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症例
術前に疑いをおくことのできた甲状腺髄様癌の1例
著者: 藤本吉秀1 岡厚1 折茂肇2 山口和克3
所属機関: 1東京大学医学部第2外科 2東京大学医学部老人科 3東京大学医学部病理学
ページ範囲:P.1461 - P.1466
文献購入ページに移動甲状腺髄様癌は,甲状腺組織内にある傍濾胞細胞より生ずると考えられている腫瘍であり,calcitoninを産生し血中に高濃度に分泌することが認められている.著者ら1)は,さきに甲状腺原発巣の摘除手術後,とり残した頸部の所属リンパ節内転移が腫大してきたのを切除した時,転移癌組織におけるcalcitonin含有量と再手術時の末梢血中濃度を測定し,ともに異常に高い値を得た.その後2年間甲状腺髄様癌の症例を経験しなかつた.今回新たに1例を経験したが,この例では手術前に,頻脈のあることと,頸部における甲状腺腫瘤およびリンパ節転移の触診所見から,甲状腺髄様癌の疑いを抱き,術中に迅速凍結切片で診断を確かめることができたので,甲状腺腫瘍組織のcalcitonin含有量の測定,電子顕微鏡検査,および術中の血中calcitonin定量を行なうことができた.なおこの症例では,臨床上興味ある所見が2,3みられたので,ここに報告する.
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