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文献詳細

雑誌文献

臨床外科27巻3号

1972年03月発行

文献概要

特集 黄疸の外科

肝障害を合併する症例に対する麻酔の実際

著者: 天方義邦1 古河洋 恩地裕

所属機関: 1大阪大学医学部麻酔学教室

ページ範囲:P.363 - P.371

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はじめに
 術前に肝障害を合併する症例はしばしば,みうけられる.その原因が手術によつて除去される場合は,術後に肝機能が良くなることが期待できるが,手術の目的が肝機能を改善させるのではなく,術前の肝機能障害が単なる合併症として存在する症例に,あえて麻酔と手術を行なわねばならない場合もある.
 最近といつても,もう10年以上も経つたが,ハロセンによつて肝障害が起こる可能性がかなり問題となつて以来,麻酔剤によつてひきおこされるかもしれない肝障害が心配されているのが現況のように思われる.現在使用されている麻酔剤によつてひきおこされる肝障害についての意見をまとめると,大体次のような直接原因と間接原因があるようである.まず,直接的なものが二つ存在すると考えられ,その一つは麻酔剤自体が肝に対する特異的な毒物作用を有するという考え方である1).この場合の特徴は,発症率が高く,潜伏期がほぼ一定して,しかも短かいことである.もうひとつは,麻酔剤があたかも感作物質のような作用をもつていて,アレルギー反応が肝実質内で発生するために肝細胞性障害がおこると考えられている場合である2).次に間接的な原因として考えられることも無視できない.それは麻酔と共に行なわれる手術や輸血が原因となつて肝に悪影響を与える因子を指すものである.その結果,麻酔と手術の両面からここに複雑な肝に対する影響力が作り出されることになる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

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