icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

臨床外科26巻3号

1971年03月発行

雑誌目次

特集 緊急手術後の合併症・Ⅱ

食道静脈瘤破裂による出血に対する緊急手術後の肝不全

著者: 杉浦光雄 ,   市原荘六 ,   野村満 ,   二川俊二

ページ範囲:P.403 - P.412

まえがき
 食道静脈瘤の出現は門脈圧亢進症状の1つであり,食道静脈瘤破裂による出血の防止は門脈圧亢進症の外科的治療の対象となつている.門脈圧亢進症を来たす疾患としては種々のものがあるがこれらには肝硬変症,肝線維症,いわゆる先天性門脈異常,慢性日本住血吸虫症,肝部下大静脈閉塞症,腫瘍などによる肝外門脈閉塞症などが含まれている.最近の傾向として組織学的に肝線維症によるいわゆるBanti症状群よりは肝硬変症が増えており,教室で過去6年半にわたり食道静脈瘤に対する手術として食道離断術(東大第2外科法)を行なつているが,70例中肝硬変症30例,肝線維症25例で肝硬変症の方が手術例としては増えている.肝硬変症を手術対象とすれば高度肝障害例もかなり含まれ,術後肝不全のおこる可能性は増大する.
 門脈圧亢進症の外科的治療面からみれば食道静脈瘤に対する術式として門脈圧亢進の概念から減圧手術が当然想定され,このための血管吻合手術が標準術式として過去数十年にわたり行なわれている.

不整脈・高血圧・冠不全患者の緊急手術における麻酔と術後管理

著者: 岡田和夫

ページ範囲:P.415 - P.425

はじめに
 緊急手術患者が既往として高血圧,動脈硬化,不整脈,冠不全を持つている揚合,外科医,麻酔医は術前,術中,術後を安全に過すような努力がなされている.近年,高齢者が増し,手術適応も拡がり従来では手術対照にならぬような前述の患者もわれわれの麻酔や手術範囲に入つて来た.手術はスムースに実施されたにもかかわらず術後に既往の心,循環系疾患が原因で死亡するのでは,手術適応の拡大の意義に反する.術後の管理でhypoxia,hypercapneaという呼吸面への対策,電解質バランス,体液,酸塩基平衡面への配慮が重視されているが,これらの因子は同時に心機能に重大な影響をもつものであるから,心機能自身の管理のみでなく,これら諸因子の管理の重要性はこの面からも理解できる.ここでは主に不整脈,高血圧,冠不全のある患者の術前より術後にわたる管理法,術中の不整脈発生などにつき対処の仕方を述べることにする.

開腹手術後各種臨床ショックとその治療—とくに急性腹部症術後例を中心として

著者: 渡辺晃 ,   俣野一郎 ,   佐藤定見 ,   今井徹 ,   小林正義 ,   加畑治 ,   松本高 ,   村上穆 ,   柴崎信悟 ,   大関庸一

ページ範囲:P.427 - P.454

はじめに
 イレウス,急性腹部症,あるいは開腹手術後ショックの問題にはいろいろあるが,われわれはきわめて重症な疾患を根治的に手術している関係上このようなショック例に遭遇することがかなり多いので経験例を中心として興味ある症例をピックアップして症例報告の形で論じてみた.

急性膵炎とショック

著者: 村田勇 ,   広野禎介

ページ範囲:P.457 - P.468

はじめに
 急性膵炎は,従来より比較的まれなる疾患と考えられていたが,近年になり,本症に対する一般の認識が高まり,かつ,診断技術の向上とも相まつて,年々増加の傾向にある.本症の治療方針としては,以前より,内科的保存療法が第一義的とされてきたが,急性膵炎の診断は,しばしば困難であり,とくに,胃・十二指腸穿孔,絞扼性イレウスなど緊急に外科的処置が必要な急性腹症との鑑別が難しい場合が多いので,最近になり,本症に対する早期開腹の必要性,外科的療法の意義が,再検討されつつある8)14)18)
 われわれも,急性膵炎に関しては,以前より,臨床的に種々検討を行ない,その診断,治療につきたびたび報告し7)9)10),早期開腹による早期診断,早期治療の必要性を強調してきた.現在までに,われわれが,外科的治療を行なつた急性膵炎症例は94例であり,その大部分は,急性腹症として来院したものである(第1図,第1表,第2表).

Poor risk患者の緊急手術後の感染症

著者: 隅田幸男

ページ範囲:P.473 - P.481

はじめに
 Poor riskで緊急手術をうける患者の体力あるいは抵抗力は衰弱しているので感染しやすく,いつたん感染すると病状はさらに重篤となり,時として菌血症へ,つづいて細菌性shockへと発展する.元来,完全に無菌的な術創はあり得ない.むしろ,創は全て細菌の発育にとつては最適の温度と湿度をそなえた培地なのであるから,患者の抵抗力が低下している場合には,如何に清潔な術創でも結果的には容易に汚染し感染に導く.患者の皮膚,鼻咽腔,大気,術者の手指,手術器具類などは感染のごく普通の原因となる.したがつて,開放創を伴つた外傷の揚合,感染は必発する.
 手術侵襲そのものによる疲憊あるいは術創の痛みによつて体動が制限されるために,二次的に生じる感染もある.

カラーグラフ 交通外傷シリーズ・3 胸部外傷の臨床

Ⅰ.胸廓の損傷

著者: 前中由巳 ,   松井康信 ,   今村洋二 ,   原科孝雄 ,   伊藤隆雄

ページ範囲:P.382 - P.389

 胸部外傷の原因は種々あるが,交通災害にもとづくものが30〜60%を占めている.大別して胸廓の損傷と胸腔内臓損傷とに分けられる.これら外傷に随伴して起こる血胸,気胸,縦隔血腫,皮下気腫,喀血等の随伴症状が臨床的に認められるのである.
 胸廓の損傷は胸壁挫傷が最も多く,ついで肋骨骨折がしばしば認められ,連続骨折が特徴である.一般に第4肋骨から第8肋骨にわたる骨折で,部位は背部が最多で,次で側胸部である.連続数本以上の節片肋骨骨折を前胸部より側胸部にわたり認める場合,いわゆる,Flail Chestの像を呈し,呼吸循環等に著しい障害をきたす.その治癒は胸部外傷治療上の一課題と考える.

外科の焦点

上部消化管吻合部における遺残縫合糸の問題—内視鏡的立場から

著者: 遠藤光夫 ,   中山恒明 ,   矢沢知海 ,   羽生富士夫 ,   鈴木茂 ,   中村光司 ,   山田和毅

ページ範囲:P.391 - P.399

はじめに
 内視鏡器械の進歩により手術術後の場合にも積極的に内視鏡検査を行なうことができるようになつて,種々の問題点も明らかにされてきた.従来,胃切除術後の残胃については,吻合部潰瘍,残胃胃炎,遺残縫合材料など,経時的な変化も含めて種々報告されている.また,食道再建術後の吻合部附近の内視鏡所見についても,X線検査で知りうる以上に多くの変化のあることを知り,とくに術後逆流性食道炎の消長,術後再発の早期の診断には内視鏡検査がより有用であることを報告してきた.今回は食道及び胃でしめされる上部消化管再建術後の吻合部において,特に外科的に関心のある遺残縫合糸について主に内視鏡的所見より,2,3の検討を加えてみるつもりである.

ニュース

第2回城西外科懇談会

著者: 守屋荒夫

ページ範囲:P.481 - P.481

 地域医療の向上と,相互の親睦をはかるために生れた城西外科懇談会の第2回会合は,1月23日(土),清瀬小児病院で開催され,約40名の出席で,最近各施設で経験された救急外科症例とその反省を中心議題として,活溌な討論が行なわれた.
 当日の演題とその要旨は以下の通りである.

外国文献

原子爆弾被爆と癌,他

ページ範囲:P.483 - P.483

 Jablon(Lancet 2:1000, 1970)ら広島長崎の研究.hypocenterから1500m内にいた母親,1500〜1599mにいた母親,2000〜2999mおよび3000〜3999mにいた母親から生れた児童(premature radiation)について,本邦の一般児童統計を比較して,うかがつている.生後10年内に癌ないし白血病で死亡1例(1946年3月生れ少女,1953に肝癌死.1136m地点で母は175rad被爆.その他では18歳白血病死1(母1rad被爆).21歳直腸癌死1(母1950m,4rad被爆).1968年の本邦1歳未満の癌死期待率0.75で,これは1と大差はない.Mac Mahon(J. Nat. Cancer Insti 28:1172, 1962)によれば被爆0で1万の生産児の発癌率7.3,被爆0.6radで9.3,1.2 radで11.3といわれる.他の研究者はprenatal radiationと発癌率とは直接関連性がないとしている.そこで1〜5rad量を妊娠第3期にうけた胎児が生後10年で発癌するかどうか,こういう問題が残されているわけである.

海外だより

楓の黄葉(1)

著者: 渋沢喜守雄

ページ範囲:P.484 - P.485

 これから何回も訪米できまいし,たとえ行つても滞在目数はひどく短いだろうと考え,こんどは,思いきり目数を長く(規定をこえて),一切観光はやめにし,できるだけ多くの大学と,病院を足と目と口とで存分にエンジョイする計画をたてて,先方と打ちあわせ出かけた.考え方によれば,こんなつまらぬ旅はないし,クタビレモウケにすぎない.シンシナチのAltemeier教授も,アンァーバーのChild教授も,その他も,年賀状でオ前はあまり無理をしすぎた,今後はモットゆつくりしろと書いてきてくれたし,コロンバスのZollinger教授はフットボールしか見せられなくて残念だつたといつてきてくれた.しかし25の大学,300〜2500床級の各種病院60は十分に歩き,食堂で食事し,誰もいない土・日も出かけてレジデントやナースや患者と話したり,救急手術をやつたり,とに角,毎朝コムラガエリが起るほど,歩き,目を皿のようにして便所の隈までのぞいた.おかげで10回訪米の分ぐらいは,知ることができた.しかし太平洋岸は何時でも行けると思つて,シカゴ滞在中に予定を変え,Scribner教授,Pitts教授,Hunt教授など多くの重要な部分を省いたのは,今になつて惜しかつたと思う.というのはKolffとScribnerとが全く考え方を異にしているし,PittsはPatrickらやMayfield等と見解が違うのを帰国してから思い当つたからである.こうした点は御参考になるだろう.

トピックス

消化管の吻合法について

著者: 掛川暉夫

ページ範囲:P.486 - P.487

 科学の目覚しい進歩により過去において,すでに解決されたと思われていた事柄に対しても新たな疑問が投げかけられ,全く逆な解釈をされることが少くない.特に科学的に単純に割切るにはあまりにも複雑な生体を対象とする医学においてはよりいつそうの感が強い.近代外科学史上最も輝かしい成果の一つといわれている消化管吻合手技についても同様なことがいえる.消化管吻合は1810年代Travers等の腸管創の治癒は漿膜面の接合が重要であるという基礎的研究をもとに1820年Le-mbertがSeromuocular invesion sutureを行なつたことに初まり,その後CzernyがLembert縫合に粘膜縫合を加えたいわゆるCzerny-Lembertの二層吻合,さらにはAlbert-Lembert法による二層吻合が行なわれるようになり現在ではこの吻合法が最も普遍的な消化管吻合法として用いられていることは衆知のところである.しかし現在なお消化器外科において,吻合部縫合不全,および狭窄は術後の手術死亡率,さらには予後におよぼす影響はきわめて大きく,現在なおこれらに対する対策が消化吸集問題とともに消化器外科における大きな課題の一つとなつている.すなわち吻合法に関しては連続吻合法,結節吻合法,または器械,接着剤にする吻合法,吻合材料としては絹糸,クローミック腸線,ナイロン糸またはクリップ使用等の種々検討が行なわれている.

外科医のための法律知識

医療の社会的・法律的責任—1.診療に対する画期的認識と医療事故の防止

著者: 穴田秀男

ページ範囲:P.488 - P.493

 最近頻発する医療事故を検討するに,きわめて僅かの不注意から医学界一般の権威に関するような重大な結果が発生している.また今少しく心すれば問題にならなかったであろうと考えられる医療担当者の言動が紛争の原因をなしている場合がすこぶる多い.
 これらを思い合せて,はなはだおこがましい言い分ではあるが,医療担当者特に医師の,日常診療に対する姿勢と診療とは何かというきわめて一般的な認識から再出発すべき時機に来ていると思う.

講座・3

腹部外科と動脈撮影—Ⅲ.膵疾患,ことに影像よりみた膵癌の予後

著者: 鈴木敞 ,   川部克己

ページ範囲:P.499 - P.507

はじめに
 早期診断のむずかしさ,憂慮すべき遠隔成績,切除術式の煩雑さなどからみると,膵癌も前回でふれた肝癌と軌を一にしている.それだけに動脈撮影の膵疾患の診断および治療上における役割は無視できぬものがある.
 膵癌のときに示される動脈撮影像については本邦ではすでに田坂1)2)らをはじめ諸氏により十分に特徴づけられた.本稿ではこの動脈撮影法の更に一歩すすめた形での臨床的応用をはかるべく,撮影により示される膵動脈枝を膵内分枝,膵密接分枝,膵周辺分枝に3分し,それぞれの浸潤性変化によって示される病巣の拡がりに応じて,膵癌を4群に分類,各群の切除率や予後との関連を検討した.また膵癌初期診断の可能性やその血管構築に言及し,膵疾患診断における動脈撮影法の価値を他の診断技法と比較検討してみた.その結果,動脈撮影は単に膵疾患の診断のみならず,膵癌の手術適応や予後判定の上にも多くの知見を与えていることが判明した.

論説

小範囲胃切除症例の検討

著者: 榊原幸雄 ,   松村長生 ,   櫛田俊明 ,   蔵本守雄 ,   渡辺英生 ,   原田隆浩 ,   谷本邦彦 ,   河東極 ,   平野宇一 ,   橋本常世 ,   西島早見 ,   田北周平

ページ範囲:P.511 - P.521

はじめに
 消化性潰瘍の外科的治療において,その術式を選択するにあたつては,胃液分泌相と潰瘍の発生部位が重要な因子となることは論をまたない.しかし,従来,わが国においては胃潰瘍も十二指腸潰瘍も二者択一的に取り扱われてきたきらいがあり,術式としても,いわゆる広範囲胃切除方式が一律に行なわれてきた.
 欧米では消化性潰瘍,特に十二指腸潰瘍に対しては胃液分泌機構を基準とする術式が,すでに広く行なわれており,20有余年の歳月を経た現在,かかる術式を評価し得る時期がきたと思われる.

症例

回腸ならびに回盲部に併存した非特異性慢性炎症性腫瘤(慢性型Crohn病)の1例

著者: 川崎茂喜 ,   小出来一博 ,   黒沢孝夫 ,   長島金二 ,   今泉明 ,   東紳太郎 ,   清家矩彦 ,   乾道夫

ページ範囲:P.523 - P.528

はじめに
 回盲部に腫瘤を形成する疾患は癌腫,結核をはじめとして古くから回腸末端に限局性の腫瘤形成を特徴とする非特異性慢性炎症性疾患のあることが知られており,Crohnら1)はこれをはじめRegional ileitisと報告して以来,衆目の集まるところとなったが,回腸末端に限らず消化管のすべての部位に発生することは,その後Harris2),Colpら3)が報告して以来広く認められている事実である.
 従来,本疾患の成因,病態に関する知見は発生が稀であるためもあり,その定義すら極めて不明であり,一連の境界疾患との同,不同等分類も確立されていない現状である.

胃の腺癌とGlomus tumorの合併例

著者: 山際裕史 ,   竹内藤吉 ,   大西武司 ,   稲守重治 ,   堀英穂

ページ範囲:P.531 - P.533

はじめに
 腫瘍には,それぞれに好発臓器,組織があつて,年齢の頻度などについても,比較的一定した傾向のみられるのがふつうである.しかしながら,以外な部位に思わぬ腫瘍の発生することもあり,発生源となる組織が正常に,あるいは迷入などによつて存在すれば,いかなる場所にどのような腫瘍が発生しても不思議ではなく,むしろそれが腫瘍というものであるともいえる.
 本稿では,瓜床部にみられることの多いGlo-mus tumorが,胃にしかも腺癌と合併して生じていた極めて稀な症例を報告し,若干の考慮を加えることとしたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

78巻13号(2023年12月発行)

特集 ハイボリュームセンターのオペ記事《消化管癌編》

78巻12号(2023年11月発行)

特集 胃癌に対するconversion surgery—Stage Ⅳでも治したい!

78巻11号(2023年10月発行)

増刊号 —消化器・一般外科—研修医・専攻医サバイバルブック—術者として経験すべき手技のすべて

78巻10号(2023年10月発行)

特集 肝胆膵外科 高度技能専門医をめざせ!

78巻9号(2023年9月発行)

特集 見てわかる! 下部消化管手術における最適な剝離層

78巻8号(2023年8月発行)

特集 ロボット手術新時代!—極めよう食道癌・胃癌・大腸癌手術

78巻7号(2023年7月発行)

特集 術後急変!—予知・早期発見のベストプラクティス

78巻6号(2023年6月発行)

特集 消化管手術での“困難例”対処法—こんなとき,どうする?

78巻5号(2023年5月発行)

特集 術後QOLを重視した胃癌手術と再建法

78巻4号(2023年4月発行)

総特集 腹壁ヘルニア修復術の新潮流—瘢痕ヘルニア・臍ヘルニア・白線ヘルニア

78巻3号(2023年3月発行)

特集 進化する肝臓外科—高難度腹腔鏡下手術からロボット支援下手術の導入まで

78巻2号(2023年2月発行)

特集 最新医療機器・材料を使いこなす

78巻1号(2023年1月発行)

特集 外科医が知っておくべき! 免疫チェックポイント阻害薬

icon up
あなたは医療従事者ですか?