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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科26巻10号

1971年10月発行

雑誌目次

カラーグラフ 外傷シリーズ・10 顔面外傷の臨床

Ⅲ.顔面骨骨折—下顎骨・上顎骨骨折

著者: 原科孝雄 ,   礒良輔 ,   田嶋定夫

ページ範囲:P.1538 - P.1549

 今回は顔面外傷シリーズ最終回として顔面骨折のうち下顎骨骨折,上顎骨骨折の症例を紹介する.両者の治療にあたってもつとも重要なことは正常咬合の再現にあることはもちろんである.下顎骨骨折の手術は比較的たやすくできるので専門的知識なしに安易に行なわれ,のちに不正咬合などの後遺症に悩まされる例も少なくない.上顎骨骨折はその診断,治療法がこのような救急患者を扱う第一線病院で良く知られておらず,とくに強力な外力により生ずる上顎骨骨折は脳神経外科的症状を伴うことが多く,その適切な治療が不当に遅らされる例もままある.

座談会

外科学会のあり方をめぐって

著者: 斉藤淏 ,   星野潤 ,   出月康夫 ,   本多憲児 ,   岡村宏 ,   池田貞雄

ページ範囲:P.1550 - P.1566

 外科学会のあり方に関しては,従来からその構成,運営および学術発表活動についても,いろいろと批判があり,また,現在の多様化した医学的・社会的状況に対応していくための体質改善が望まれておりましたが,今年の総会を契機に総合調整特別委員会が発足し,活動をはじめています.今回はその委員会の活動を中心に,これからの外科学会のあり方をめぐつて,活動報告とともに今後の展望を話し合つていただきました.

外科の焦点

腹膜炎の新しい治療法—第1編

著者: 渡辺晃 ,   村上穆 ,   俣野一郎 ,   柴崎信悟 ,   佐藤定見 ,   今井徹 ,   小林正義 ,   加畑治 ,   松本高 ,   小川純一 ,   軍司光夫 ,   大関庸一

ページ範囲:P.1567 - P.1584

はじめに
 腹膜炎となればいかなる場合も術後にドレーンを挿入するのが原則で,外科医たるものこの点に疑問を持つ者はないであろう.しかしこの既成概念は抗生物質の発達した現在において覆返せざるを得なくなつたのである.換言すれば頭の切換えをしなければならない段階にきたといつても過言ではないと考える.というのは本論文にかかげた症例の治験例をご覧になれば今までの概念では到底信じられないような症例が次々とでてくるからである.
 われわれは国立水戸病院に着任以来過去8年間に156例の各種汎発性腹膜炎,あるいは腹腔内膿瘍例を経験した.初期の頃は閉鎖性ドレナージを行なつていたが,39年の大森例以降はほとんどの症例にまつたくドレーンを入れなかつた.すなわちこれだけの治験例が提示されれば腹膜炎はわれわれの行なつている閉鎖法療法で全治せしめることができると断言しても過言ではないと思うからである.そこで筆者は論文を2編に分けて第1編では症例報告の形をとり,第2編ではこれらの総括について言及したいと思う.学問の進歩をはばむものは時として既成概念である.われわれは昭和38年から46年までの症例をピックアップして順を追つて報告し,概念打破に対する挑戦状として提起してみたのが本論文である.

最近の麻酔

高齢者麻酔の問題点

著者: 河口太平

ページ範囲:P.1587 - P.1594

はじめに
 高齢者とは,加齢により循環系・呼吸系をはじめとする全身の生理機能,ことにその予備力の減退した状態の人である,と定義できよう.したがつて,高齢者に対する麻酔・手術のリスクは高いと,一般に考えられており,現在なお,患者および外科医の双方から,ことにその選択的手術は敬遠されがちであるのも,無理はないと考えられる.しかし一方,高齢者に対する救急手術の術後死亡率が異常に高率であることも指摘されるところで1)2),でき得るならば,選択的手術を多くして救急手術を少なくすることが望ましいと思われる.高齢者の生理解剖的変化をよく理解し,適切な術前術中術後管理により,重要生理機能をうまく維持することができれば,高齢者の麻酔・手術は必ずしも危険この上ないものではないかもしれない.以下,私どもの日常の経験を中心に,問題点を若干考えてみたい.

論説

門脈圧亢進症に対する剔脾—脾—腎静脈吻合との遠隔成績の比較検討による剔脾の適応

著者: 青木春夫 ,   船曳孝彦 ,   角本陽一郎 ,   羽鳥俊郎

ページ範囲:P.1597 - P.1606

 門脈圧亢進症では約50〜80%ときわめて高率に食道静脈瘤を認め,出血の頻度も約30〜50%と高い1-4).門脈圧亢進症の中でもとくに肝硬変症の予後はRatnoff and Patek5)など多くの報告があるが6-7),初回吐血の死亡率はOrloff8)の1,000例以上の集計では65.3%ときわめて高く(第1表),吐血1年後の生存率も20〜30%にすぎない4-7)11)13).そこで門脈圧亢進症における食道静脈瘤出血の予防,治療は外科医にとつて重要な課題となつていて,多くの手術術式による努力が行なわれている.
 わが国の門脈圧亢進症に対する治療は,減圧効果がすぐれていることから門脈系—下大静脈系吻合による減圧手術が一時期盛んに推奨され,行なわれていたが,遠隔成績上肝硬変症に対しては術後脳症の発現率が高いことから,肝硬変症に対する門脈—下大静脈端側および側々吻合には批判的となり4)14-17),最近数年前からは肝硬変症に対しては経胸的食道離断術,近位胃切除術など,門脈圧を減じないで食道静脈瘤への血行遮断を目的とした術式を推奨しているものもある18)19)

肛門および直腸に原発せる悪性黒色腫—治験例および本邦集計例を中心に

著者: 秦温信 ,   内野純一 ,   安倍俊一

ページ範囲:P.1607 - P.1613

はじめに
 悪性黒色腫はきわめて悪性で予後不良とされているが,消化管に発生することはまれで本邦報告例は28例にすぎなく,その全例は肛門および直腸に発生している.
 最近直腸肛門部に原発したと考えられる悪性黒色腫の1例を経験し,外科的に切除する機会をえた.患者は術後1年2カ月を経過した現在,転移と思われる症状は認められず健康な日常生活を送つている.

脳外科

簡便なThird Ventriculographyの試み

著者: 佐藤修 ,   関野宏明 ,   真柳佳昭 ,   佐野圭司

ページ範囲:P.1615 - P.1619

いとぐち
 定位脳手術で,targetを決定する指標となるのは,レントゲン写真側面像で,前交連と後交連を結んだ線,すなわち,AC-PC lineである.したがつて,前交連,後交連の正確な位置を決定することは,定位脳手術にとつて不可欠である.そのためには,レントゲン撮影側面像で,前交連,後交連を同時に造影する必要がある.従来,第三脳室の造影には,気脳撮影または気脳室撮影によつていたが,満足すべき第三脳室の造影が得られぬことが多かつた.その原因は,somersaulting chairを使用しないと,第三脳室に選択的にairを集めることが困難で,第三脳室の充影が不十分であつたり,あるいはまた,airが多すぎると,側脳室の陰影と重複し,正確な前交連,後交連の位置を決定することが困難であつたためである.そこで,直接,第三脳室内に少量のairを注入することができれば,側脳室の陰影と重複することがなく,しかも,第三脳室を選択的に造影することができ,必ずしも,陽性造影剤によるventricu—lography3)によらなくともよいであろうと思いついた.

グラフ

ICUの規模と運営

著者: 緒方博丸

ページ範囲:P.1624 - P.1627

 Intensive Care UnitやCoronary Care Unitの運営が円滑にゆくかゆかないかは,ひとえにその管理と運営にある.日本大学板橋病院のICUは管理と運営の規約を初めに決めて開始したので,現在よく運営されている.規約はICU運営要領(ICUの憲法の如きもの),運営細則,ICU入室に関する看護婦の勤務要領,ICU勤務主治医心得等に分れて,各医師および看護婦はこの規則を守つている.
 これから始める人のためにお推めする事は,1)隔離室を多く作ること.2)部長室・婦長室・医師室・看護婦室・面会室・仮眠室等の副室を多く作ること.3)ICU,CCU,NCUなど多く作つても,看護婦不足の折から必ずcentral monitorは1カ所に設備すること.4)打点式記録計は不要である.5)患者頭側を通路側にすること.6)手術室の近くに設ること.

外国文献

破傷風,他

ページ範囲:P.1631 - P.1631

 破傷風毒素(T.T.)はinhibitory synapsesに,CNS全般を通じひろく急速に作用するといわれる,T.T.はCNSのsynaptic membraneに結合し,脊髄ではde-ndriteの変化が最も著しい.Illis(Lancet,1:826,1971)は1958〜1969年間入院45のT(7例死,1例は頭部外傷症状の故除外)をfollow upしたが,12例は国外に去り調査できなかつた.結局25(♂16,♀9)例を展望10〜20歳9例,50〜70歳8例,T回復後3m〜11y,5〜9月に多い.まずirritability,memory disturbanceは回復後も5例(20%)残つたが,それは高度であつた.sleep disturbanceは6例(24%),このうち4例は1年,1例は2年,1例は3年つづいた,fits,myoclonusは各々5例,fits,myo合併2例.myoは左右対称的,多くは上肢.fitsは全く意識を失い卒倒30秒〜4分.fitsは6m〜12mまでつづいた.myoも6〜12m.Sphincter disturbanceは男になく女2例排尿開始がおくれた.

トピックス

組織適合性に関する最近の動向

著者: 辻公美

ページ範囲:P.1632 - P.1633

 アメリカからの日本観光遊行団の中に,古い知人がいたので,ある夕方ひまをみて会食をした.「今なにをしているか」という質問で,"組織適合性の検査を行なつている"といつたら「自分のHL-Aは2,Ba,Te5, LND,4aだ」とカードをみせてくれた.外国では患者または患者の家族が,tissue typingとかtissue matchingなどの話をしていることを耳にするが,わが国で,histocompatibilityに関して,一般の方でHL-Aを知つている人はまず皆無であろう.
 組織適合性をのべる時には,いつも輸血の話がひきあいに出されるが,日本ではどんな辺鄙な病院,医院でも,輸血をする前に,赤血球抗原,ABO型を検査しないところはない.

学会印象記

第3回小児外科学会総会—シンポジウム「小児総合医療施設のあり方」—司会者の一人として

著者: 守屋荒夫

ページ範囲:P.1634 - P.1635

 第3回日本小児外科学会総会(会長 植田 隆・大阪市立小児保健センター)は,6月12日(土)から14日(月)までの3日間,大阪森之宮の青少年会館で開催されました.本学会は,その開催まぎわに会長の勤務している大阪市立小児保健センターにおける医療事故に関する患者家族側との紛争が表面化し,両者の話し合いを契機として,学会シンポジウム「小児総合医療施設のあり方」の中に医師や医療本来の在り方と医事紛争の法律的・社会的問題との接点に関する討論を盛りこんだ企画が予定され,今後の学会のあり方についても問題提起をしたものとして各方面から注目を集めました.

講座・4

臓器冷凍の理論と応用—Ⅳ.低温灌流保存

著者: 隅田幸男 ,   八木博司

ページ範囲:P.1639 - P.1646

はじめに
 移植免疫および組織適合性に関する最近の進歩はきわめて著しく,これに伴つて,臓器移植ことに腎移植の手術成功率は著しく向上してきた.しかし,臓器移植を行なう場合,donor源の確保はきわめて重要な問題であり,living donorに依存する限り数多くの制約があるため,屍体臓器の活用に関する研究は,古くから多くの関心をもたれながらも,移植免疫学の進歩に比べて,今日はるかに立ちおくれた状態にある.その理由として,生体内諸臓器は阻血障害に対してきわめて弱く,不可逆性変化を起こし易いこと,および前章までに述べた如く,臓器保存に関する低温生物学が未だ十分発達していないことによるものと考えられる.
 しかし,臓器移植ことに腎移植の臨床例が増加するにつれて,屍体臓器活用の必要性はきわめて高くなつてきており,このような観点から,現時点で試みられている臓器保存の現況を展望することは意味あることと考えられる.

症例

腸管の非上皮性悪性腫瘍の2例—消化管非上皮性腫瘍の統計的観察

著者: 山際裕史 ,   稲守重治 ,   大西武司 ,   竹内藤吉

ページ範囲:P.1647 - P.1652

はじめに
 消化管に発生する腫瘍の大半は上皮性のものであり,非上皮性のものはいずれの部分においても比較的まれである.腫瘍は組織源となるものがあれば,いかなる部分からでも発生し得るにもかかわらず,臓器,組織によつて,その発生頻度を著しく異にする.消化管では,平滑筋由来のものがその大半(非上皮性腫瘍の)を占め,リンパ節由来のものがこれにつぎ,結合織,脂肪織由来のものがこれにつぐ.しかしながら,これら各腫瘍にあつても,部位によつて,その頻度がかなり異なる.腸管では,非上皮性腫瘍は小腸末端部に,上皮性腫瘍は大腸に多いという傾向がある.
 本稿では,消化管の非上皮性腫瘍の統計的観察と,とくに腸管の非上皮性悪性腫瘍についての若干の考察を加えることとする.

腸間膜嚢腫の1例

著者: 奥村堯 ,   稲川勝義 ,   岸田司 ,   大室儁 ,   亀頭正樹 ,   大橋秀一 ,   滝本昇 ,   安岡邦彦 ,   木戸口公一

ページ範囲:P.1655 - P.1658

 私どもは比較的まれな小腸腸間膜に発生したリンパ系と思われる腸間膜嚢腫の1例を経験したのでここに報告する.

回腸切除を行なつた腸チフスの1治験例

著者: 南一明 ,   瀬戸山元一 ,   長瀬正夫

ページ範囲:P.1659 - P.1662

緒言
 連日,原因不明の大量の下血が続き,重篤なる状態に陥つた患者に対して,開腹術を行なつたところ,腸チフスによる出血であることが判明したが,回腸切除術を行なつてこれを救命し得た.このような症例はきわめてまれであると考えるので報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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