icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科27巻11号

1972年11月発行

文献概要

論説

上肢血管外傷の処置—初療の大切さ

著者: 柿木英佑1 上道哲

所属機関: 1厚生会高津病院外科

ページ範囲:P.1589 - P.1595

文献購入ページに移動
はじめに
 工場災害に併発する重篤な血管損傷が近年増加しつつある.なかでも,上肢血管外傷は他の主要臓器血管損傷にくらべて,生命に関する予後はよく,その多くは,第一線病院にて最初の処置がなされる.しかし,その初療が適正でないためにたとえ切断をまぬがれても,後日における上肢の機能に重大な影響をおよぼすことが多い.これまでに,私たちは,重篤な血管損傷を伴う上肢損傷16例(大阪市大2外科11例,厚生会高津病院5例)を診療した.すなわち,完全切断肢5例(成功2例),一部の皮膚や一部の神経のみにてかろうじて連続性を保つているほとんど切断肢5例(成功4例)およびその他6例(成功5例)である(第1表).その他とは,神経・筋・骨いずれか1〜3者の合併損傷を伴う重篤な血管損傷を意味するが,ほとんど切断例よりも解剖学的損傷の程度がやや軽度な例である.もちろん,単純な血管損傷のみの症例は含まれていない.私たちの経験から,上肢各レベルでの血管外傷処置上注意すべき点をのべるとともに,第一線病院での初療の重大さを強調したい.さらに,最近,私たちは,鈍性外力による非開放性四肢血管損傷の7例を経験し,その初療の大切さを痛感したので,ここにあわせて報告したい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?