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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科27巻3号

1972年03月発行

雑誌目次

特集 黄疸の外科

黄疸の診断

著者: 小坂淳夫

ページ範囲:P.297 - P.301

はじめに
 黄疸は皮膚または粘膜がビリルビンにより黄染した状態をいうが,厳密には血液中のビリルビン量を測定(通常は血清中の含量)することにより,正常値閾を上廻つた状態(過ビリルビン血症,Hy-perbilirubinemia)にあることを確かめ,皮膚や粘膜が黄染していれば顕性黄疸,黄染のみられない場合は潜在性黄疸と呼んでいる.
 ところで血中ビリルビンは間接型と直接型に分けられ,前者はビリルビンそのものの化学構造を持ち,後者はその抱合型(主としてglucuron酸の抱合)で,間接型ビリルビンは肝細胞にとり込まれ,その小胞体(滑面小胞体)に含まれる酵素(glucuronyl transferase)の作用により直接型に転換されて,胆毛細管に排泄される.そこで,まず黄疸を主として間接ビリルビンの血中増加にもとづく場合と,直接ビリルビンの増加に基づく場合とに分けて,疾病を分類し,診断の役立てに利用してみたい.

肝内胆汁うつ滞症

著者: 市田文弘

ページ範囲:P.303 - P.308

はしがき
 一般に胆汁うつ滞(Cholestasis)というのは,肝内および肝外胆管系に胆汁がうつ滞し,血中にall biliary substanceの上昇をみる状態を指して呼んでいる1).また組織学的には肝小葉内,とくに小葉中心部における著明な胆汁うつ滞の所見をさし,肝細胞およびKupffer細胞内のびまん性,あるいは顆粒状の胆汁色素沈着として観察される2-4).このような所見を示すものとしては腫瘍,胆石などによる肝外閉塞性黄疸,すなわち外科的黄疸を除外すると,肝外胆管系の機械的閉塞が証明されないのに拘らず,著明な胆汁うつ滞像を示し,臨床的には肝外閉塞性黄疸との鑑別がしばしば問題になる肝内胆汁うつ滞症(Intrahepatic Cholestasis)が存在する.この一群の肝疾患を外科的黄疸に対して内科的黄疸,あるいは狭義の肝内閉塞性黄疸と呼称する人もある.
 このうち比較的経過の短い急性肝内胆汁うつ滞症(Acute Intrahepatic Cholestasis)は病因的にはウイルス性肝炎,薬剤起因性肝障害(Drug-induced Hepatic Injury)の一病型,および特殊型としてRecurrent Jaundice of Pregnancy,Benign Recurrent Intrahepatic Cholestasisなどにおいてみられる.

Biliary diversionの病態生理

著者: 内田耕太郎 ,   永松良夫 ,   本庄一夫

ページ範囲:P.309 - P.317

はじめに
 胆汁の主成分であるbilirubinの代謝,排泄機構については,近年電子顕微鏡,放射性同位元素利用などによる研究により新知見が加えられつつある.高bilirubin血症である黄疸のうち,外科臨床上対象になるものは,溶血性貧血などとともに閉塞性黄疸があるが,その原因の主なる悪性腫瘍は,すでに根治手術の時期を失して手術されることが多く治療成績は決して満足できる状態ではない,胆汁の分泌障害があれば,これを人為的に腸管に排泄せしめることにより,黄疽の軽減をはかる外科的手技が胆道再建術である.閉塞部位が肝管分岐部よりファーター乳頭にいたる肝外胆汁路に存在する場合,この原因は先天性奇型,外傷,炎症,結石などの異物,腫瘍などがあげられる.胆石症などは,その原因を除去することにより黄疸を軽減できるが,その他の多くは胆汁の自然的流通路を変更することが必要である.
 われわれが経験した症例をあげて,胆道再建術の病態生理の一端にふれたい.

閉塞性黄疸のSurgical Risk

著者: 土屋凉一 ,   内村正幸 ,   古川正人 ,   赤司光弘

ページ範囲:P.319 - P.324

はじめに
 閉塞性黄疸の外科的治療は,診断技術の進歩,術前術後管理の向上にもかかわらず,その手術成績はなお芳しくない現状である.これは,黄疸に伴う肝機能の低下が必発であること,しかも未だに早期に診断される症例が少ないこと,さらに,悪性腫瘍による閉塞性黄疸—悪性黄疸—の場合,大きな手術侵襲に耐え難い高齢者に多いことなどが原因と考えられる.従つて,本症の治療にあたつては,原疾患の速やかな確定診断とともに,術前肝機能のみならず全身状態の把握にもとづく,綿密なる術前,術中,術後管理が重要である.

黄疸患者の術後合併症

著者: 葛西洋一 ,   玉置明 ,   増田一雄 ,   森田穰 ,   葛西真一

ページ範囲:P.325 - P.330

はじめに
 胆道外科の術後合併症は一般外科学の進歩にともなつて,近年は次第に減少する傾向がみられるが,逆に胆道外科の手術適応も増加しているので,合併症の病態も従来とは変った様相になると思われる.
 たとえば,胆嚢剔除後の合併症の一つである瘢痕性胆道狭窄症の発生なども一定施設毎にみるときわめて少ないもので,そう多くの経験をもつものではないが,全般的になくならないのは,胆嚢剔除という手術の一般化と普及により適応が多くなつたことにも一因があると思われる.

黄疸を伴つた胆石症

著者: 西村正也 ,   久次武晴 ,   五十君裕玄

ページ範囲:P.331 - P.337

はしがき
 日本人胆石の特徴としてビリルビン(以下「ビ」と略)系石が多いことは古く三宅速,松尾が指摘したところである.その原因としては欧米人に比して日本人は脂肪摂取量が少ないことがあげられる.しかるに最近日本人の胆石もコレステリン(以下「コ」と略)系石が次第に増加の傾向にあることが報告され,これは生活環境,特に食事の変化によるところが大きいと考えられる.しかも「コ」系石は主に胆嚢内にみられ,「ビ」系石は主に総胆管,総肝管,肝内胆管にみられる.黄疸の発現頻度は胆石の種類,胆石の部位によつて異なり黄疸発生例は主として胆管結石,肝内結石例にみられるのでこれらを中心に検討を加え報告する.

胆管癌および膨大部癌

著者: 菅原克彦 ,   黒田慧 ,   田島芳雄 ,   柏井昭良 ,   石原敬夫 ,   佐藤長夫

ページ範囲:P.339 - P.351

はじめに
 肝外閉塞性黄疸の病態を招来する疾患は,術後に肝を中心とする諸臓器の代謝失調,循環障害,消化管出血,感染などの合併症を併発する頻度が高く,一般に予後が悪い,外科医はこれらの疾患を診療するに際しては,救急患者に準じて適切な診断プログラムを作り,重点的に病態についての情報を得,合併症がない円滑な経過がたどれるよう入院と同時に治療対策を立てることに留意せねばならない.
 肝外閉塞性黄疸の原因疾患である胆管癌と膨大部癌は,それぞれ特異な病態であり,根治手術を原則とすべきであるが姑息的手術に止まらざるを得ない場合も多いので,治療成績向上に資するため,早期の病態を把握するのに必要な診断上の問題点や,教室で提案する病型分類などを中心に述べる.

膵頭部癌—直接および遠隔成績向上のために

著者: 佐藤寿雄 ,   須田雍夫

ページ範囲:P.353 - P.361

はじめに
 膵頭部癌の治療成績の向上のためには大別して2つの問題がある.1つは早期診断,早期手術により切除率を高めることであり,他の1つは切除手術の直接成績の向上を計ることである.この意味において,従来の根治手術可能例が全症例のうち,いかなる位置を占めるかをretrospectiveに検討することが早期発見に連なり,遠隔成績の向上のために必要であり,直接成績の向上のためには,特に高度黄疸により惹起される病態生理を把握し,手術および術後経過に対処することが肝要となつてくる.
 膵頭部癌は初期においては愁訴も不定であり,診断手技,方法も確立されていないため,他に類を見ないほど予後が悪い.また膵頭部癌に対する根治術式と言われる膵頭十二指腸切除術は直接成績が悪く,合併症も高率であつたため,一時は根治手術術式としての是非論が出るなど,膵頭癌をめぐる問題は非常に多い.本論文では東北大学第1外科教室膵頭部癌症例の症状,検査所見から根治手術例を位置づけし,次いで高度黄疸対策,手術例の検討などの面から膵頭癌治療の現況を述べてみたい.

肝障害を合併する症例に対する麻酔の実際

著者: 天方義邦 ,   古河洋 ,   恩地裕

ページ範囲:P.363 - P.371

はじめに
 術前に肝障害を合併する症例はしばしば,みうけられる.その原因が手術によつて除去される場合は,術後に肝機能が良くなることが期待できるが,手術の目的が肝機能を改善させるのではなく,術前の肝機能障害が単なる合併症として存在する症例に,あえて麻酔と手術を行なわねばならない場合もある.
 最近といつても,もう10年以上も経つたが,ハロセンによつて肝障害が起こる可能性がかなり問題となつて以来,麻酔剤によつてひきおこされるかもしれない肝障害が心配されているのが現況のように思われる.現在使用されている麻酔剤によつてひきおこされる肝障害についての意見をまとめると,大体次のような直接原因と間接原因があるようである.まず,直接的なものが二つ存在すると考えられ,その一つは麻酔剤自体が肝に対する特異的な毒物作用を有するという考え方である1).この場合の特徴は,発症率が高く,潜伏期がほぼ一定して,しかも短かいことである.もうひとつは,麻酔剤があたかも感作物質のような作用をもつていて,アレルギー反応が肝実質内で発生するために肝細胞性障害がおこると考えられている場合である2).次に間接的な原因として考えられることも無視できない.それは麻酔と共に行なわれる手術や輸血が原因となつて肝に悪影響を与える因子を指すものである.その結果,麻酔と手術の両面からここに複雑な肝に対する影響力が作り出されることになる.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・2

甲状腺癌Ⅱ

著者: 原田種一 ,   西川義彦 ,   伊藤国彦

ページ範囲:P.282 - P.283

 前号では,甲状腺癌の大部分を占める乳頭腺癌を理解する目的で,その典型的な症例を供覧した.本号においては,甲状腺癌と,他の甲状腺疾患との併存した症例について述べたい.甲状腺癌が,良性腺腫と併存する頻度は,かなり高いものであるといわれている.このことは,腺腫様甲状腺腫の場合,特に著しい.そのために,腺腫様甲状腺腫を含め,良性腺腫の手術に際しては,術中ならびに術後に,肉眼的および組織学的に,慎重な検索が望まれる.また,甲状腺癌では,甲状腺の全葉がほぼ癌組織により置換された様な場合でも,機能低下に陥ることはなく,機能の亢進をきたすことは,転移を有する症例で報告されているが,極めて稀であり,我々は経験していない.したがって,癌と診断された症例で,機能の異常が認められた場合は,バセドウ病をはじめとする機能性の疾患との併存を考慮するべきである.甲状腺の片葉欠損は,稀な畸形であるうえに,全欠損と異なり,無症状であるので,何等かの甲状腺疾患が疑われて,シンチグラム検査や,手術を受けない限り,発見されることは少ない.

外科の焦点

原発性大腸肉腫—自験8症例と本邦集計201例の報告

著者: 吉川宣輝 ,   麻生礼三 ,   原満 ,   進藤勝久 ,   村井紳浩 ,   安富正幸 ,   陣内伝之助

ページ範囲:P.285 - P.292

はじめに
 消化管に発生する肉腫は比較的稀な疾患であるとされているが,なかでも胃や小腸原発性のものはむしろ多く,大腸に発生する肉腫は稀である.本邦における大腸肉腫の報告は症例報告として文献的に散見される程度であつて,治療方針や遠隔成績についてはほとんど触れられていないのが実状である.
 1954年1月より1971年6月までの間に大阪大学第2外科教室で手術をおこなつた8例の原発性大腸肉腫について検討を行なう.併せて本邦における大腸肉腫報告例を集計し201例を得て検討し,若干の考察を加えて報告する.

患者と私

「病気」ではなく「病人」を治せ

著者: 綿貫喆

ページ範囲:P.376 - P.377

 医者が治すべき対象は「病人」であつて.「病気」ではないと,私は平生から考えている.しかしこのことはいうに易くして,実行はなかなか難かしい.一口に病人を対象とするといつても,患者という一個の人格を対象とする場合,そこには人間対人間という複雑な関係が生じてくる.そして当然の結果として,その関係が調子よくいく時ばかりはなく,気まずい間柄になる場合もありうる.患者が順調に経過した場合には,その患者との間の関係がうまくいく例が多いが,奇妙なことには,患者が元気に退院してからその患者との関係がぷつつり切れてしまつて,そののち全く関係のない赤の他人(?)となつてしまう症例が大部分である.これにたいして,患者がうまくいかなかつたり,さらに不幸な転帰をとつた場合には,患者や家族との間に気まずい関係を生じることが多い.しかしかえつて,このような患者や家族との間の人間関係がスムースにいくこともある.人間関係というものは実に複雑である.

海外だより

アメリカ外科学会総会に出席して

著者: 岡田正

ページ範囲:P.378 - P.380

 本年のアメリカ外科学会総会は10月18日より5日間Atlantic Cityで開かれました.私は昨年Minnesota大学留学中に提出した演題が採用されたので,幸いにも昨年に続いて出席する機会を得ました.本学会は正しくはAnnual Clinical Congress of American Collegeof Surgeonsと呼ばれ,今年は第57回目に当ります.外科学会とはいつても,アメリカでは眼科医,耳鼻科医,婦人科医等も外科医のうちに含まれており,文字通りマンモス学会です.外国からの出席者も多く,一週間の間New Jerseyのこの小さな町は正に国際都市となります.町の中心は大西洋岸沿いに板を張り合わせて作つた長い歩道—Board Walk—で,これに沿つてCon-vention Hallを中心として威風堂々たるさまざまのHotelがずらりと立ち並んでいます.学会期間中,この一本道を皆がぞろぞろと往き来し,たいへんなにぎわいを示します.このBoard Walkは歩行者のみに開放されており,車といえばただ時折ホテル客の荷物を運搬する小さな荷車が走つているだけです.学会本部はこのBoard Walkの中ほどにある大きなConvention Hallにあるのですが,マンモス学会のこととて,これだけではとてもおさまりがつかず付近の7つのホテルにあるmeeting hallを使つて行なわれました.

私の意見

学会シーズンに寄せて—学術集会の企画,運営について

著者: 出月康夫

ページ範囲:P.382 - P.386

はじめに
 医学部紛争以来,日本外科学会の新入会員が減少してきている(第1図).外科自体の細分化とそれに伴う分科学会,研究会の濫立が一つの原因となつていることが考えられるが,外科学会の現状がいろいろな意味で若い医師にとつては魅力がなくなつてきていることが大きな原因であろう.これは必ずしも日本だけに見られる現象ではなく,米国医師会(American Medical Association)においても,同様に若い医師の入会が激減していることが大きな話題にされている.とに角,2,3年前から各方面で「学会のあり方」が真剣に討議されているのは,この現状が学会としても放置しえない段階にきていることを示している.
 世代によつて会員の意志や考え方が異なるのは当然であり,これはむしろ学会の発展には必要なことであろう.種々の世代や環境の会員の意志が積極的に学会の組織と活動にとり入れられていくことが必要である.この意味で私を含めて従来の一般会員が怠慢であつたことは否めない.わが国の外科医の最大の組織である日本外科学会が社会と直結してより有機的な活動を進めていくためには,まずわれわれ現在の会員が自分達の学会にさらに関心をもち,積極的に発言していくことが必要であろう.

境界領域

腹部外科手術と妊娠について

著者: 武内義朗 ,   小原嘉昌 ,   石川修二 ,   小出喜代之

ページ範囲:P.391 - P.395

はじめに
 「女をみたら妊娠と思え」という警句を先輩からよくいわれる.実際その言葉をうつかり忘れて冷や汗をかくこともある.しかし腹部外科手術が直接妊娠に関係していることは経験としては比較的少ないものである.慢性の外科的疾患は,妊娠前や出産後という時期をえらび手術が行なわれたり,すでに妊娠している場合は中絶して外科手術をうけることが多い.たとえ急性腹部合併症でも妊娠中絶が行なわれることが多く,妊娠継続と腹部手術が直接関係をもつことは極めて少ない.
 しかし医学の進歩,社会情勢の変化からくる人間個人の考え方が変わることにより,妊娠中に開頭術や心臓手術が行なわれ母子ともに健全であつたという報告もみられる現在では,腹部外科手術と妊娠継続ということが直接むすびつくことは,今後増加するものと考える.すなわち外科医は妊娠継続とのかかわりあいにおいて腹部外科手術の問題をさぐる必要に迫られている.近い将来,否現在においても,そのような社会的要求の中に医師の責任が問われるべきである.

論説

胆石症の胆嚢内胆汁細菌について

著者: 吉川澄 ,   中原数也 ,   竹谷弘 ,   村上栄一郎 ,   伊藤学

ページ範囲:P.397 - P.399

はじめに
 胆石症において,胆石形成と細菌との関連については,これまで種々検討が加えられているが,胆石の成因に関する細菌の役割は論議のあるところであり,またコレステリン系石とビリルビン系石の生成機序をこの点から同日に論ずることにはもちろん難がある.しかし胆石の存在が胆のうへの細菌の感染を誘発し,また細菌の感染は胆石症の治療を困難にすることは,われわれ臨床家にとつて,ゆるがせにできぬ問題である.われわれは胆石症患者の術前術後の化学療法の一助とするべく,大阪厚生年金病院外科で手術を行なつた胆石症患者について,胆石と細菌の関係,細菌の種類,および検出細菌の薬剤感受性についてのテスト等の検索を行なつたので,その知見を発表する.

症例

石灰乳胆汁の2治験例と本邦報告例の文献的考察

著者: 三輪恕昭 ,   平松正勝 ,   成末允勇 ,   折田薫三 ,   緒方卓郎 ,   岡島邦雄

ページ範囲:P.401 - P.405

はじめに
 石灰乳胆汁は比較的稀な疾患であり,欧米ではかなりの報告がみられているが,本邦では現在までにわれわれの報告を含めて65例を数えるにすぎない1-47)
 本症は1911年Churchmann43)により,結石による胆嚢管の閉塞を伴う,灰白色,練歯磨様物質の胆嚢内容を有する症例として報告されたのが初めてである.

巨大な嚢腫性甲状腺腫の1手術治験例

著者: 大熊祺章 ,   大山満 ,   末永豊邦

ページ範囲:P.407 - P.410

はじめに
 結節性甲状腺腫,嚢腫性甲状腺腫はごくありふれた疾患であり,良性頸部腫瘤として考える時,必ずしも外科的処置を要しない.しかし,巨大頸部腫瘤となつて圧迫症状を呈すれば外科的処置が必要となる.
 私共は鹿児島県の離島,奄美大島において頸部の巨大腫瘤で,外科的に剔出し,1,420gの嚢腫性甲状腺腫を経験したので報告する.

肝内結石症と肝内胆管癌の合併について

著者: 角田司 ,   古川正人 ,   赤司光弘 ,   内村正幸 ,   古瀬光 ,   土屋凉一 ,   福井洋 ,   平井三郎

ページ範囲:P.411 - P.416

はじめに
 胆石症と胆嚢癌の合併については,従来諸家の報告するところである.胆?癌からみると,Sie-gert1)(1893)の92%の胆石合併,Andrews2)(1969)の82%の合併等の報告があり,逆に胆石症からみた場合,Marcial-Rojas3)らは,胆石症手術2,484例中32例(1.3%),Gerst4)は,7,292例中132例(1.8%)に胆嚢癌を合併したとしている.しかるに肝内結石症と肝内胆管癌の合併の報告は少ない.著者らは最近,肝内結石に肝内胆管癌の合併をみた3症例を経験したので,自験例を中心に肝内結石症と肝内胆管癌の合併について述べると同時に,3症例中2例を経皮経肝性胆道造影時の胆汁細胞診により術前に診断を確定し得たことより,胆道系悪性腫瘍の診断における胆汁細胞診の有用性を述べたい.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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