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文献概要
特集 頸部血管障害
動脈硬化性頸部動脈閉塞
著者: 上野明1
所属機関: 1東京大学医学部胸部外科
ページ範囲:P.1381 - P.1388
文献購入ページに移動はじめに
頸部の動脈閉塞はわが国では脈なし病,あるいは特発性内頸動脈閉塞といつたいわば世界的にはあまりpopularでない疾患で注意が喚起され,また外科的治療も若年層を中心に行なわれてきた.しかしここ10年間の推移をみると動脈硬化性疾患の数は漸次増加し,このままでゆくと数年で身体の他部位のみならず頸部においても血管外科の主役を演ずるようになると思われる.
著者等はすでにこの部の動脈硬化性閉塞については脳血行不全を示した内頸動脈狭窄の治験例,ならびにsubclavian steal syndromeを伴う鎖骨下動脈閉塞の治験例を発表した1,2).この頸部の動脈閉塞疾患の治療の主眼点は上肢でなくて脳血行の障害であるが,本邦では剖検例の検索から頭蓋外閉塞は極めて少なく,より末梢の頭蓋内動脈,たとえば中大脳動脈,脳底動脈の方に多いという見解がとられてきた3).しかし剖検例では閉塞はともかく狭窄の程度についての判定は困難であつたが,動脈撮影が安全でしかも一般に普及した昨今では,この狭窄がかなりの頻度で存在することが注目されてきている4,5).しかし,根本的な問題は脳血行障害としての脳虚血発作が狭窄性変化による血流の問題のみでなく,塞栓性の因子もあり,それも意外に多いことが世界的に認められるようになつたことである6-9).
頸部の動脈閉塞はわが国では脈なし病,あるいは特発性内頸動脈閉塞といつたいわば世界的にはあまりpopularでない疾患で注意が喚起され,また外科的治療も若年層を中心に行なわれてきた.しかしここ10年間の推移をみると動脈硬化性疾患の数は漸次増加し,このままでゆくと数年で身体の他部位のみならず頸部においても血管外科の主役を演ずるようになると思われる.
著者等はすでにこの部の動脈硬化性閉塞については脳血行不全を示した内頸動脈狭窄の治験例,ならびにsubclavian steal syndromeを伴う鎖骨下動脈閉塞の治験例を発表した1,2).この頸部の動脈閉塞疾患の治療の主眼点は上肢でなくて脳血行の障害であるが,本邦では剖検例の検索から頭蓋外閉塞は極めて少なく,より末梢の頭蓋内動脈,たとえば中大脳動脈,脳底動脈の方に多いという見解がとられてきた3).しかし剖検例では閉塞はともかく狭窄の程度についての判定は困難であつたが,動脈撮影が安全でしかも一般に普及した昨今では,この狭窄がかなりの頻度で存在することが注目されてきている4,5).しかし,根本的な問題は脳血行障害としての脳虚血発作が狭窄性変化による血流の問題のみでなく,塞栓性の因子もあり,それも意外に多いことが世界的に認められるようになつたことである6-9).
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