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文献概要
特集 日常外科の総点検・Ⅱ
手の損傷の初療
著者: 南条文昭1
所属機関: 1虎の門病院整形外科
ページ範囲:P.599 - P.606
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手指は日常生活上きわめて重要な機械である反面,しばしば外傷を受けやすい部位でもある.そのあまりにも便利さゆえ,失われた折の不自由さを忘れ,たかが手指の怪我ぐらいとか,少々効かなくともという安易な考えかたがいまだに支配していることは残念なことである.というのも,手指はきわめて合目的性に富んだ器官であり,繊細かつ複雑な構造をもつているので,一見些細にみえる外傷でもその受ける機能的・外容的損失の意外と大きな場合もあり,手指の構造や機能の特殊性を十分に把握して初期治療の段階から処置を行なわないと,いたずらにその損失を大きくするだけで,後になつていかように努力しても救いがたいことが少なくないからである.
わが国の現状を見るに,これら手指の外傷を第一に取扱うのは救急病院や第一線の一般外科医の方々の場合が多く,ここで処理され時期を経て手の外科専門分野のある医療機関に廻されることが大部分であり,それらの内には手指の特殊性に関する認識が欠けるため後続処置に支障をきたすもの,諸種の社会的条件を背景に取扱いの粗雑なもの,逆に手指の特殊性を意識しすぎるためかいたずらに手指の外傷を敬遠するものなどを伺うことができる.本稿では,これらの問題点にふれ,救急治療はいかにあればよいのか,またその限界をどのように考えるべきなのか反省ならびに考察を加えてみたい.
手指は日常生活上きわめて重要な機械である反面,しばしば外傷を受けやすい部位でもある.そのあまりにも便利さゆえ,失われた折の不自由さを忘れ,たかが手指の怪我ぐらいとか,少々効かなくともという安易な考えかたがいまだに支配していることは残念なことである.というのも,手指はきわめて合目的性に富んだ器官であり,繊細かつ複雑な構造をもつているので,一見些細にみえる外傷でもその受ける機能的・外容的損失の意外と大きな場合もあり,手指の構造や機能の特殊性を十分に把握して初期治療の段階から処置を行なわないと,いたずらにその損失を大きくするだけで,後になつていかように努力しても救いがたいことが少なくないからである.
わが国の現状を見るに,これら手指の外傷を第一に取扱うのは救急病院や第一線の一般外科医の方々の場合が多く,ここで処理され時期を経て手の外科専門分野のある医療機関に廻されることが大部分であり,それらの内には手指の特殊性に関する認識が欠けるため後続処置に支障をきたすもの,諸種の社会的条件を背景に取扱いの粗雑なもの,逆に手指の特殊性を意識しすぎるためかいたずらに手指の外傷を敬遠するものなどを伺うことができる.本稿では,これらの問題点にふれ,救急治療はいかにあればよいのか,またその限界をどのように考えるべきなのか反省ならびに考察を加えてみたい.
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