icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科26巻8号

1971年08月発行

特集 今日の外傷—外傷患者の初診と初療

Ⅳ.胸部外傷

肺肋膜損傷の診断と治療方針

著者: 鈴木一郎1

所属機関: 1公立岩瀬病院

ページ範囲:P.1243 - P.1248

文献概要

はじめに
 肺肋膜損傷は,胸部損傷の中でももつとも特徴のある損傷であるのは肺肋膜(胸壁)の解剖学的,生理学的理由による.胸郭を形成する肋骨は,長く細く,容易に破損する.胸郭に外傷が加わるとまずdamageをうける運命にあるのが,この弱く,しかも広い容積をもつた胸郭肋膜および肺であることは説明するまでもない。すなわち鈍性,鋭性いずれでも外力が加わると,肋骨胸郭の破損とそれに伴う肋膜および肺の損傷がおこり,胸郭の破損の軽微な場合でも,胸壁を貫いた鋭性外力は肋膜肺を損傷する.このように胸壁あるいは肋膜,肺の損傷がおこると必然的に肺の換気機能不全が出現し,それを速やかに処理しないと呼吸困難のために受傷者の生命は危険にさらされる.また肺肋膜損傷は,その解剖学的理由から,容易に大出血をおこすことも特徴的で,とくに胸腔内出血は,その頻度と出血の程度が想像を絶することが多く,これによるshockと血腫による肺および心臓大血管の圧迫のため重大な事態がおこりやすい.したがつて肺肋膜損傷の際に出現する肺肋膜周辺の異常な生理学的変化を,速やかにかつ正確に判断し,その状態から直線的に脱出させるため迅速適切な処置を実施することは,胸部損傷の救急処置の基本である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら