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雑誌目次

雑誌文献

臨床外科27巻4号

1972年04月発行

雑誌目次

特集 日常外科の総点検・Ⅰ

頭部外傷の初療

著者: 三河内薫丸 ,   大谷光弘

ページ範囲:P.447 - P.450

はじめに
 時と場所を選ばずに発生する交通事故,労災事故,高層建築の増加に伴う墜落事故等によつておこる頭部外傷は,今後もますます増加しつづけるであろう。頭部外傷の予後は初療における確実な診断,適切な処置によつて決定的な影響をうけることから考えて患者の運命は医師の双肩にかかつているといつても過言ではない.
 現在,急性期頭部外傷の死因としては,大体次のことが考えられる.

潰瘍手術と迷走神経切除

著者: 武藤輝一

ページ範囲:P.451 - P.459

はじめに
 従来,広範囲胃切除術が胃・十二指腸潰瘍に対する普遍的手術とされてきた本邦においても,最近,迷走神経切断術を施行する術式がとりあげられつつある.しかし迷走神経切断術そのものの中にもいろいろの方法があり,また迷走神経切断術に合併する術式にも幾通りもの組合わせがあつて,簡単に1つの言葉をもつて表現することは困難である.この原稿をしたためながら,幸いにも胃・十二指腸潰瘍治療の研究に専心されてきた大井34),山岸45)両先輩のご意見を拝読する機会を得た.若輩の私に"迷走神経切断術についての総点検"などという大きな問題に解答を与える資格はないが,今日施行されている迷走神経切断術を主とした術式について紹介し,意見を申し述べてみたい.
 説明の都合上,下記のごとく略語を使用させていただく.

急性胆嚢炎の手術時期と方法

著者: 星野喜久 ,   内山忠勇 ,   稲垣宏 ,   蓮見昭武 ,   立川裕弘 ,   菅家透 ,   杉浦芳章 ,   松田宏一 ,   平松京一 ,   草野正一

ページ範囲:P.461 - P.467

はじめに
 内科,外科を通じて最もしばしばみられる急性炎症性腹部疾患は,急性虫垂炎と急性胆嚢炎である.
 急性虫垂炎は診断が確定すれば,ほとんどの内科医,外科医が早期手術をとり,中間期,間歇期の手術をすすめる人は少ない.しかし急性胆嚢炎に関しては保守的の医師が多く,特に内科医は原則として保存的療法を行なつているようで,急性虫垂炎に対する考え方と対照的である.同じ急性炎症性疾患で,しかも反復して発症する危険がより多い急性胆嚢炎が内科で保存的に治療されることは,われわれ外科医側にも責任があることと思う.著者は急性胆嚢炎は積極的に早期手術を行なう方針をとつているが,以下その経験を述べ急性胆嚢炎の手術時期と手術方法について考察を加えたい.

イレウス治療の実際

著者: 斉藤淏 ,   馬越正通

ページ範囲:P.469 - P.475

はじめに
 イレウスの治療成績は,近年著しく好転した.癌性腹膜炎や広範囲にわたる壊死を伴つた症例のような宿命的な重症例を除けば,一般に5%以下の死亡率に止まつているといつてもよい.
 その原因としては,早期に診断されることが多くなつたほかに,イレウスの病態に即応した補助的加療,更に麻酔法の進歩などがあげられる.イレウス治療に伴う直接死亡の原因などから始め,細部にわたる検討も必要であるが,まずイレウス治療の実際に即し設問を試み吟味してゆきたい.

急性虫垂炎の病型分類と手術適応—急性虫垂炎計数表使用5年間の成績

著者: 四方淳一 ,   浮島仁也

ページ範囲:P.477 - P.483

はじめに
 筆者らは墨東病院において前任の杉原礼彦博士ならびに筆者らが昭和21年から39年までの間に取扱った急性虫垂炎5,523例の病歴を整理・分析して,急性虫垂炎の病型分類に関連性の深い次のごとき症状および所見をとり出した.すなわち,1)初発疼痛部位,2)悪心・嘔吐,3)排便の状態,4)腹部圧痛の範囲,5)筋性防禦またはブルンベルグ症状,6)体温,および7)白血球数の7項目である3).なお,これらの項目は病歴の記載に従つてとり出したもので,さらに今後病歴の記載範囲が広くなればより関連性の深い症状あるいは所見がみつかるかもしれないことをお断りしておく.
 そして,昭和40年10月以前の代表的症例263例について,次の病型分類のもとに分析を行なつた.すなわち,急性虫垂炎の病型分類として筆者らの採用したものは,a)カタル性虫垂炎,b)蜂窩織炎性虫垂炎(化膿性虫垂炎を含む),c)壊疽性虫垂炎,およびd)虫垂穿孔による汎腹膜炎,の4型である.これらの分類に当つては手術所見のほかに切除標本の肉眼的ならびに顕微鏡的所見より総合判定を行なつた.もちろん,文献2)も参考とした.

成人ヘルニアの治療の実際

著者: 前田昭二 ,   湯浅鐐介 ,   小林進 ,   馬場正三 ,   内田陽教 ,   立川裕弘 ,   大菅志郎

ページ範囲:P.485 - P.496

はじめに
 鼠径ヘルニアの手術法についてはすでに多くの術式が発表されており,現在ヘルニアの手術は一般外科の臨床では,虫垂炎手術と並び最も普遍的なものの一つと言えよう.しかし,今日でも鼠径ヘルニアの再発例や不完全手術例をみることは稀でなく,日常安易に行なわれているこの手術にも一面意外な困難性のあることが感じられる.その原因としては,この手術が虫垂切除術と同様に,いわゆる初心者向きのものとされているのに,実際には鼠径部の局所解剖はやや煩雑で理解しにくいため,各組織の関係がはつきりしないまま,手術が行なわれる場合が少なくないためではなかろうか?また,今までの成書,とくに日本語の本ではヘルニアに関して良い手術書が少なく,外鼠径ヘルニアの発生病理およびその治療に重要な関係のある腹膜筋膜およびその門である内鼠径輪についての記載がわかりにくいため,いくら本で勉強しても実際の手術に必要な解剖学的な智識を得ることが難かしく,各組織関係を理解しにくいため,手術法に混乱をきたすことが少なくなかつたのではなかろうか?著者は近年では等閑に附されている鼠径部の局所解剖を再検討し,とくに今まではっきりした記載の少ない内鼠径輪部について考察を加え,外鼠径ヘルニアの手術法としては,その発生病理からみて最も合理的かつ生理的な治療法と考えられる内鼠径輪閉鎖を主とする根治手術を十年来常用し好成績を得ているが,ここにその経験を述べ大方のご参考に供したいと思う.

小児そけいヘルニアの治療の実際

著者: 飯島勝一 ,   松林冨士男

ページ範囲:P.497 - P.502

Ⅰ.小児そけいヘルニアの概念
 そけいヘルニアの手術は小児外科領域の中にあつて最も普遍的なものでありきわめて重要な疾患である.大変古い歴史をもつ本症の治療法として上げられている術式だけに関しても多数に上り,またその文献にいたつては枚挙にいとまがないが,乳幼児そけいヘルニアの治療の根本的原則については近年にいたるまで十分な考慮が払われていなかつたようである.これは多くの報告者が成人のそけいヘルニアを基盤として小児ヘルニアを取り扱つていたためで,小児ヘルニアの原因が成人の場合における腹筋構成の抵抗減弱に基づくのとは異なり,腹膜鞘状突起(processus vaginalis)の閉鎖不全にあることが認識されなかつたことに起因していたのではなかろうかと思われる.この腹膜鞘状突起の開存率は生下時80〜90%,また生後1年においても55%前後ときわめて高い22)が,この開存はヘルニアを起こす可能性があるということで必ずしもヘルニアを起こすわけではなく,実際にヘルニアの発生する頻度は小児人口の0.3〜13%22),一般に3〜4%と報告されている.腹膜鞘状突起開存という素因に強い啼泣や,りきみなどの腹圧を増加させるような因子が加わり,単に密着していた鞘状突起の滑らかな二表面が突然に剥離し,ここに腹腔内臓器主として腸管が脱出したたものが小児のそけいヘルニアである。

人工肛門の手術と管理—最近の変遷

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.503 - P.508

はじめに
 人工肛門の定義,種類,造設法などに関しては,従来も教科書や医学雑誌に常に記載されてきたことで,ここで改めて繰り返さないことにする.しかし日常外科で常に利用されるこの手術にも,また術後の管理法にも,目立たないながらも近年その方法や考え方に,いくつかの変化がみられている.ここでは専らそのようなことに焦点をおいて記述してみたい.

痔核・痔瘻の手術

著者: 三輪徳定

ページ範囲:P.511 - P.514

はじめに
 痔核・痔瘻の治療法にはいろいろあるが大別して観血的療法と非観血的療法に分けることができる.今回は観血的手術に限定し,古い時代から現在に至る代表的な手術術式を検討し,それぞれの術式の長をとり短を捨て将来の痔核・痔瘻の治療に対する参考としたいと思う.痔核と痔瘻と混同しないようまず痔核について記す.

カラーグラフ 臨床病理シリーズ・3

肺癌Ⅰ

著者: 下里幸雄 ,   鈴木明

ページ範囲:P.430 - P.435

 肺癌にはいろいろな組織型があるけれども,その各々が特徴的な増殖進展様式を示すために組織型・肉眼所見・X線所見の間に密接な関係がみられる.すなわち通常みられる肺腫瘍のX線所見からその組織型をある程度推定することが可能である.細胞診の所見を考慮すれば更にその精度が増してくるのは当然である.ここでは数号にわたり,比較的典型例についてこの三者の関係を示してみよう.

外科の焦点

食道ファイバースコープによる異物の摘出

著者: 遠藤光夫 ,   中山恒明 ,   矢沢知海 ,   羽生富士夫 ,   岩塚廸雄 ,   山田明義 ,   鈴木茂 ,   中村光司 ,   山田和毅 ,   牧邁 ,   竹本忠良

ページ範囲:P.437 - P.442

はじめに
 食道鏡検査に食道ファイバースコープが広く用いられるようになり,診断面ではほぼ満足する成績をあげてきている.一方治療面については,従来より硬性直達鏡に委ねられてきたが,食道ファイバースコープの治療面への応用として,まず異物の除去を考え一昨年より市販の食道ファイバースコープに併用できる異物摘出用の鉗子を考案し用いてきた.今回は臨床例もふえてきたので,一般外科医も遭遇する食道および胃内の異物の除去について,実際的な面を中心にのべてみたいと思う.

臨床メモ

縫合糸の話

著者: 牧野永城

ページ範囲:P.508 - P.509

 外科用縫合糸は,最終的に組織によつて吸収されるか否かによつて,吸収性と非吸収性の2種に大別できる.
 吸収性のものは,Catgut(腸線)とよばれるもので,本来は羊の腸の粘膜下組織のCollagenから作られるものだが,わが国では,戦時中原料の輸入ができなかつたために,牛,豚,馬などの腸の漿膜を利用する方法が開発され,原料が安価であり,質的にも羊のものに劣らないとされて,現在でもその方法が続けて行なわれている.クローム加工の有無によつて,plain catgutとchro-mic catgutの2種に分かれるが,クローム加工は生体の組織による吸収に対して抵抗性を増す,つまり吸収をおくらせることによつて,糸の力(抗張力)をなるべく長く維持しようという意図で行なわれる.一般に組織内に埋没した状態で,とくに他の特殊な条件がなければ,plainは7〜10日,chromicは20日間位に抗張力を維持できる.しかし胃液などにさらされた状態では,plainは6時間,chromicは36時間位しか,抗張力を維持できない.わが国の製品には,クローム処理が粗悪なもの,表面のざらつくもの,脱色しやすいものなどが多く,欧米の製品と比べて品質が劣るのは残念なことである.

脳外科

99mTcO4 Brain Scanningとの相関よりみたRISA Cisternogram—新しい脳外科的診断法としての臨床的意義

著者: 坪川孝志 ,   大井美行 ,   中村哲三 ,   森安信雄

ページ範囲:P.519 - P.526

 緒言
 脳神経外科領域において,Technetium-99m PertechnetateによるBrain Scanningの診断的価値は高く,その解析にも著しい進歩がみられ,ことに多発性腫瘍などの診断にさいしては,脳血管写,脳室写の読影に多くの示唆を与えてくれることは周知の事実である.脳腫瘍例におけるBrain Scanningで,60〜90%の高率にpositive scanがえられるが,この方法のみでは単に陽性像をうるに過ぎないということが,Brain Scanningの診断価値を論ずる場合注意すべき点である.いまcrescent configurationという硬膜近傍の陽性Scanning像を例にとると頭皮の損傷,感染,手術後の状態,Pachymeningitis,脳硬塞などの間で十分な鑑別ができないことはWilliamsら(1965)が指摘しており,われわれも日常遭遇していることである.また水頭症を伴う例では,脳室に一致するCold spotがみられるが,これは等感度法などの操作を応用しない場合はBrain Scanningで陽性所見といい難く,equivocalな所見というべきであろう(久田,藤田,坪川1966).

論説

転移性肝平滑筋肉腫に対する肝動脈結紮術

著者: 永末直文 ,   比企亮介 ,   荒木貞夫 ,   綾部欣司 ,   村上博圀 ,   草場威稜夫

ページ範囲:P.527 - P.534

はじめに
 転移性肝腫瘍を何ら治療せず経過をみた場合,その予後はきわめて悪い.例えばJaffe15)らによると390例の平均生存期間は75日であつたといい,Bengmark4)らによると156例のそれは5.7カ月であつたという.肝臓外科の進歩した現今では転移性であつてもそれが限局性であれば,肝葉切除あるいは肝部分切除術が行なわれ,その意義は認められている.しかし肝両葉にわたる広範な転移性腫瘍に対しては,根治性からみるとほとんどなすすべがないのが現状である.持続注入ポンプを用いた化学療法がpalliativeな意味で一般に行なわれているが,合併症と繁雑さはまぬがれない.
 1952年Markowitz20)は転移性肝腫瘍はその血行をほとんど肝動脈より受けていることより,肝動脈結紮がその治療になりうるだろうと示唆している.その後Mori23)らは胃癌の肝転移に対して術中偶然に肝動脈が結紮され,剖検で転移巣が選択的に壊死に陥つた1例を報告し,Nilsson25)は転移性肝腫瘍の治療として肝動脈遮断を行ないその効果を示した.最近では,Almersjo1)ら,Mad-ding19)ら,Murray-Lyon24)ら,土屋28),葛西17)らの報告がみられその有効性と安全性がさらに確実となつてきた.

乳癌手術後の再発例よりみた術後早期死亡

著者: 岩永剛 ,   小山博記 ,   高橋良和

ページ範囲:P.535 - P.540

はじめに
 第14回乳癌研究会が,1971年7月札幌において開催され,その主題の1つに「術後早期再発死亡例の検討」ということが取りあげられ,討論された.われわれは,成人病センターにおいて経験した乳癌治癒手術後の再発例を検討し,この中からせつかく手術をしながら,術後早期に死亡する問題点を追求した.なお,ここで述べる術後早期とは,術後1年以内とした.

胆石症を合併した十二指腸憩室

著者: 穴沢雄作 ,   宮城伸二 ,   岡本祐嘉 ,   宮川忠昭 ,   前川武男

ページ範囲:P.541 - P.548

はじめに
 胆石症は肝障害や膵障害を惹起することがあるが,また合併疾患として胃・十二指腸潰瘍が多く,さらに潰瘍性大腸炎,横隔膜ヘルニアとの合併も注目されている.今回は十二指腸憩室との合併について臨床的意義を検討する.
 十二指腸憩室は消化管憩室のうち,もつとも多く発生するが,それ自体はほとんど症状がないが,憩室が存在すると二次的に種々の障害が惹起される.とくに胆道,膵系の合併症が重大で,1710年Chomelが十二指腸憩室をはじめて記載した解剖例も22個の胆石を有しており,胆石の合併が古くから注目されていた9)10)

読者から

「楓の黄葉」に対する疑問

著者: 角本陽一郎

ページ範囲:P.548 - P.548

 臨床外科の1971年3月,4月号に掲載された渋沢先生(国立王子病院副院長)の文学的な『海外だより—楓の黄葉(1)(2)』を拝見して,同じく「海外だより(2月号)」の筆者として,また邦人究研者として働いている1人として,疑問の点がありますので,誌上を借りて述べてみたいと思います.
 もちろん,渋沢先生は実に多忙な日程のなかで貴重な時間を割いて,日本人研究者に多数会われてからのご結論をだされたことと思いますが,まず『……米国医学にはもはや学ぶものなし等とうそぶいて帰国するものや,国内の学園紛争をのがれて来米しているものは,いくらヒイキ目にみても7〜8割は真剣に研究をしていない.同情的にいえば,それは研究したいのだろうが,会話,語学のハンディキャップに屈してしまつたのだろう。』と書かれておられるが『真剣に研究していない』全ての研究者についての客観的なData—研究業績に対する—をお持ちの上で非難なさつているのか,もしそうでなければ,これは黙々と研究に従事している多くの真面目な日本人研究者に対する名誉毀損でしよう.

症例

メッケル憩室内異物による穿孔性腹膜炎の1治験例

著者: 保坂陽一 ,   熊谷直俊 ,   熊谷義也

ページ範囲:P.549 - P.550

はじめに
 急性腹症という疾患も,開腹してみると意外な事実に遭遇することがままある.本例は開腹して腹腔内を詮索した結果,メッケル憩室内の異物が穿孔して腹膜炎を惹起していた症例であるが,最近の文献を渉猟してもこのような症例は見当らない.また腹腔内の検索は完全に行なわれなければならないという示唆を含んでいる.私たちはこの1例を経験したので報告し,考察を加えて発表する.

95%膵再切除を施行し,良好な経過をとつたInsulinomaの1例

著者: 嶋野松朗 ,   村上哲之 ,   田中清雅 ,   鈴木康紀 ,   木村克明 ,   田中隆夫 ,   小野慶一 ,   佐藤信一郎 ,   江村耀中

ページ範囲:P.551 - P.556

緒言
 insulinomaに関して,欧米では1902年Nichollsの報告以来,その病像の特異さも加わつて報告があいつぎ現在1,000余例を越えている1).一方本邦においても1933年三宅2)による初剖検例,その3年後の棟方3)の1治験例発表以後報告が続出はしているが,その論旨は症例そのものの報告,あるいは統・集計の範囲を越えず,とくに一時的に腫瘍摘除できなかつた場合に,いかなる考察のもとに外科的処置を講じるかなどについては全く触れていない.
 最近われわれが初回の手術にて腫瘍を発見し得ず膵85%の盲切除を施行したが,依然としてinsulinomaの症状持続したため,再手術を行ない95%膵尾側切除によつて術後良好な経過をとつた1例を経験したのでいささかの考察を加えて報告する.

冷却体外循環により止血に成功した肝破裂症例

著者: 上山武史

ページ範囲:P.557 - P.560

緒言
 大量出血が制御できず,多くのガーゼで圧迫することにより,かろうじて止血されていた状態で肝破裂の患者が来院した.この患者に人工心肺による冷却体外循環を行ない,食道温18℃で循環血液量を減少させ,出血量を少なくし,肝破裂部に達し断裂し,出血を続けていた肝内動脈の結紮に成功して,治癒せしめた.
 現在,人工心肺による体外循環は非常に安全になり,開心術,胸部大動脈手術には広く,長時間にわたり使用されている.そのほかにも少数ではあるが脳手術1),気管・気管支手術2),肺血栓手術3)4)などにも,一時的な循環停止による出血の制御5),肺における換気中絶への対策6),肺血流停止の手段7)などを目的として使用されている.しかし,内臓手術への応用はみられないようなので私どもが行なつた方法を述べ,このような手段を採るに至つた経過につき検討する.

形質細胞乳腺炎の2例

著者: 山本武常 ,   南碩哉 ,   黒田清 ,   西川正光

ページ範囲:P.561 - P.563

はじめに
 形質細胞乳腺炎は,比較的まれな乳腺疾患であり,1931年Cheatle and Cutlerによつて初めて記載され,その後Adairがその概念を確立した疾患である.
 その臨床所見は,腫瘤を形成し多くの場合乳癌と誤診されやすい.

みかんに起因すると思われる食事性イレウス

著者: 亀山仁一 ,   大沢一郎 ,   小田嶋栄作 ,   岡崎肇 ,   後藤勝也 ,   橋本昌美

ページ範囲:P.565 - P.568

はじめに
 われわれが日常摂取している食事あるいはこれに非常に密接な関係を有する物が原因となり,イレウスになることがある.このような食事性イレウスはきわめて稀な疾患であり,本邦においてはこれまで約200例の報告があるにすぎない.本症を起こす食事の種類としては柿によるものが最も多く,半数以上を占めている.ところが柿のほかにも,本症の原因となる食事の種類はかなり多く,昆布,沢庵,餅など約30種のものがあげられており,これらはいずれも日常われわれが摂取しているものである.
 最近われわれはみかんに起因すると思われる腸管内異物が回腸下部を閉塞し,イレウスになつた症例を経験したので,ここに若干の文献的考察を加えて報告する.

Ischemic Colitisの1例

著者: 豊島宏 ,   内木詢一 ,   小川威示

ページ範囲:P.569 - P.571

緒言
 本邦ではIschemic colitisについてはほとんど報告されていない.われわれは最近本疾患と思われる症例を経験したのでその病因,組織像,診断,治療法などについて検討し報告する.

基本情報

臨床外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1278

印刷版ISSN 0386-9857

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