icon fsr

文献詳細

雑誌文献

臨床外科27巻4号

1972年04月発行

臨床メモ

縫合糸の話

著者: 牧野永城1

所属機関: 1聖路加国際病院外科

ページ範囲:P.508 - P.509

文献概要

 外科用縫合糸は,最終的に組織によつて吸収されるか否かによつて,吸収性と非吸収性の2種に大別できる.
 吸収性のものは,Catgut(腸線)とよばれるもので,本来は羊の腸の粘膜下組織のCollagenから作られるものだが,わが国では,戦時中原料の輸入ができなかつたために,牛,豚,馬などの腸の漿膜を利用する方法が開発され,原料が安価であり,質的にも羊のものに劣らないとされて,現在でもその方法が続けて行なわれている.クローム加工の有無によつて,plain catgutとchro-mic catgutの2種に分かれるが,クローム加工は生体の組織による吸収に対して抵抗性を増す,つまり吸収をおくらせることによつて,糸の力(抗張力)をなるべく長く維持しようという意図で行なわれる.一般に組織内に埋没した状態で,とくに他の特殊な条件がなければ,plainは7〜10日,chromicは20日間位に抗張力を維持できる.しかし胃液などにさらされた状態では,plainは6時間,chromicは36時間位しか,抗張力を維持できない.わが国の製品には,クローム処理が粗悪なもの,表面のざらつくもの,脱色しやすいものなどが多く,欧米の製品と比べて品質が劣るのは残念なことである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1278

印刷版ISSN:0386-9857

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら