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研究
閉塞性黄疸と急性潰瘍—とくに黄疸犬の胃分泌能を中心に
著者: 玉熊正悦1 金山知新1 中野春雄1 冲永功太1 島津久明1 菅原克彦1
所属機関: 1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.655 - P.661
文献購入ページに移動閉塞性黄疸患者の手術後や胆道感染などに際してしばしば認められる致命的な上部消化管出血には,いわゆる急性潰瘍に起因するものが多数含まれることをわれわれはこれまでに臨床例や剖検材料から確認し,いろいろな機会に指摘してきた1-5).十二指腸へ胆汁が正常に排泄されなくなつた患者にこのような急性胃十二指腸潰瘍による出血を注目した記載はすでに1920年代にさかのぼる6).手術の対象となる肝・胆道・膵疾患の治療成績をたかめるためには,病巣の早期診断法,手術手技などの開発とならんで,こうした重篤な術後合併症への対策や防止が不可欠なことを痛感するが,この病態は,熱傷(Curling)7,8),中枢神経系障害(Cushing)9),外傷,ショック(Har-jola)10),敗血症(Rosoff)11)といつた一般のストレス潰瘍よりもさらに不明な点が多く,従つてまたその対策も遺憾ながら暗中模索の現状といつても過言でない.
このような消化管粘膜のびらんや潰瘍発生準備状態に関連するいわゆる肝性因子の研究の一環として,最近われわれは犬に胃瘻を作成し,その酸や粘液分泌能に対する胆道閉塞の影響と,閉塞に伴う肝機能の推移や消化管ホルモンの消長とを比較検討し,興味ある知見を得たので報告する.
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