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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科26巻11号

1971年11月発行

雑誌目次

特集 小児外科の焦点 ヒルシュスプルング氏病—誌上シンポジウム

ヒルシュスプルング病について

著者: 植田隆

ページ範囲:P.1697 - P.1699

 ヒルシュスプルング病の本態論の変遷や手術法の変遷については,いまさら論述する必要はあるまいと思われる.
 すでに本態論およびそれに基づく手術法が,1948年の革命的進歩の勃発以来大きく右往左往することのない現時点では(細部ではなお明確にすべき2,3の問題が残されているが),臨床を実施する医師としては次の3点に注目を払つていただければよいと考える.

ヒルシュスプルング病の診断

著者: 小林尚 ,   平本靖彦 ,   森田建

ページ範囲:P.1701 - P.1711

はじめに
 従来のHirschsprung病は高度の腹部膨満を伴う慢性便秘を主徴とする幼小児期のものであつたが,近年診断技術の向上によつて新生児症例に注目され,その病態もしだいに明らかにされてきた.新生児症例は幼小児期とは趣きを異にし,急性イレウス症状を主徴とし,しばしば小腸結腸炎を併発し死にいたることも少なくなく,早期診断,早期治療がきわめて重要となるものである.本症の診断に関しレ線学的なcaliber changeの証明が診断基準とされてきた.しかし新生児期においては,この所見が必ずしも証明されないことより,他のレ線所見に注目する意見や,本症以外の類似疾患でも一時的にcaliber changeを示す場合があることより,組織学的検索が強調されてきた.また最近,cholinesteraseやcatecholamineによる組織生化学的研究で,本症の診断とその病態の程度を知る方法13,22)や,直腸肛門反射における内肛門括約筋の反応より診断する16,19,26)報告がみられ,筆者らもこの点に対し検討を加えているが,他稿で述べられると思うので割愛し,本稿ではレ線学的検査および直腸生検を中心に述べたい.

ヒルシュスプルング病の生理学的診断

著者: 鈴木宏志

ページ範囲:P.1713 - P.1718

はじめに
 典型的なヒルシュスプルング氏病の診断はさほど困難でない.生後まもなくから始まる頑固な便秘と腹部膨満,繰り返してあらわれるイレウスあるいは腸炎症状は本症に特徴的である.肛門指診の結果"tight"で空虚な直腸,肛門管が証明されれば,ヒルシュスプルング氏病の可能性は一層高い.肛門指診直後に多量の排ガス,排便がみられることもしばしばある.バリウム注腸によつて狭小部と,それにつづく移行部,膨大部がみられれば診断はほとんど確実である.直腸生検による病理組織学的診断が必要な症例はむしろまれである.
 これに対して非定型的な症例,たとえば最近話題となつているshort segment aganglionosis-megarectum症例,あるいは浣腸などによつて良く管理され,明瞭な巨大結腸像のあらわれていない症例に,理学的診断,レ線検査のみでヒルシュスプルング氏病の診断を下すのは容易でない.

ヒルシュスプルング病の手術—われわれの行なつている治療方針

著者: 秋山洋 ,   石井勝己 ,   小平義彦 ,   佐泊守洋

ページ範囲:P.1719 - P.1722

はじめに
 われわれは,過去およそ6年間にヒルシュスプルング病96例に対して根治手術を行なつてきたが,初期の症例と現在とでは,その治療方針上ではかなりの変遷がみとめられている.
 われわれの経験した症例にもとづいて,その変遷を中心にして現在行なつている治療方針について述べてみたい.

ヒルシュスプルング病の手術—私はこうやつている

著者: 矢野博道

ページ範囲:P.1723 - P.1730

はじめに
 ヒルシュスプルング氏病の根治術はSwenson法1)をはじめ数多くの変法,改良法が発表せられているが2-5),いずれの術式でも多少のagangliaは残るものである.最近,内括約筋の一部切除がこれらの術式に併用されているが,これは肛門管の収縮機能を減弱させ,ganglionic colonからの排便推進力をaperistalticな残存直腸の機能的閉塞に打ちかたせるためと考えられる.
 すなわち,正常のinnervationがある結腸の排便推進力がshort aperistaltic(aganglionic)seg-mentのresidual functional obstructionに打ちかてば排便があるわけで,このためにはremnant aganglionic rectumが短かいほど有利と考えられているが(註1参考),内括約筋反射の異常(肛門管のachalasia)を取り除いて,propulsion-acha-lasia balanceを打破しておくこともまた重要と思われる.

ヒルシュスプルング病の手術—Z型術式と肛門直腸筋切除

著者: 池田恵一

ページ範囲:P.1731 - P.1734

Ⅰ.治療方針
 最近,根治術式の改良,手術の熟練に伴い,根治手術の時期が早くなつてきたのが,各国共通の傾向であるが,われわれの術式も,比較的手術侵襲が少なく短時間で手術が終了することから,できれば早期に1次的に根治手術を行なうことを原則としており,安全な年齢として一応生後3ヵ月以上,体重6kg以上の症例におこなつている.しかし,それ以下の年齢にも全身状態良好例では行なつた経験がある.最近のわれわれの根治手術を行なつた症例を見ると,1〜2ヵ月8例,3〜5ヵ月13例,6〜11ヵ月11例となつている(第1表).
 このように比較的早期に根治手術を行なうため,新生児期の本症に対して,全例にcolostomyを行なうことはしない.便秘,腹部膨満,嘔吐等を示す本症患者に対しては,まず浣腸排気,腸洗を入念に行なつて症状の寛解を計り,保存的療法が可能か否かを確かめる.かかる保存的療法が奏効せず,依然としてイレウス症状の持続するものに対してのみcolostomyを行なつている(第1図).

ヒルシュスプルング病の手術—われわれのいわゆる駿河法について

著者: 尾崎元 ,   駿河敬次郎

ページ範囲:P.1735 - P.1738

はじめに
 ヒルシュスプルング氏病の治療に関して画期的な手術が1948年Swensonにより報告されたが,この術式にもいくつかの問題点があり,その後これらの改良を目的としてDuhamel法(1957年)をはじめ種々の術式が考案され,わが国でも池田氏法などすぐれた手術が発表されてきた.
 われわれが1960年から1970年まで賛育会病院および順天堂医院で経験したヒルシュスプルング氏病は86例で,このうち69例に根治手術を施行した.施行された術式は,いわゆる駿河法39例,Duhamelおよびその変法23例が主なものであり,その手術成績は第1表のごとくであつた.いずれの術式も採用初期の頃には合併症がみられたが,これは術式に対する不慣れや,管理上に問題があつたと考える.しかし,駿河法の最近になつて改良された術式については見るべき合併症もなくきわめて良好な成績を得ている.

ヒルシュスプルング病の手術—私はこうやつている

著者: 里村紀作

ページ範囲:P.1739 - P.1743

Ⅰ.Hirschsprung氏病根治手術の施行年齢,および各術式の適応について
 一般に,排便のように訓練を要する機能は,生後可及的早期に始める方が効果が高い.Hirschs-prung氏病の患児の根治手術も,年齢の高低にかかわらず,組織損傷の程度に差がなく,病因を十分に除き得るなら,乳児期に施術するに越したことはない.
 新生児期に,救急処置として,人工肛門を設置した場合,それより肛門側にあるganglionic seg-mentにもinactive atrophyを起こす.また人工肛門を造設せずに,浣腸などによつて管理していると,多少とも便のうつ滞に起因する結腸炎,腸管の膨大,腸壁の肥厚などを惹起する.かかる変化は,年齢が長じるにしたがつて増悪し,根治手術を困難ならしめ,手術成績にも悪影響をおよぼす.したがつて,根治手術はできる限り早期に行なうことが望ましい.

座談会

小児ヘルニアの問題点

著者: 角田昭夫 ,   長島金二 ,   横山穰太郎 ,   飯島勝一 ,   田村重宏

ページ範囲:P.1744 - P.1754

 小児外科の手術のうち,外鼠径ヘルニアの手術は最も数が多く,全体の半数近くなることが普通である.一方,一般外科医の方々にとつても,乳児外鼠径ヘルニアを手術する機会は次第に増加している.いまや,「オムツがとれたら手術」という方針は一時代前のものとなつてきた.しかし,この座談会で論じられているように,乳児外鼠径ヘルニア手術にも,なおいくつか検討しなければならない問題点が残されているようである.

カラーグラフ 外傷シリーズ・11 泌尿器外傷の臨床

Ⅰ.泌尿器外傷の初療と腎外傷

著者: 大原憲

ページ範囲:P.1674 - P.1683

 泌尿器外傷について,2回にわけて図示解説するが,使用する症例の番号を一連番号とした.症例により,図の前後するものもあるので,症例番号を参照されたい.

グラフ解説

交通災害泌尿器外傷—その初療を中心に(Ⅰ)

著者: 大原憲

ページ範囲:P.1685 - P.1688

はじめに
 昭和40年8月1日.済生会神奈川県病院に併設された神奈川県交通救急センターが,その救急活動を開始して以来,交通外傷患者の受診は年々増加し,昭和46年3月末日現在,別表のような数に達した.この間,泌尿器系外傷も少なからずみとめられた.
 ここでは,センター開設後5年8カ月間における交通災害泌尿器外傷の統計的事項を略記するとともに,外科および泌尿器科前任医ののこした診療業績を基に,筆者赴任後の小経験を加え,当センターにおける泌尿器外傷治療の概略を述べる.多少とも参考になれば幸いである.

外科の焦点

転移性肺腫瘍の治療成績—とくに手術剔出肺における病理組織学的所見と手術成績について

著者: 高橋邁 ,   橋本邦久 ,   長島康之 ,   三浦千司

ページ範囲:P.1689 - P.1695

はじめに
 肺は,全身混合静脈血が通過するため,あらゆる臓器に発生した悪性腫瘍は,末期にはその10〜30%が肺に転移巣を形成すると報告されている1,2)
 近年,悪性腫瘍に対する診断ならびに治療法の進歩に伴い,転移性肺腫瘍に対して強力な抗癌剤による化学療法,および内分泌依存癌の肺転移例に対しては内分泌療法の併用が試みられ3-5),かなりの効果を得たという報告がみられ,また,(1)原発巣が完全に剔除され,(2)肺以外の臓器に転移がなく,(3)肺転移巣は孤立性であるか,多発性のものでも,1肺葉ないし1側肺に限局しているなどの基準6-11)を充たすものに対しては肺切除療法が施行され,その遠隔成績の報告が数多くみられるようになつた6-14)
 当研究所付属病院において昭和46年3月末までの過去27年間に診療した転移性肺腫瘍は117例あり,これらのうち肺切除を行なつたものが22例あった.これらについての治療成績ならびに,悪性腫瘍の肺転移機序を解明し,肺転移防止対策を得ることを目的として手術剔出肺について病理組織学的に検索した成績について報告する.

医療の眼

犬と猿・嫁と姑・医者と医者—4.オープンシステムの病院について

著者:

ページ範囲:P.1718 - P.1718

 国公立病院で新設や増築の企画があり,これに地区の医師会が反対すると,必らずといつてよいほど,病院側は,新らしくできたものをオープンシステムにするという.が,これがまた実際にオープンシステムになつたためしがないので,開業医側の不信はつのる一方である.
 大体わが国においてオープンシステムが可能かどうかを検討してみる必要がある.オープンシステムといえばアメリカを思い起すほどであるが,アメリカの医療構造が,日本と基本的に異ることは,開業医(家庭医)は外来を行なうのみで,ベッドをもたず,病院は日本の病院のように,外来を主体にしない.

外国文献

腎recipientのde-novo脳腫瘍,他

ページ範囲:P.1759 - P.1759

 Penn(Transpl.Proc.,1:106,1969)がhomograftの患者にde-novo malignancyを始めて見,以来Starzl一派は世界の腎移植5,000名,心移植170名をしらべepithelial malig.28例,mesenchymal malig.24例を見つけた.Denverグループの移植後4カ月以上生存184renal recipient(8年間)に11例(6%)のmalig.を見ており,このmalig.発生は単なる偶然とは思われない.さてDenverグループSchneck(Lancet 1:983,1971)は脳だけのde-novo malig.を蒐集した.これは上記mesenchymal 24例中11例(46%)で大部分がreticulum cell sarcoma(9例)で,unclassified lymphoma 2例.mesenchym malig.は大部分lymphomaだから,lym-phomaの半数が脳ということになる.一般に脳のlym-phoreticular malig.は稀(0.04〜1.5%)なのに,renal recipientでは8例(73%)が脳に原発し脳に限局した.

患者と私

メスとともに36年

著者: 赤倉一郎

ページ範囲:P.1760 - P.1761

 一外科医として,メスを握り始めてからちようど満36年になるから想えば光陰矢の如しというか,日暮れて道遠しというべきか,いずれも偽らざる最近の心境である.

海外だより

ヨーロッパにおけるHirschsprung病治療の動向

著者: 木村茂

ページ範囲:P.1762 - P.1764

はじめに
 "SwensonはSwenson術式に,Duhamelは彼の方法に,Soaveもまた彼の方法に一応満足しているのではなかろうか.私も私の術式による結果にほぼ満足している".Rehbeinはこのように話していたが,昨年4月より西ドイツに留学し,その間,西欧諸国と帰途アメリカをたずね,Rehbein,Ehrenpreis,Max Grob,Pellerin,Swenson,FisherおよびBillなど小児外科の先達,特に先天性巨大結腸症の治療に大きく貢献した人々の手術をみたり,懇談したり,その他Rickham,Nixon,Mauritzen,Ekesparre,Haβeなど現在西欧の小児外科の指導的立場にある人々との話しからも,はじめに述べたRehbeinの言葉の妥当なことが理解できた.
 1年間Rehbeinのもとで小児外科臨床の指導を受け,その間,胆道閉鎖に対する私の手術成功のため,イギリス,オランダ,デンマークおよびドイツ各地の小児外科医から手術に招かれ,さらに国際学会出席の際その他の西欧各国をたずね,帰途もアメリカを廻つて,各国の小児外科医と懇談したり手術を見学する機会を得たので,先天性巨大結腸症に対する西欧およびアメリカでの研究の動向を,紙数の都合もあり,おもに手術に限つて述べてみたいと思う.

トピックス

湿気と臨床—PH2OからSauna-tentまで

著者: 長谷川博

ページ範囲:P.1766 - P.1767

 「O2テントの中では爆発が起こることがある.だからO2は爆発性だ」という人は滅多にいないが「水蒸気は見えるものだ」と思う人は少なくない.たとえば蒸気機関車の汽笛ややかんの白い湯気こそ水蒸気だと考える人は結構多い.また哺育箱やO2テントの内壁に露滴がついていると,「中の湿度は100%以上」と考える人が圧倒的に多かろう.「いやそれでも器内にいる人の吸気の湿度は90%以下かも知れぬ」などという人はまれである.
 このように,湿度〜湿気〜水蒸気〜H2O分圧の理解には相当ひどい混乱がある.なぜか?それは,用語のあいまいさのほか,高校で教えられた「ガス分圧の概念」が,一般によく理解されていないからであろう.そこで「湿気と臨床」の本論に入る前に,分圧に関する筆者なりの幼稚単純な理解法を述べてみたい.まず箇条書きに議論を進めて分圧の概念を整理すると, a)物量の計測方法と分圧の概念:量を測るには重さで測る方法とツブをcountする方法とがある.たとえばお米の量はツブをcountせずに重さで何kg,tonという.しかし人出の表現には,何tonといわず何人とcountする.

学会印象記

第24回日本胸部外科学会印象記

著者: 今野草二

ページ範囲:P.1768 - P.1768

 第24回日本胸部外科学会総会(会長 石川七郎 国立がんセンター院長)は,9月2日(木)から3日(金)の2日間,東京・虎の門の国立教育会館,内幸町のイイノホールで開催された.この学会ではシンポジウムの他に,胸部外科領域での進歩の最先端にある問題を取上げたセミナーが企画され,実際にとり組んでいる人々が集まつて活発な討論がなされました.

論説

四肢の急性動脈塞栓症と外科治療

著者: 田辺達三 ,   久保良彦 ,   太田里美 ,   横田旻 ,   橋本正人 ,   杉江三郎

ページ範囲:P.1771 - P.1775

はじめに
 四肢の急性動脈塞栓症は突発的に発症し,四肢のみならず,生命の危険をも危うくする重大な救急疾患である.最近本症は増加しているといわれているが,それには平均寿命の延長による高齢層の増加,血管心疾患の増加,人工弁移植症例の増加などが考えられている.したがつて本症の治療法については古くから種々検討されてきており,今日では早期診断による早期の塞栓摘除術が基本的方針として強調されてきている4,20).しかし高齢者で,心疾患をもつ症例に発症することが多く,緊急手術を要する関係から,塞栓摘除術の手術成績は,とくに本邦においては満足すべきものではない1,5,12,18)
 われわれが最近扱つた症例は10例で,いずれの例にも塞栓摘除術を施行しているが,適切な手術時期を失し,高齢者で,高位閉塞例も多く,その成績は不良である.ここにこれらの症例を検討し,本症の診断,治療について論じ,治療成績の向上のための要点について考察してみた.

手術手技

豚を利用した肝切除の訓練

著者: 長谷川博 ,   北浜昭夫 ,   福田護

ページ範囲:P.1777 - P.1788

 肝切除は,腹部外科を取り扱う者にとつて膵頭十二指腸切除またはそれ以上に経験してみたい手術の1つであろう.しかし何ぶん症例の数が限られており,練達の域に達することは不可能に近い.したがつて外科医はほぼ例外なく経験不足で肝腫瘍にたち向わなければならず,もしも出血が制御できなければ患者の死はほぼ確実に目前にあるというジレンマ〜宿命を背負つていることになる.したがつて執刀者の気持としては,ろくに泳げないものが飛込台の最上段から飛び込むような恐怖感と緊張感に駆られるものである.ことに肝の右葉切除ではしかりであり,外科医,麻酔医,手術室看護婦の一体となつた高いレベルの協調,および輸血と術後管理に関する病院の態勢も大きく関係する.国立がんセンターで経験された症例は幸いにして小児肝がんだけでも開院以来12例であり,試験開腹または肝動脈挿管のみに終つた3例を除けば全例に肝切除が行なわれているが,約8年前の第1例のstormyな手術経過は今なお関係者の脳裡に焼きついており,最近の症例ですら術前術中の執刀者の精神的な負担は巌のごとく重いものである.

講座・5

臓器冷凍の理論と応用—Ⅴ.第8回低温生物学会と第13回国際冷凍学会の話題から

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.1789 - P.1799

はじめに
 「臓器冷凍の理論と応用」の第Ⅳ回目を脱稿した著者はWashington,D.C.へ赴いた.第8回低温生物学会(Ⅷ Annual Meeting of the Society for Cryobio-logy,SFC)と第13回国際冷凍学会総会(ⅩⅢ Inter-national Congress of Refrigeration,International In-stitute of Refrigerationの主催,IIR)の2つの学会に出席せずして,表題のテーマを完結させることはできなかつたからである.
 Ⅷ SFCはWashington Hilton Hotelで8月29日〜9月2日,ⅩⅢ IIRはSheraton Park Hotelで8月27日〜9月3日の期間開催され,9月2日〜3日は両学会のjoint sessionが持たれ世界の35カ国から出席者が一堂に会し,お互の研究現況を報告し,討議し,交見しえたことはまことに意義深いことであつた.学会抄録,著者のメモ,テープ,写真などをたよりに,本稿の主題をめぐつての話題を総括しておこう.ただし,あくまで著者が興味を抱き,理解し得た範囲内での内容であることをおことわりしておかねばならない.

症例

アメーバ性肝膿瘍の3例

著者: 長瀬正夫 ,   南一明 ,   瀬戸山元一

ページ範囲:P.1803 - P.1809

緒言
 われわれは最近4年間に3例のアメーバ性肝膿瘍を経験し,はじめの2例では診断に難渋し,うち1例を肺合併症で失なつた.しかし,第3例ではこのにがい経験をもとにして,肝シンチグラムおよび腹腔動脈造影法を行なつて,単発性の巨大な肝膿瘍を発見,手術時に得た膿汁の性状から,アメーバ性肝膿瘍と確信,適切な治療法により全治させることができた.こうした経験が諸家の参考になれば幸いと考え報告する.

腎移植患者に発症した腹膜炎—3症例

著者: 木内政寛 ,   岩崎洋治 ,   雨宮浩 ,   岡村隆夫 ,   横山健郎 ,   小越章平 ,   佐藤博

ページ範囲:P.1811 - P.1817

はじめに
 臓器移植後は免疫抑制剤の使用によつて,多少にかかわらず各種の臓器が障害をうけるが,そのひとつのあらわれが感染症に対する抵抗力の減弱である.
 さきに,クリプトコッカス髄膜炎10),クリプトコッカスによる肺膿瘍,肺結核など腎移植後に併発した症例について報告したが,今回は腹膜炎を併発して死亡した3例について述べる.これら3例の死亡例はそれぞれ異つた原因で腹膜炎が発症し,それぞれ一般外科の常識からは想像しがたい経過をたどつた.現在われわれの腎移植例は生体腎移植5例,死体腎移植11例であるが,そのうち死亡した7例中拒絶反応で失つた症例は1例にすぎない.これに反し,感染症では本稿での対象例である3例とすでに報告した移植後3年4カ月目にクリプトコッカスの肺膿瘍,脳膜炎,敗血症で死亡した計4例である.

α-fetoprotein testが陽性を呈した胃癌・肝転移の1例—α-fetoprotein test(第2報)

著者: 岡村純 ,   栗山洋 ,   藤本高義 ,   阪本俊一 ,   大島進 ,   鵜飼卓 ,   大城孟 ,   村上文夫 ,   陣内伝之助 ,   桜井幹巳 ,   宮地徹

ページ範囲:P.1819 - P.1822

はじめに
 わたくしたちは,最近α-fetoprotein(以下αfと省略)が陽性を呈した胃癌の肝転移1症例を経験したのでここに報告し,あわせて若干の考察をこころみた.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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