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文献詳細

雑誌文献

臨床外科25巻7号

1970年07月発行

文献概要

特集 腫瘍の病理と臨床 論説と症例

甲状腺嚢腫穿刺液の濾紙電気泳動学的分類とその意義—甲状腺の微小癌検索に関する第2報

著者: 大西韶治1

所属機関: 1国立福岡中央病院外科

ページ範囲:P.1083 - P.1087

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はじめに
 甲状腺嚢腫は,甲状腺手術例の19%程度にみられているが1)3),自験例でも最近の手術例65例中13例,20%に得ており,比較的しばしば遭遇する疾患である.甲状腺に発生する嚢腫は,原発性のものと続発性のものとに分けられており,通常みられるのは続発性嚢腫で,その原因としてColloidの鬱滞,リンパの鬱滞,出血および腺腫中心部の軟化等があげられている4).しかし実際には,嚢腫穿刺液の色調のみからはこうした成因を判別することは困難である.
 その臨床診断上の根拠としては,甲状腺上に一致した半球状の腫瘤以外にほとんど症状が無く,腫瘤の辺縁境界は比較的明瞭で,表面平滑,硬度は一様で弾性軟ないし硬,時に波動を触れ,腫瘤の周辺および頸部リンパ腺に異常所見無く,穿刺7)により液が得られること等があげられようが,こうした症例の穿刺液について,濾紙電気泳動を施行したところ,その色調に関係無く,これを3型に分類することができた.また一方,甲状腺嚢腫の自験例13例中2例に,術後の精査により癌および癌と思われる所見が得られたところから,嚢腫穿刺液の濾紙電気泳動上の分類が嚢腫の成因に関連して,甲状腺嚢腫に併存する癌の検索上にも何等かの有用性をもつのではないかと検討を加えた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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