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文献詳細

雑誌文献

臨床外科27巻2号

1972年02月発行

文献概要

特集 瘻—その問題点

外傷性唾液瘻

著者: 原科孝雄12 田嶋定夫3

所属機関: 1済生会神奈川県病院 2神奈川県交通救急センター外科 3慶大形成外科

ページ範囲:P.199 - P.203

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はじめに
 唾液瘻──salivary fistulaとは唾液腺より分泌された唾液がその正常な導管開口部以外の所から排泄される状態である.唾液腺とはいつても実際は耳下腺からのものであり,他の腺は問題をおこすことは稀であると考えられるので耳下腺のものについて述べる.それは炎症,外傷,手術などによりおこり,そのうち皮膚へ排泄されるものが外瘻,口腔粘膜側に排泄されるのが内瘻である.しかし内瘻は稀な逆行性感染を除けば臨床的に意義は少なく,治療の対象となることは稀である.
 本症は比較的稀であり,それ自身生命をおびやかすようなことはないためとかく軽視される傾向にある.しかし食事毎に流出する唾液と,外傷後では常に併存する顔面神経麻痺による顔面の変形は患者にとつては精神的,肉体的に著しい負担となる.また治療をする医師の側からは従来唾液瘻や唾液嚢腫は相当にやつかい視され,治療不能を宣言したり,無方針に手術を行なつても治療の目的を達しないばかりか,かえつて顔面神経麻痺などの障害を増大させて患者を非常な不安におとしいれる傾向にあつた.耳下腺・耳下腺管損傷は初期に適切な治療を行なえば比較的容易に行なえる.また一旦陳旧化して瘻を形成してもその解剖に精通し,耳下腺造影に従い症例にあつた治療法を行なえば必らず治癒しうるものである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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