃の低体温とし,血行停止して,心内手術を行なう方法を,副側血行の多いファロー氏四徴症,肺動脈が動脈瘤化した動脈管開存症などに応用しているので,これらの症例をあげ,実際の方法についてのべ,体外循環における急速冷却,低体温などに関して検討をこころみることにする.

胆石症死亡例の検討

著者: 長瀬正夫 ,   南一明 ,   杉本雄三

ページ範囲:P.1739 - P.1743

緒言
 胆石症はいうまでもなく良性疾患である.したがつて,本症によつて死亡するなどということは本来あるべきことではない.近年,アメリカでは胆石症手術死亡率は僅か0.5%前後という報告が多いが,本邦ではまだそのレベルに達していないようである.これは彼我の胆石の種類の差異にもよるものであろうが,果してそれだけであるかどうか.
 著者らは本院における胆石症死亡例を検討し,この点を解明したく思う.

副腎皮質ステロイドホルモンと結腸潰瘍穿孔

著者: 渡辺裕 ,   岩橋寛治 ,   岡木好史 ,   黄秋雄

ページ範囲:P.1745 - P.1749

 副腎皮質ステロイドホルモンが臨床的に用いられるようになつてがら20年以上も経過し,その種類,適応も拡大し,投与方法も改善されたが,なお種々の副作用がみられる.消化管に関しても前駆症状なしに出血,潰瘍,穿孔がみられ,その処置に難渋を覚え,外科手術後も経過がはかばかしくないことがある.われわれも長期間のステロイド療法中に胃穿孔をきたした症例を経験しているが,結腸穿孔は少ないのであえて報告し,諸賢の参考に供したい.

講座

外科領域におけるアミノ酸輸液—2.アミノ酸輸液と糖質輸液

著者: 早坂滉 ,   福井四郎

ページ範囲:P.1751 - P.1756

 アミノ酸投与にさいして糖質を併用することは,蛋白,アミノ酸からの糖新生を抑えるとともに,糖質に特有のprotein Sparing作用を期待するものである.かかる理由からアミノ酸製剤にはsorbitolが配合されているが,これら糖とアミノ酸剤輸液について,とくに最近登場したxylitol,五炭糖につきその関連性を他の六炭糖のそれと比較して検討を加えたい.

症例

胃サルコイドージスと思われる1例

著者: 岩本淳子 ,   木村正 ,   高木正雄 ,   武正勇造 ,   河野実

ページ範囲:P.1757 - P.1762

はじめに
 近年全身疾患としてのSarcoidosis(邦名,「類肉腫症」)は,にわかに注目されておりその臨床症状は,多彩で本症の発生原因はまだ不明である.文献によれば,1869年英国のJ.Hutchinsonがこの皮膚病変について記載したのが最初であり,その後1889年フランスのE.Bésnier,1889年ノルウェーのC.Boeckらによつても記載され,今世紀の初め1914年スウェーデンのSchaumannを初めとする多くの研究者が全身系統疾患としての本症の病像完成に貢献し,今日,一名Bésnier-Boeck-Schaumann's diseaseとも呼ばれている1).サルコイドージス(以下「サ」と略す).は全身疾患として肺,皮膚,眼,リンパ節,骨,肝,脾,耳下腺,鼻腔,副鼻腔,骨格筋,中枢神経等の侵された症例についての報告は多いが,消化管の「サ」は非常に稀であり胃「サ」については1936年Schaumannによるものが第1例で2),外国文献上は26例の報告があるが(Sirak3),Pearce andEhrlich4),Scott and Palmer5)らによる),本邦では1959年の長村6)らの報告を初めとして,矢部7)(1961年),本田2)(1966年),広畑8)(1965年)の報告による計4例をみるに過ぎない.

電撃傷による巨大頭蓋欠損の一治験例

著者: 別府俊男 ,   荒井康温 ,   仙頭茂 ,   松井孝嘉 ,   本田裕朗

ページ範囲:P.1763 - P.1768

はじめに
 電撃傷は比較的まれな外傷の一つであるが電気需要の増大とともに漸次増加の傾向にあり,全身症状と特異的な難治性局所損傷を伴う点で関心がもたれている.
 とくに,頭部に電撃傷を蒙ることは比較的少なく,広範な頭蓋(頭皮および頭蓋骨)電撃火傷の報告はさらに稀である.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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