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特集 皮膚切開法と到達法・Ⅱ
肝臓の手術
著者: 菅原克彦1 柏井昭良1 三谷進1 河野信博1
所属機関: 1東京大学医学部第1外科
ページ範囲:P.901 - P.906
文献購入ページに移動外科治療の対象となる肝疾患は,外傷,腫瘍,炎症などが主なものであり,従来いろいろの皮切法により肝臓に到達する術式が行なわれている.肝臓の脈管分布を中心とした肝区域の概念をとり入れた肝葉切除時の出血制御の工夫や,肝の限局性病変を診断する技術が普及することなどにより,肝葉切除の適応は拡大されつつある現況といえよう.このような背景の下に肝臓の病変部に安全かつ正確に到達するための皮切法はあらためて検討を要する課題の一つである.
肝切除術が行なわれる際には対象となる病変に肝の悪性腫瘍が多い.肝腫瘍が存在すると肝が著しく圧排されていることが多いため,癌が占拠する肝葉が切除可能であるか否かを局所的に診断するには十分な視野を必要とする.また肝外傷時では,切除か,保存的に扱うかを判定するためにも同様に十分な視野が要求され,皮切もかなり大きいことを要するようになつてくる.したがつて従来から行なわれてきた皮切法はこの目的に合致しないものが多いように思われる.
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