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文献詳細

雑誌文献

臨床外科25巻5号

1970年05月発行

文献概要

特集 外科領域における感染症

真菌感染

著者: 奥平雅彦12

所属機関: 1東京都監察医務院 2東京大学医学部病理学教室

ページ範囲:P.627 - P.632

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はじめに
 医学の領域では真菌類(Eumycetes)と放線菌類(Actinomycetes)に属する微生物を真菌(Fungus)と呼ぶのが習慣となつている.およそ5〜10万種もあるとされている真菌はわれわれの周囲に空中,土中,水中をとわず普遍的に存在しており,その生活力は極めて旺盛である.したがつて,人間は直接,間接に真菌にびつしり囲まれて生活しているといえよう1)
 真菌に関する科学的な知見はHooke(1677)がバラの葉の黄斑が菌糸よりなつていることを記載したことに端を発するという2).人間の病原真菌としてはLangenbeck(1839)が鵞口瘡患者からとつた材料中に今日でいうCandidaを認めたのが最初の報告とされている3),このように真菌発見の歴史が細菌発見の歴史に先行したのは,真菌の菌要素(fungus elements)が細菌より大きく,形態に特徴があるため,その存在が比較的確認し易いことによるものと思われる4).その反面,細菌学の発展に対して地味な歴史をたどつたのは,一般に真菌症は人から人へ,動物から人への感染発病がなく,致死的な重篤な感染症が少なく,地方病的性格を示すものが少なくないことなどによつて,皮膚真菌症を別とすれば,最近までは稀な疾患とされ,あまり注目されていなかつたように思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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