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文献詳細

雑誌文献

臨床外科25巻11号

1970年11月発行

文献概要

特集 輸液の臨床

熱傷の輸液

著者: 斎藤昭1

所属機関: 1順天堂大学外科

ページ範囲:P.1705 - P.1716

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Ⅰ.熱傷患者診療のための基礎知識
 熱傷の治療は,受傷直後がとくに重要で,今日では熱傷面積の広汎な100%に近い超重症例も救いうる.醜形な瘢痕,機能障害などの後遺症も早期の適確な治療によつて防止できる.したがつて初療が大切で,初療時に患者の重症度を判定し,どの程度の治療が必要であるか,一般病院でよいか,あるいは専門病院に送るべきか,という見当をつけることが大切である.広範囲の熱傷の場合の死亡率は現在も相当に高く,他の外傷とは異なつて受傷直後は案外一般状態が悪くないのに,2〜3日経過してから死亡する症例が多い.
 最近10年間の熱傷死亡率は,それ以前の10年問の死亡率にくらべほとんど改善されていない.第1の難関の早期ショック期の死亡率を克服することができたとしても,第2に感染の問題がたちふさがるからである.熱傷創面からの持続的な体液の滲出(蛋白喪失は体長1%あたり2.89g/dayといわれている).これに続発する低蛋白血漿,貧血などにより全身の抵抗力は極度に低下する.このような状態では,熱傷面の皮膚欠損部から侵入する細菌は強い毒力を発揮するようになる.他の疾患ではあまり病原性をもたないと考えられている緑膿菌などまで,かなりの病原性をもつようになり,そのための敗血症か発生して死にいたる場合が少なくない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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