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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科25巻6号

1970年06月発行

雑誌目次

特集 縫合不全

全身状態と縫合不全

著者: 小出来一博 ,   生形圭

ページ範囲:P.773 - P.778

はじめに
 近年,手術前後における栄養管理の向上,特に積極的な高蛋白,高熱量食事の補給,完全静脈内栄養の確立,化学療法の進歩などによつて,縫合不全の発生頻度は次第に減少しつつある.しかしながら,emergency caseや栄養非改善例,その他の多くの因子によりなお縫合不全の発生はあとをたたない.
 この縫合不全には腹・胸壁手術創の哆開と,腸管,気管支などの吻合部離開とがあり,いずれの場合にも,外科手術後の合併症としてもつとも不愉快なもので,時として患者の生命をおびやかす結果になる.

連続縫合と結節縫合の得失

著者: 鈴木五郎

ページ範囲:P.779 - P.784

はじめに
 組織の切離と縫合とは外科手術の基本でもあり,古来,種々の方法が工夫案出された.ここでは縫合法を問題とする.
 縫合のしかたはきわめて多様であるが,問題は組織を傷害することなく,しかも強固に創が接着して自然治癒を営ましめ,しかもその後の経過に障害を残さぬことが望まれる.その基本法を二大別して連続縫合と結節縫合とする.そうしてその両者の得失如何というのが主題である.

動脈の縫合不全と静脈閉塞

著者: 杉江三郎

ページ範囲:P.785 - P.791

はじめに
 血管系における縫合不全というと,他の消化管などの場合とちがい,血管系そのもののもつ特性,内圧の差異,および手術手技そのものの適,不適によつて不測の出血や閉塞をきたし,これが直ちに致命的となる合併症の危険をもつ点で重要視されている.
 ことに動脈系における縫合不全は,術後早期には大出血や血腫形成の危険をもち,後期においては動脈瘤形成へと結びつき,いずれも生命の危険をもつ合併症であるといえる.

食道癌手術後の縫合不全

著者: 葛西森夫 ,   渡辺登志男 ,   阿保七三郎

ページ範囲:P.793 - P.798

 食道癌手術後の縫合不全は,死亡に直接つながる危険を有する意味で肺合併症とともに重大な術後合併症である.特に胸腔内吻合では,その大部分が膿胸や重篤な縦隔洞炎へ発展し死に至るとされ,その故に胸壁前皮下あるいは胸骨下経由による挙上胃と頸部食道を頸部で吻合する術式の利が唱えられた.しかしながら縫合不全発生の主要因子である吻合部の過緊張と循環障害を来たしやすい頸部吻合は,当然縫合不全の発生頻度が高く,その結果が直接死亡に至らないといつても,外瘻形成から低栄養状態に陥いり,術前栄養状態の悪いものでは全身状態の悪化の原因となり,また瘻孔閉鎖をみても吻合部狭窄を生ずることが少なくない.この故に頸部食道胃吻合術では,縫合不全を防ぐために,循環障害の改善を目的とする血管吻合を挙上胃腸管に追加する術式などの工夫がなされている1)2)
 このような胸壁前または胸骨下胃挙上の不利な点を考慮してもなお回避せねばならぬほど胸腔内食道胃吻合の危険が大きなものであろうか.また血管吻合を追加しなければ頸部吻合における縫合不全多発を防ぐことができないのであろうか.われわれは再建後の状態が生理的なものに近いことから胸腔内吻合を主体として根治手術を施行して来たが,最近7年間の自験例を中心に考察を述べてみたい.

気管支断端の縫合不全—耐性菌排出肺結核に対する肺切除術

著者: 奥井津二 ,   浜野三吾 ,   菊地敬一 ,   加納保之

ページ範囲:P.801 - P.804

はじめに
 肺結核症の治療において,罹患肺を切除することは抜本遡源的効果を発揮するものとして外科療法の主流をなしているが,気管支瘻を併発すると予期しない不幸な結果を招来する場合が少なくない.化学療法薬出現以前においては,気管支周囲組織の感染に基づいて閉鎖された気管支断端が破綻して禁止的高率の気管支瘻を発生したが,PcやSMをはじめとする抗生剤が使用されるようになつて気管支癖の発生が劇的に減少したことは文献に明らかなところである.気管支周囲の結核性感染は排菌のある場合に起こりやすいので,これを避けるために手術前に十分な化学療法を行ない,排菌のとまつた時期,または減少した時期を選んで手術を行なうことがすすめられている.しかし化学療法の効果の信頼度が高まつてきた今日では,排菌の止まつたものは原則として外科療法の適応からはずし,長期にわたる化学療法にもかかわらず,排菌をつづける耐性例にこそ外科療法を適用して社会復帰を早めるべきであると考えられる.このような理由で現時点における外科療法の主要な対象は,耐性菌排出例であるが,その成績を悪くしている最も重要な因子の一つとして気管支瘻があげられる.気管支断端閉鎖方法に関しては,Rienhoffの動物実験に基づいてSweetらがthrough and through sutureを実用し,本邦においても広くこの方法が用いられてきた.

胃手術後の縫合不全

著者: 信田重光 ,   渡部洋三 ,   津田英彦 ,   池口祥一

ページ範囲:P.805 - P.811

はじめに
 胃の手術に際して,もつとも重要な合併症として縫合不全による腹膜炎があげられる.近年,抗生物質,麻酔,術前,術後管理の進歩などにより,高齢者への手術適応範囲がかなり拡大してきたけれども,高齢者に術後,縫合不全が起こると,死に至る危険が大きく,本症は外科臨床上もつとも注意すべき合併症といえよう.以下教室において経験した胃手術後の縫合不全例を臨床的に分析し,その対策を考察したい.

腸の縫合不全

著者: 織畑秀夫

ページ範囲:P.813 - P.818

はじめに
 腸の外科において,最も問題のある所は縫合不全である.なぜならば,その結果として腹膜炎が発生して,時には致命的となるからである.そこで腸の外科でまず第1の関心事は縫合不全を防ぐことにあるといつても過言ではない.次に腸の縫合不全の予防と治療について述べる.

胆道再建の合併症

著者: 秋田八年 ,   香月武人 ,   瀬戸口敏明

ページ範囲:P.819 - P.822

はじめに
 胆道手術,ことに良性胆道疾患手術の直接死亡率は,近年著明に減少し,教室におけるいわゆる胆石症217例の手術直接死亡例(再手術を含めた入院中死亡例)は7例3.2%である.これらの症例には,かなりの数の各種胆道再建術が行なわれているが,縫合不全による死亡は,胆嚢剔除・総胆管十二指腸吻合術後に総胆管癌を続発し,総胆管空腸吻合(Roux-Y)および胃空腸吻合術を行なつた69歳男子の1例にすぎない.すなわち一般に行なわれる胆道再建術は,基本的な術式に従えば,ほとんど縫合不全の危険はないものと考えられる.しかし膵頭十二指腸切除術や肝空腸吻合術などの特殊な胆道再建術や,先天性胆道閉鎖に対する肝門部肝管空腸,あるいは十二指腸吻合術など新生児の胆道再建では,術式そのものの不確実性やこのような特殊再建術を必要とする基礎疾患の病態がもたらしたpoor riskなどと相まつて,その術後は必ずしも安全とはいいがたい.以下,通常の胆道再建術と特殊な胆道再建術に分けて,縫合不全の予防と対策を論じたい.

尿管縫合の問題点

著者: 尾本徹男

ページ範囲:P.823 - P.828

はじめに
 尿路への手術侵襲に伴い,尿管の縫合あるいは吻合がしばしば必要となるが,吻合の対象として,尿路組織の他に皮膚,腸管があり,それぞれ独自の問題点を含んでいる.ちなみに九大泌尿器科1968年までの10年間の経験22)では,尿路切石術121,尿管尿管吻合4,尿管膀胱吻合64(うち膀胱部分切除に伴なうもの40, Boari法4),尿管皮膚吻合69(うち膀胱全摘に伴うもの26),尿管腸吻合61が数えられた.
 これら形成手術の共通で最大の問題点は,縫合部狭窄と縫合不全による尿疲であるが,その予防法および二次的治療を総括するには,尿管外科全般への論及が必要であり,すでに秀れた成書3)20)も認められる.そこで今回は筆者の限られた体験ではあるが,教室慣用術式を中心に,手技的な問題点と合併症の処置について述べてみたい.

カラーグラフ

完全大血管転換症の根治手術

著者: 新井達太 ,   北村信夫

ページ範囲:P.754 - P.757

完全大血管転換症の手術は,心内奇形の組み合せにより異り,それに応じた待期手術と根治手術がある.根治手術には,心房内で血液のSwitch overを行なうMustardの手術と,弁つきHomograftを用いて心室のレベルで血液のSwitch overを行なうRastelliの手術がある.Mustardの手術の適応はVSD)のない症例で,Rastelliの手術は肺動脈狭窄とVSDのある症例が適応である.この2つの根治手術について報告する.

外科の焦点

人体内結石の微細構造と臨床像

著者: 緒方卓郎 ,   村田文雄

ページ範囲:P.761 - P.770

はじめに
 人体内結石の成分や構造等については,すでに多数の業績があげられているが,生成機転等については不明な点が少なくない.結石の構造の研究は結石を封入して切片を作製し,普通顕微鏡,偏光顕微鏡等で観察されてきたが,切片を作製するため直接の結晶構造が観察し難くまた微細構造の観察は不可能である.
 一方,Replica法により電顕を用いて微細構造を観察した研究はあるがReplicaという特殊技術を用いるため,その応用範囲にはおのずと限界が生じてくる.

論説

腸管重複症—自験例2例と本邦の統計的観察

著者: 池田恵一 ,   大神浩 ,   中原国広

ページ範囲:P.833 - P.839

 腸管重複症(消化管重複症)(Duplication of alimentary tract)とは,Ladd & Gross1)の提唱に従い,従来,腸管嚢腫enterogenous cyst, ileum duplex, jejunal duplex,胸腔内胃嚢腫等と呼び馴らされていた一連の疾患の総称であり,いずれも,小腸では腸間膜付着側に発生し(胸腔内では,後縦隔,胃では大彎側,直腸では背側),消化管と密に接して,内面では消化管粘膜で被われ,その壁には平滑筋層を有している.
 私共は,回盲部および小腸にそれぞれ発生した腸管重複症の2例を経験したので,従来の本邦報告例を統計的に観察し,いささか考察を加えて報告する.

手術侵襲と酸塩基平衡—とくに低K性アルカロージスについて

著者: 辻秀男 ,   中村泰也 ,   和田浩一

ページ範囲:P.841 - P.845

 手術後にみられる電解質など各種代謝の変化は今日かなり詳細に知られている.そしてこれらの知見が手術の安全性を高めるのにきわめて大きな役割をはたしていることは疑う余地がない.
 このさいに認められる代謝変化は諸種内分泌機能を仲介として手術侵襲に対して生体が示す防衛機能にほかならない.しかしこのような防衛機能はときとしてかえつて生体に不利になる場合のあることが知られている.また術後反応の正常なパターンから逸脱した異常反応を示すものもある.これらに対して適切な処置を行なうことは術後管理における一つの要点であろう.

患者と私

患者の顔

著者: 福田保

ページ範囲:P.850 - P.851

 長い間外科領域での生活をふり返つてみると,忘れ得ないいくつかの患者の顔が浮んでくる.治療に手古摺つた患者でも,幸に健康を回復し得たものもあるが,手を尽したにも拘らず死んでいつた患者には忘れ難いものがある.また思い出せない患者から突然会つて感謝されることもあり,また手術創を見て思い出して患者の顔を見なおすこともある.
 四十数年前外科臨床に入つて間もない頃である.ある痔瘻の患者の顔には強く印象に残されたものがあつた.私が東大青山外科に入つた頃は医員が少なく,1年足らずで施療患者のベット12床を1人で受け持つことになつた.間もなくその青年の痔瘻患者は翌日手術予定がきまり,患者から痔瘻は結核から来るのでしようかと問われるままに,そう言われていますと簡単に説明してしまつた.当時私は組織標本を何例か作つていたが,実際病巣に結核性変化を示したのは極めて少なく,多くは瘢痕組織から成つていることを知つていたが,患者に対する説明が不十分であつたかと思う.

学会印象記

第4回国際脳神経外科学会に参加して

著者: 吉岡真澄

ページ範囲:P.852 - P.854

 昨秋,第4回国際脳神経外科学会に参加する機会をえたので,思いつくままに感想をのべてみる.ただ,非常に大きな学会であるので,すべてに参加したわけでなく,その印象も私個人のきわめてかたよつたものであることをお許し願いたい.

グラフ紹介

西ドイツの新しい救急医療活動—フランクフル卜市Notarztwagen-System

著者: 鈴木又七郎

ページ範囲:P.855 - P.857

 西独フランクフルト市で,新らしく試みられたN.A.W.S.を紹介する前に,少しく述べておきたいことがある.つまり,傷病者の救急輸送と救急医療が調和された運営を実現するために,これからの救急体制をどのように進めたらよいだろうか? という問題である.考えてみるとこれには二つの現実の問題に焦点をあわせることができると思う.
 まずその第1は,次々に誕生する新興都市,しかもその都市が東京と同じ轍を踏んで,過密都市への形態を辿り,激しい人口集中は反動的に,都市周辺の過疎地帯を出現してゆく.こうした都市構成に対応する救急体制の基礎的編成が重要課題になつてくる.率直にいつて,新興都市の都市化に応じた救急体制が,他の行政より遅れ取り残されているのが実状であろう.これというのも,乏しい市町村の財源,殊に薄弱な消防予算から捻出される,消防救急隊(救急業務)の運営に到つては,すでに限界に達しているといえよう.それで救急体制弱体化の補充強化は,まずもつて思い切つた国の財政援助と,現地各界の理解ある協力が発展に導くひとつの道であると考えねばなるまい.さて第二は,都市中心地域の救急医療機関の配置状況と,その周辺では相当の格差が実証されている,過疎地帯の救急体制の劣勢は,実に覆うべくもない.ことに山間僻地を貫通してゆく,高速道路の救急体制に到つては,関係各都市は積極的にこの問題をとりあげて,整備強化を急がなければいけないと思う.

外国文献

脳底massive aneurysm,他

ページ範囲:P.861 - P.864

 クモ膜内腔のmassive an. は稀で診断むずかしく,病理所見にも問題がある.Bull(Brain 93:535, 1969)は♀16,♂6,計22例,うち16例が50歳以上の自験例を展望した.内頸動脈Ⅳ部(脳内)6例(♀4,♂2),内頸分岐部2例(♀のみ),前交連2例(♀のみ),中脳動脈3例(♀),脳底動脈終末5例(♀3,♂2),椎骨脳底動脈のfusiform an. 2例(♂),椎骨動脈頭蓋内枝2例(♂),椎骨動脈の頭蓋入口部1例(♀)である.症状はfailing vision 9例,failing vision+headache 6例,epilepsy+headache 3例,頭痛,半麻痺,意識障害1例,頭痛,記憶喪失,下肢不安定1例,頭痛・嘔吐1例,手tremor 1例,精神異常6例,その他3例で,かなりまちまち.plain X-Pでは13例正常,石灰化5,鞍圧迫4. an. に沿うcurvilinear石灰化はslightで見おとされ易い.血管造影は術前不可欠だがmural thro-mbiで正しいsizeは判らぬことが多い(12例あり).pneumographyでdefectとなっているより血管造影像が小(5例)は手術成功しやすい.mural thrombiあり.クモ膜下出血(6例)は診断むずかしく予後よくない.

講座

消化器疾患の手術—B.術後管理ならびに合併症

著者: 川俣建二

ページ範囲:P.865 - P.871

Ⅰ.術後の管理
 手術が終了してから麻酔の覚醒までの数時間は麻酔医の管理のもとにある.術後の数時間はまず,ショックの予防と,呼吸系の管理が重点で,術中の輸血は出血量の1.5倍をすることで一応十分である.循環血量が減少すると体内組織の酸素欠乏がくる.それがショックの基礎となるもので,Davisは傷害に対する生体反応としての体内酸素欠乏の時期が最初に現われ,これが12〜72時間もつづくという.それにつづいて組織の崩壊が起こり,窒素平衡も負となるのである.
 a)呼吸系:呼吸系に関しては気道の確保が第一で,気道内分泌物をよく吸引して酸素を十分補給することである.必要に応じICU(Intensive Care Unit)に入れて管理する.時には酸素テントを用いる.特に老人では肺合併症がもつとも早く現われる合併症として注意を要するもので,老人では許すかぎり,ICUにおいて管理するようにした方が安全である.PCO2,PO2の測定は呼吸性アシドージスの判定に必要な検査である.

症例

脳圧下降剤投与により誘発された急性硬膜外血腫

著者: 早川勲 ,   益沢秀明

ページ範囲:P.873 - P.877

 社会情勢の変化に伴なつた頭部外傷の増加は一般の脳神経外科への関心を昂めると同時に,一般外科医がその治療に直面する機会を著るしく多くした.頭部外傷急性期の治療にさいして,まず問題とされるのは適切な初期治療で良好な予後の得られる急性頭蓋内血腫であるが,それと共に治療の根底概念として忘れられないものに脳浮腫の問題がある.脳浮腫の概念も最近では脳神経外科医の間だけにとどまらず,広く一般に普及した感がある.そして,脳浮腫に対する原因療法としてのステロイド投与法も1)2),すでに常識化されたとみることが出来るが,一方でその対症療法ともいうべき高張溶液による脱水療法も盛んに行なわれている.
 そもそも,ステロイド投与による脳浮腫治療法が確立するまでは,高張溶液の静脈内投与による脱水療法は頭蓋内圧亢進治療の主流をなしていた.特に,尿素3)の著るしい頭蓋内圧下降作用が知られて以来,脳手術後,あるいは脳外傷に対してその使用はなかば常識化された感があつた.尿素に引き続いて,さらに好ましい脳圧下降剤としてマンニットール4)5)が開発され,その臨床経験はこのものをより使い易くしている.現在,脳浮腫治療の根幹は,ステロイドと高張溶液,特にマンニットールであるということができる.しかし,ここで注意すべきことがある.

巨大な下腹部腫瘍を伴つた低血糖症

著者: 小林衛 ,   笠岡千孝 ,   塩谷陽介 ,   池田典次 ,   細井英雄 ,   日台英雄

ページ範囲:P.879 - P.885

 近年,低血糖を伴う巨大な膵外腫瘍例が報告され1-22),新しい症候群として注目されている23-25).われわれは最近,低血糖症を伴なう巨大な下腹部腫瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

特異な形態を呈し術前診断困難であつた脾腫の1例

著者: 角本陽一郎 ,   青木春夫 ,   船曳孝彦 ,   渡辺衛

ページ範囲:P.887 - P.891

 腹部腫瘤,特に左季肋部腫瘤の鑑別診断は原発臓器として脾臓,結腸,胃,大網,腎臓,膵臓,後腹膜等が考えられ,診断が困難である場合が少なくない.われわれは最近謄上部で左右季肋部にわたる巨大な上腹部腫瘤があり,消化管透視,Selective Celiac Angiography(S. C. A.)等でも診断困難で,198Auによる肝シンチグラムおよび197Hg-M. H. P. による脾シンチグラムで確診をえ,手術により確認した特異な形態の脾腫を有する肝前門脈閉塞症の1例を経験したので,慶大外科における門脈圧充進症101例の脾腫の程度および形態についての検討と若干の文献的考察を加えて報告する.

アニサキス幼虫によると思われる胃好酸球肉芽腫の1例

著者: 小田達郎 ,   光武達夫

ページ範囲:P.893 - P.895

はじめに
 最近消化管アニサキス症として,胃壁ならびに腸壁の好酸球性肉芽腫が外科的治療の対象として問題にされるようになつてきた.われわれは胃の粘膜下腫瘍の診断のもとに胃切除術を施行し,剔出標本から好酸球性肉芽腫内に変性崩壊した虫体を発見したことによりアニサキス幼虫によるものと考えられた1例を経験したので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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